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「いたっ!」


リリスの指から血が流れた。


「リリス様⁈」


リリスの声に慌てて反応を見せたのはルーナだった。


「大丈夫ですか?少し見せてください」


今度はマチルダがリリスの手を取って見る。幸い、傷の深さは浅いようだった。


「もしかして、リリス様。先ほどは包丁を使えるとあるとおっしゃっていましたが、皮むきは苦手でしたか」

「……使ったことがあるのは本当です」


どこか言いにくそうに、そう呟いたリリスにマチルダは目をパチパチさせたあと、「それは屁理屈っていうんですよ、リリス様」と苦笑する。


「リリス様ってなんでもできるから、私も失念していました。申し訳ございません……っ!」


応急処置ができるセットを持ってきたルーナが、手当をしてくれるというのでリリスはイスに座って手を差し出した。


「……私の不手際だから気にしないで。むかし王城の料理長にも、お願いしたことがあったけれど、あまりの出来の悪さに厨房への立ち入り禁止って言われたくらいなの」

「そ、そこまで言われるほどですか」


ギョッとするルーナに、リリスも苦笑いを返すほかなかった。マチルダはう〜んと考えこんだあと、「じゃあ、野菜をむくところは私たちでやりましょうか?」と提案した。けれど、リリスは首を左右に振る。


「いいえ。最初から最後まで、一人でできるようになるまで練習します。……でないと、私が作った料理って言わないでしょう?」

「それは、そうですが……」


現状を見ると、マチルダは随分と難しいことのように思えた。リリスは、それを察知したのか「無理を言っているのは百も承知です」と言う。


「でも、頑張りたいんです」


そう言って向けられた、まっすぐな目。マチルダはしばらくリリスを見つめていたが、大きなため息を吐いたあと「わかりました」と、パッと顔を上げた。


「リリス様がそこまで言うのなら、私も精一杯サポートさせていただきます」

「本当に?」

「ええ。ですが──」


と、そこで言葉を区切ったマチルダは、リリスにぐいっと近づいた。


「やるからには真剣に。元王女様だからって、手ぬるいことはしませんよ?」


迫力のある脅し文句に後ずさりつつ、リリスは「ビシバシお願いします」と返事した。かくして、マチルダによる料理下手なリリスの調理特訓が始まったのだった。

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