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「見ました?お母様、あの女の顔」


家族での食事会が終わったあと、母の自室へとやってきたエリーゼは、至極愉快と言わんばかりに高らかに笑った。煌びやかな調度品がちぐはぐに並ぶ室内には、母と娘の二人だけ。贅を極めた空間で、親子水入らず、食後のティータイムを楽しんでいた。


「愉快だったわね。これで、ようやくあの厄介者を城から追い出せるわ。あの人が、あの娘をそれほど気にかけていないとはいえ、国王の最初の子どもという存在は邪魔でしかないもの」

「ずっと目障りだったから、もういなくなると思うと、せいせいするわ」


エリーゼはにこりと笑いながら、オフィーリアの腕に抱きついた。甘えてくるかわいい娘に気をよくしたのか、オフィーリアも口元に笑みを浮かべながら、ティーカップに口をつける。


「もう心配ごとはないわよ。何しろ、嫁ぎ先のダリウスが住まう城は王都から離れた辺境の地。そう気軽にここへ来ることもできないでしょう」

「そうね」


クスクスと笑いながら、エリーゼはテーブルの上のスイーツに手を伸ばす。そこには料理長に作らせたケーキやクッキー、マカロンなどの茶菓子がずらり。エリーゼはその中から、生クリームとフルーツがたっぷりと乗ったケーキを一つ手に取った。


「ダリウスも所詮は平民出身の野蛮人でしょ?英雄だなんて、もてはやされていたのも、もはや過去の栄光。魔獣がいなくなってからは腑抜けて自堕落な生活をしているっていう話じゃない。そんな落ちぶれ男と結婚だなんて、いい気味だわ」


エリーゼの言葉に、オフィーリアはため息をついた。


「最初は渋っていたけれど、大金を積んだらやっと引き受けたのよ。強欲な男だわ」


母の言葉に、エリーゼは「あら」と愉快そうに笑った。


「でも、ある意味扱いやすい男ね。金で動くだなんて」

「あなたの言うように、所詮は平民出身の薄汚い野蛮人ということよ」


「確かに」と頷きながら、エリーゼは一口サイズのケーキをぱくりと食べる。


「はぁ〜……お姉様の結婚式が楽しみ。きっと素敵な式になるに違いないわ」


うっそりと目を細めて、ほくそ笑むエリーゼに母もご満悦の様子。企みは計画通り。すべてが順調に進んでいることに、ふたりの笑いは止まりそうになかった。

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