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「もう決まったことを嘆いても仕方がないもの。……確かに、ダリウス様は悪い噂が多い方かもしれないけれど、あくまでも噂話でしょう?嫁ぎ先には、あの二人もいないわけだし、逆にのびのびと暮らせて楽しいかも」


いたずらに笑う主人に、ルーナも同じように笑顔を見せた。


「そうですね。ものは考えよう、って言いますし!」

「そうそう」


リリスはまたティーカップに手を伸ばし、紅茶の表面に映る自分の顔を見つめた。その瞳が、ほんの一瞬だけ憂いを帯びたが、リリスは笑顔をつくってルーナを見る。


「ところで、悪い噂以外のことで、ダリウス様がどんな方か知ってる?魔獣退治を専門とした特務騎士団の元団長で、大魔獣を倒した英雄って話は有名だけれど……。功労賞の授与式のときも、遠くからちらりとお顔を見ただけで、私もよく知らないのよね……」


リリスの質問に、ルーナも「さあ」と首を傾げた。


「ガルガドスを倒したあと、特務騎士団自体は解体されましたからね。団長だったダリウス様は、莫大な報奨金と王族に次ぐ特別な位、広い領地が褒美として与えられたそうですけど……」

「それ以外の情報は、さっぱりね」

「はい……」


そんな素性もよく知らない相手との結婚もまた、あの親子ふたりの嫌がらせのひとつなのだろうか。リリスは「いい人だったら、いいけれど……」と小さくため息をつくと、窓の外を眺めた。


生まれ育ったこの城に住まうのも、あとわずかと思うと寂しい気持ちがわずかに残る。この結婚が吉と出るか、凶とでるかはまだ分からない。できれば前者であることを願って、いまはただ祈るしかなさそうだ。


窓の外に咲くアイリスの花が、そんな不安げなリリスを見守るかのように、静かにひっそりと佇んでいた。

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