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それからしばらくの間、広間での宴は続いていた。


食後のデザートを食べたあとも飲み足りないと、追加でワインを飲み、すっかりできあがったベリック。頬だけでなく、鼻のてっぺんまで赤くしている上、目はずいぶんと据わっている。


「ベリック様、お体は大丈夫ですか」


さすがの酔いっぷりに、リリスも心配そうにベリックを見つめた。すると、とろんとした瞳に捕まり、ベリックは「うるさい!」と声をあげた。


「どうせ、俺のことなど心の中では馬鹿にしているくせして……っ!」

「そんなことはありませんわ」

「いいや!お前はそういう女だ!」


随分と酔っているらしい。立ち上がってリリスに詰め寄るベリックは、千鳥足で真っ直ぐ歩くこともままならないくらい酒に溺れているようだった。


「ふんっ!どうせ、この結婚も政略結婚なのだろう⁈」


静かな広間に、ベリックの声が響いた。


「だったら、おとなしく俺との結婚を受け入れておけば贅沢な暮らしをさせてやったのに」


酔っていても悪態をつくベリックには、呆れるほかない。リリスは小さくため息をついた。未練がましい男だが、それでもリリスは「飲みすぎですよ」と言いながら、水が入ったコップを差し出す。ベリックは、そのグラスをじっと見つめていた。


「明日の朝がつらくなります。お酒はここまでにして、ゆっくりお部屋でお休みください」

「……」


リリスがそう言うと、しばらく黙ったままでいたベリックだったが、「ふんっ!」と荒っぽくグラスをぶんどり、ごくごくとそれを飲み干した。それから飲み終えたグラスをお盆の上に叩きつけると、「もう寝る!」とリリスに背を向けた。


「城の者に部屋まで案内させましょう」


リリスの後ろに立っていたダリウスがそういえば、案内役がベリックの従者たちについていく。リリスは、遠ざかっていくベリックの背中を見つめながら、そっとため息をついた。ようやく大仕事が終わった。


「お疲れでしょう。リリス様もお部屋でお休みになってください」


隣にいたルーナが心配そうに、リリスの顔を覗き込んだ。さすがに今日は長い1日だった。朝から気を張りっぱなしだったせいか、ずいぶんと体が重く感じる。ゆっくり湯浴みをして体を温めようか、と思ったところで、「リリス」と名を呼ばれる。


振り返ると、涼しい顔をしたダリウスがリリスのことをじっと見つめていた。「なんだろうか」と首を傾げていると、ダリウスは妻の顔を見つめながら一言。


「支度が済んだら“寝室”へ来い」


思いがけない言葉にリリスはパチパチと瞬かせて驚いた。


夫婦の寝室に誘われるのは、結婚以来初めてのこと。流麗な切れ長の瞳が逸らされることなく、そう言われるものだから、リリスの胸はどきりと音を立てた。

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