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◇◇◇


そして、迎えたベリック王子来城の日。準備に忙しい日々を送っていたリリスたちだったが、無事お客様をおもてなしできる用意を整え、今日を迎えることができた。


馬車から降りたベリックを城の者総出で出迎えると、リリスを見つけたベリックはすぐに彼女に駆け寄ってきて、にこやかに挨拶を交わした。


鳥の巣のようなクセのある髪に、潰れた鼻、分厚い唇はいやらしく弧を描いている。


「やあ、リリス。久しぶりだな」

「ご無沙汰しております、ベリック様。ようこそ、いらっしゃいました」


そう言ってリリスが微笑むと、満足そうに笑ったベリック。だが、リリスの隣に立つ男に気付き、あからさまに値踏みするような視線を送ったあと、「どうも」とダリウスに話しかけた。失礼な態度に、リリスは気が気でない。だが、リリスの心配とは裏腹に、ダリウスは胸に手を当て頭を下げた。


「初めまして、ベリック殿下。ダリウス・クロフォードと申します。本日は、私たちの結婚を祝福してくださるためと、はるばるお越しいただいたこと深く感謝申し上げます」


すらすらと感謝の意を述べるダリウスに、ベリックはやや気圧されているようだった。もともと歪んだ唇をさらに歪ませている。


「い、いや、こちらこそ急に連絡をして悪かった……っ。あの大魔獣を倒した英雄に会えるとは私も光栄だ」


そういってダリウスに手を差し出したベリック。


「リリスとは旧知の仲でね。昔から私によくしてくれていたから、結婚と聞いたときは驚いたが、君のような頼もしい男が夫ともなれば心強いだろう」


いささかトゲのある言い草だが、ダリウスは黙ったままじっとベリックの瞳を見つめたあと、「ありがたきお言葉、痛み入ります」と言いながら差し出された手を取り握手を交わした。


ベリックは何か言いたげにダリウスを見ていたが、リリスが「ベリック様」と横から声をかけると、「なんだ?リリス」と、にこやかな笑みを浮かべた。


「ささやかではありますが、宴の準備をしております。旅の疲れもあるでしょうから、まずはお部屋でゆっくりなさってください」

「おお、さすがリリスだ。気が利くな。そうさせてもらおう」


ベリックの返事を聞き、リリスはクロードをちらりと見た。そして、


「では、城の者に案内させますので──」


と言ったのだが、目の前のベリックは突然リリスの手を取ると「リリスが案内してくれ」と言い放った。その場に気まずい空気が流れる。


「いいかな?ダリウス」


あからさまに挑発的な視線。だが、辺りが静まり返ったのも束の間、ダリウスは表情を変えずに「どうぞ」と返した。


「じゃあ、行こうか。リリス」


肩を抱かんばかりの勢いのベリックから、リリスは距離を取りつつ「ええ」と作り笑いを浮かべた。ダリウスに「では、行ってまいります」と告げ、ベリックに用意した客間へと向かう。


そんな二人の背中をじっと見つめるダリウス。


「……クロード、ノエ、ついていけ」

「了解です」

「承知しました」


大勢の従者に紛れて、クロードとノエもリリスたちの後を追う。何も起きないことを願いながら──。

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