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「マチルダさん、おはようございます。朝食を持ってきましたよ」


リリスがマチルダと出会ってから半月が経過した。約束通り、マチルダは娼館の離れから城へと居を移して、ここで病の治療を受けることとなったのだ。リリスはクロードから紹介された医者に話を通し、必要な薬草を用意してもらってマチルダの看病を続けている。


「いつもありがとうね、リリス様」


懸命な看病の甲斐あって、マチルダの容態も出会った当初に比べると、ずいぶんとよくなってきた。以前は、体がだるく寝たきり状態だったけれど、いまではベッドから起き上がり、食事も摂れるようになってきた。


「マチルダさんが元気になってくれることが、私の元気の源ですから。体調がよくなってくれて嬉しいです」


リリスはそう言って笑いながら、ベッドの隣にある丸イスに腰掛けた。


「本当、なんとお礼を言っていいのやら……。こんなによくしてもらって、私は返せるものなんて一つもないのに」


申し訳ない、と言わんばかりの表情を浮かべるマチルダに、リリスは「なら」と言葉を続けた。


「マチルダさんが元気になったら、私に料理を教えてくださいませんか?」

「料理?」

「ええ。クロードから、料理がとてもお上手だとお伺いしたので」

「やだ、クロード様ったら、そんなこと言ってたんですか?」

「ニコルさんが騎士団員の皆さんに、自慢して回っていたそうですよ。『俺の恋人の手料理は世界一だ』と」


リリスの言葉に、マチルダは「もう、あの人ったら」と、嬉しそうに笑う。以前は塞ぎ込んでいたマチルダだが、徐々にこうしてニコルのことを笑って話せるようにもなってきた。前よりも笑顔が増えた、とクロードが言っていたことを思い出す。


「だから、楽しみにしていますね。マチルダさんの料理教室」

「分かりました。約束します」


互いに笑い合い、料理を教えるとの約束をした二人。と、そのとき、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。


「どなたかしら?」


二人で顔を見合わせる。


「リリス様、私です!ルーナです!」


扉の向こうから聞こえたルーナの声は、やけに焦っているようだった。リリスがマチルダに目で確認したあと、「どうぞ」と促すと扉が開き、目に見えて慌てた様子のルーナがそこにいた。


「どうしたの?ルーナ」

「た、大変です!リリス様!」

「なにか困ったことでもあったの?」


リリスが首を傾げながら、そう尋ねるとルーナは一枚の手紙を見せてきた。宛名は「ベリック・フォークナー」。隣国の第三王子の名が書かれていた。


「ベリック様が……?」


嫌な予感を感じながらリリスが封を開けてみると、そこに書かれていた内容に手が止まる。


「リ、リリス様……?」


心配そうにリリスの顔を伺うルーナ。どうやら彼女も、手紙の内容にだいたいの想像がついていたらしい。


「……ルーナ、客人をもてなす準備が必要になるかもしれないわ」


リリスがぽつりと呟いた言葉に、ルーナは「ということは、もしかして⁈」とリリスに詰め寄った。リリスは大きなため息をつくと、手紙の文面をルーナに見せた。


「ベリック様がこの城へお越しになりたい、と」

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