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「や、薬草ですか」
思い当たる節があるのか、クロードはあからさまに驚いているようだった。その反応を見るに、リリスの推測は当たっているようだ。
「ニンギスは、皮ふの難病に効果が高い薬草の一種です。非常に貴重なもので、高価な薬草としても知られています。その薬草の香りが、なぜダリウス様から香ってきたのか。教えていただけませんか?」
リリスの問いかけに、すぐには肯定的な返事が返ってこなかった。だが、何か吹っ切れたのか、クロードは大きなため息をついた。
「……どうして、リリス様はその香りをご存知だったのですか」
「昔、警護係をしていた者から聞きました」
それは先ほどの人物のことですか、とクロードは苦笑した。
「随分と物知りな方だったのですね」
「ええ、おかげで彼から、いろんなことを学ばせてもらいました」
昔を懐かしむようにそう言ったリリスに、クロードは「そうでしたか」と呟いたあと、改めて姿勢を正してリリスを見つめた。真剣な瞳。淀みない、まっすぐな目だとクロードは思った。
「その前に確認させてください」
「確認……?」
「ええ。あなたに薬草の香りの正体を教えることは簡単なことですが、この件に関して中途半端に首を突っ込んでほしくはありません」
真剣な声色に、リリスは即座に「そんなことしないわ」と返す。しばし交錯する視線。クロードは探るようにリリスを見つめていた。だが、リリスの真剣な態度が伝わったのか、小さく息をはいたあと、「では」とおもむろに口を開いた。
「……リリス様には、ダリウス様と向き合う覚悟がおありですか」
「向き合う、覚悟……?」
「はい。……途中で逃げ出したりせず、あの方と、きちんと向き合う覚悟がおありですか」
クロードの目は、すがるような、祈りにも似た思いが込められているようだった。
彼がそこまで真剣に尋ねるのかは、リリスには分からない。だが、先ほども言ったように、ダリウスのことを理解しようとすることを放棄したくはなかった。
静かな問いに、リリスはただ一言「ええ」と答える。すると、クロードは意を決してこう告げた。
「だったら、ご自分の目でご確認ください。……ダリウス様が、どんな方なのか」と。




