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◇◇◇


『いま何て言った』


雲のない穏やかな気候のある日、魔獣退治の後処理で王城を訪れていたダリウスは、国王軍総隊長であるガルシアから呼び出しを受けていた。


目の前の男は、あごに生えた艶のある長いヒゲを撫で回しながら、『何度も言わせるな』と言った。


『特務騎士団は、今月限りで解体だ。よって一部、幹部クラスを除き一般兵士らの特別階級を剥奪。それぞれ故郷へ帰るように伝えろ』


広間に響いた非情な言葉に、呆然とするダリウス。だが、すぐにハッとすると両手をギュッと握りしめ、「おいおい、ちょっと待て」と、ガルシアに詰め寄った。


『特務騎士団設立時の取り決めで、団員らの特別階級は永久に付与されるものだという誓約があるはずだ。王都に与えられた家からも出ていけって言うのか?この国を平和に導いたのは、兵士たちの活躍あってこそだろ。命懸けで戦った兵士たちに、その仕打ちとは一体どういう了見だ』


切れ長の瞳が、睨みつけるように総隊長の目を見つめていた。ガルシアは、小さく息を吐くと『国王陛下からのご命令だ』と呟いた。


『国王、だと……?』

『まあ、正確には国王の周りにいる連中の助言だそうだがな』


数ヶ月前、『国を救ってくれたことを感謝する』と謝辞を述べられ、国王から褒美を授かったばかり。つい先日まで兵士たちの活躍を讃え、溢れんばかりの賞賛を浴びたというのに数ヶ月で事態は一変してしまったというのか。


『お前の気持ちはよく分かるが、王命とあらば誰も逆らえまい』


ガルシアは諭すようにそう言った。


『……お前たち、特務騎士団が民衆の関心を集めることを、王家の人間らはよく思っていないということだ。このまま民衆がお前たちを持ち上げ続けて、反乱でも起こされたら彼らはたまらないのだろう』

『だから、地位を剥奪すると?愚策にもほどがある』


ただの嫉妬ではないか。吐き捨てるように言ったダリウスに、ガルシアは『世界とは、いつでも理不尽なものだからな』と返した。


『あの戦いで生き残った兵士の中には傷を負い、ろくに体も動かせない奴もいる。……故郷に帰れと言われても、これからどうやって生活していけって言うんだ』


ガルシアは眼光の鋭いダリウスの目をじっと見つめた。


『……特務騎士団自体は解体されるが、大魔獣を討ち取ったお前の地位はそのままだ。故郷へ帰れと命じられた兵士たちを、お前が私的に雇う分には問題ないだろう』

『……要は、俺たちの存在が国庫の負担だと言いたいのか』


その言葉に沈黙したガルシアに、ダリウスは窓際へと歩いていった。窓の外には、王家の人間が大勢の客人を招き優雅に庭園でティーパーティーをしているのが見える。


『……国民の暮らしをよくするためというのなら、俺だって納得できる。街の復興は急務だからな』


ダリウスは窓の外から視線を戻すと、ガルシアをまっすぐ見据えた。


『だが、あいつらは自分が贅沢三昧する金が減るのが困るから、そう言ってるんだろう?国民のためじゃなく、自分たちが生涯遊んで暮らす金を守りたいがために、国のために戦った兵士たちを切り捨てると』


ダリウスの言葉に、ガルシアは大きなため息をついた。


『……お前の言い分はもっともだ。命懸けで戦ってくれた兵士たちをないがしろにすれば、王政への不満を持つ者も増えるだろう。それがいずれ、王家の首を締めることになるのは自明の理だ。だがな──』


ガルシアはそこで言葉を区切ると、険しい表情を浮かべた。


『魔獣がいなくなったとはいえ、この世界はまだまだ不安定だ。王政が揺らぐような事態になれば、それこそまた争いが始まり、民が巻き添えになってしまうことも、また自明の理だろう。俺は、それは避けたいのだ』


ダリウスは手のひらをギュッと握りしめたあと、その拳でダンと机を叩きつけた。


『クソッ……!』


肩を震わせ怒りを抑えるダリウスの肩に、ガルシアはそっと手を置いた。


『……すまないな。私が不甲斐ないばかりに』


窓の外からは、華やかなティーパーティーを楽しむ人々の声が聞こえている。その声がより一層、ダリウスのことを苛立たせた。

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