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式当日と同様、突然のことで驚いていたリリスだったが、イスから立ち上がって「おかえりなさいませ、ダリウス様」と挨拶した。リリスの言葉に、ダリウスは眉間のシワを深くさせ、何も返さず黙っている。相変わらず無愛想な男だ。


すると、ダリウスの後ろから金髪の男がひょいと顔を出した。


「ようこそいらっしゃいました、リリス様」


肩までほどある金の髪に、人好きのする笑み。近寄りがたい雰囲気を持つダリウスとは違って、社交的な雰囲気を身にまとった男だ。


「わたくし、ダリウス様の副官を務めておりますクロードといいます。以後、お見知り置きを」


リリスが「よろしく、クロード」と返すと、クロードは胸に手を当てて「本日は申し訳ございませんでした」と恭しく頭を下げる。


「せっかく、こちらへお越しになられる日でしたのに、お迎えもできずに。私の不手際で面倒ごとが起こったのをダリウス様に解決していただくことになりまして。何ぶん、急を要する案件でしたので、出迎えに立ち会うことが叶いませんでした。私の不敬をどうかお許しください」


クロードはさらに頭を深く下げ、リリスに謝罪した。一方のダリウスは、その隣で眉間にシワを寄せたまま、鋭い眼光を向けてリリスをじっと見つめていた。


「いえ、どうかお気になさらず。城の者が手厚くもてなしてくれました。お二人もお疲れのところ、わざわざご挨拶に来てくださり、ありがとうございます」


にこりと笑ってそう返すと、クロードがそっと顔を上げた。その顔には、リリス同様、にこやかな笑みが浮かんでいる。


「お気遣い、感謝いたします」


クロードの返事を聞き、今度はダリウスに視線を向けたリリス。事情があったのであれば仕方ない。リリスは改まって姿勢を正すと、真正面から夫を見据えた。


「今日から、こちらでお世話になります。至らないこともあるかと思いますが、あなたの妻としての責務はきちんと果たしていきます」


続けて「どうぞよろしくお願いいたします」と言ったリリスは、ダリウスに向かって頭を下げた。しんと静まり返る部屋の中。リリスの長い髪が、さらりと流れる。


「……勝手にしろ。ここは華やかな王城とは違って、《《王女様》》には生活しにくいだろうがな」


沈黙を破ったのはダリウスだった。嫌味を込めて告げられた言葉に、リリスの頬がぴくりと動く。


(やけに突っかかってくるわね)


あまりの突っぱねように、リリスも少しばかり腹が立ってきた。


確かに気に入らない結婚かもしれないが、こちらもそれなりに歩み寄る姿勢は見せている。何がそんなに気に入らないのか。その理由を推察できるほど、リリスはダリウスのことを知らなかった。


顔を上げると、にっこりと貼り付けたような笑顔を浮かべてダリウスを見る。


「ご心配には及びませんわ。お気遣いいただき、ありがとうございます」


リリスの態度にふんと鼻を鳴らしたダリウスは「居住空間は別々だ」とだけ言い放つと、食堂から出て行ってしまった。あまりにそっけない言い草に、頬が思わずヒクついた。


(言われなくても、勝手にするわ……!)


そのあと、気まずい雰囲気を察知したクロードが宥める言葉をかけていたが、リリスにの腹の虫は収まりそうになかった。

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