表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルカ~暴力の子~  作者: 赤原いもり
地下都市編
5/26

地下闘技(デスマッチ)

 人界の片隅、アルデリア地方の南端に、たくさんの人々で賑わう都市があった。海路と陸路に恵まれ、ありとあらゆる物が売り買いされる交易の中心地。


 ここは商業都市エンデル、その名の通り商業を中心として栄えている都市だ。


 表向きは美しい街並みと、道行く人々の賑わいで華やかに見える都市だが、その下では、ありとあらゆる非合法な取引が行われている。


 賭博や薬物、危険な生物の販売や人身売買などなど、上の華やかな街に似て非なる、闇取引の地下市場がその幅を利かせている。違法でも需要があるなら何でも値を付け商売する。それが商業都市エンデルの全容だ。


 そんな清濁併せ吞む都市の地下。賭博で賑わう一画に大きな闘技場があった。


 その闘技場では毎日のように対戦という名の殺し合いが行われている。


 ここに来る客はその日の対戦表を見てどちらが死ぬか賭ける。対戦の組合せはランダムで、そこに力量差や平等なんて言葉はない。出場者は人間だけに止まらず、亜人や獣人さらには魔物までと多岐にわたる。地下世界ならではのイカれた場所だ。


「いいねぇ。」


 大勢の歓声が響く金網に囲われたリングの中、闘士と思われる青年が少し嬉しそうに呟いた。


 鮮血のような赤髪に、無数の傷のある顔と引き締まった体、拳を構えたその姿からは強者の風格すら感じる。


 歓声渦巻く建物の中、奇抜な格好の司会者が大仰なセリフ回しで本日一戦目の対戦カードを読み上げる。


「レディース・アンド・ジェントルメェン!紳士淑女の皆さま、間もなくぅ本日第一戦目の試合が始まりまぁーす!お賭け忘れはございませんかぁ?それでは初戦の選手を紹介しまぁーす!」


 司会の男は青年の立っている方を指差して選手紹介を始める。


「東ゲート、自ら望んで参戦したぁイカれ男!期待の新生ルーキー!拳闘士カルカ!!」


 司会の言う通り、この闘技場もとい殺し合いに自分から参戦している奴はほぼいない、出場してる奴のほとんどは誰かの奴隷かペットの魔物だ。


「そしてぇ!この狂ったルーキーを叩きのめすのはコイツだあぁ!!」


 司会の掛け声とともに、カルカの真正面にある西ゲートから倍以上の大きさの対戦者が現れる。


「西ゲート、熱砂の大地に住まう殺し屋ぁ!大きな鋏にキュートなボディの昆虫型魔物ぉ”鉄棘虫てっしちゅうスコルピラー”!!」


 スコルピラーと呼ばれたその魔物は、ずんぐりとした芋虫のような見た目をしており、その体は硬そうな甲殻と無数の細長いトゲに覆われている。頭部にはカチカチと音を立てる巨大な鋏状の顎があり、ハエのような眼は対峙した拳闘士を真っすぐと見据えている。


 カルカに賭けた観客たちは予想外の対戦相手の登場に落胆の色を見せたが、リングに立つ青年の様子に違和感を覚え、ザワつく。


「ついてねぇなあ~、こりゃ負けだわ。」


「おい、…見ろよ、あのガキ笑ってねぇか?」


 誰が見ても素手の人間が勝てるような相手ではないと分かる存在、しかしその青年は臆する様子など一切見せず、闘志に目をギラつかせながら大胆不敵な笑みを浮かべていた。


「気でも狂ったんじゃないか?相手は全身凶器みたいな魔物、対するこっちは素手のガキ、どう考えても勝てねぇよ。」


「でも…見ろよ。」


 その狂気とも取れる表情に周囲の観客がどよめき、半ば諦めかけていた青年の勝利に数人が期待し始めた頃、試合開始のゴングが鳴り響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★★★~赤原の元気の源!ブクマ・ポイント評価、ぜひともお願い致します!~★★★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ