幼くない少女 次女ニリリ・ヴァーデン
探究の間、もといニルデの私室を出た後、二人は玄関ホールの左手にあった廊下の奥の食堂へと進んでいた。
その食堂ではすでに夕食の準備が進められており、テーブルクロスの張られた長い机にスープメインの夕食が並べられ、その食卓机を囲うように十脚の椅子が置かれていた。奥には調理場らしき場所があり、食器のガチャつく音と共に誰かがいそいそと動き回っている。
部屋に入ったニルデは自然な動きで、一番の上座に腰を据えると、右隣の席にカルカを座らせた。そして背後の調理場にいる人物に声を掛ける。
「おーいニリリ、客が来たから、一人前追加しといてー。」
「はーい!…ってお師匠にお客ですか!?」
調理場にいた人物が驚きの声を上げつつ配膳用に設けられた窓から顔を覗かせる。現れたのは七、八歳くらいの幼い少女だった。栗色の髪を頭の天辺でまとめ、くりっとした茶色の目を見開いてニルデを凝視していた幼女は、続いて隣にいたカルカを見た後、何を思ったのか、いやらしい笑みを浮かべ再びニルデの方を見る。
「お師匠にお客…しかも若い男。これはもしかし―アイタッ。」
下衆な笑みの幼女が何を言わんとしたのか察したニルデは、身を乗り出すようにして出された頭を平手で軽く叩く。
「なにを勘違いしてる、この好き者幼女め。この男は私の親類だよ、親が血縁なのさ。不愛想で荒っぽい性格だが面白い子だよ。しばらく家にいることになったからよくしてやってくれ。」
「ほえ~、お師匠のご家族ですか、なるほどなるほど。初めまして私は次女のニリリ・ヴァーデンって言います。この家で探究の弟子として魔術を磨きながら、料理番をしてます。年齢は二十三歳でぇーす!」
「ああ、俺はカルカ、年は……待て、今二十三って言わなかったか!?」
「うん、言ったよ?」
目の前の幼女の言葉に自分の耳を疑うカルカ、どこをどう見ても十歳以上には見えない。どう返答すればいいか分からず、困惑の表情を浮かべる青年にニルデから助け舟が出される。
「初対面で年の話をするなとあれほど…、驚かせて悪いねカルカ青年。このニリリは肉体が成長を止める代わりに魔力量が劇的に増大した特殊な子なんだ。だから見た目は子供だが年齢は本当に二十三だよ。フフッどうだい面白いだろう?」
「あ~!お師匠笑いましたね~!こう見えて結構気にしてるんですよ!」
自分の話を鼻で笑いつつされたことに腹を立てるニリリ、ニルデはそれを軽くあしらうと、料理の続きをするよう促し、幼女姿の女性はブツブツと文句を言いつつ調理場の方へと消えていった。
「あんななりだけど面倒見のいい子だから、何か困ったことがあれば頼るといいよ。他の弟子たちも似たような感じだけど…あ、そろそろ来たかな?」
直後、ニルデの視線を送る食堂の入り口からいくつかの足音が聞こえ、数人の人影が部屋の中へと入って来、自分の師匠の隣に座る青年を見て、約一名を除き、集団は同じ言葉を発した。
「「「え!…彼氏?」」」




