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カルカ~暴力の子~  作者: 赤原いもり
地下都市編
15/26

断崖の出口

 カルカとエリノラはようやく下水道の出口にたどり着いていた。しかしそこは期待していた出口には程遠い場所だった。


 潮の香りが吹き抜けるその場所は、大海に面した断崖絶壁の中腹だった。眼下の海まではかなりの高さがあり、白いうねりを伴いながら波しぶきを立てている。


「で?ここが出口か?」


 下水の流れ落ちる先を無気力に見つめるエリノラに、失望した様子で尋ねるカルカ。責められているような気分になったエリノラは、唇を尖らせて少し拗ねた口調で言い返す。


「そ、そんな事言われたって…こんな風になってるなんて知らなかったし…。」


 ぶつぶつと一人言い訳をするエリノラを横目に、カルカはここから出る手段を考える。


 下も上もかなり遠いな、飛び込むのは最後の手段として、岸壁を登るのは…この女が無理か。


 カルカは隣に座り込んだ少女に目を落とす。くたびれたローブから覗く四肢は小枝のように細く、弱々しい。小柄な体は彼女の物怖じしない性格とは裏腹に、控えめなボディーラインをしている。


 ジロジロと少女を観察するカルカの視線に気付いたのか、エリノラは胸元を隠しながら恥ずかしそうに怒る。


「ちょっ!何よ?どこ見てんの!」


「ああ?お前がこの岩壁を登れるか考えてたんだよ。心配しなくてもそんな貧相な体に興味なんてねぇよ。」


 カルカの無神経な言葉がクリティカルヒットしたのか、エリノラはより一層目くじらを立てて怒り出した。


「はぁあ!?貧相じゃないから!まだ十六だから!これからなんだから!!」


「へいへい…ってお前俺とちょっとしか変わんねぇのかよっ!チビだな~、俺の肩くらいか?」


 顔を真っ赤にして怒るエリノラに対しカルカは、薄ら笑いを浮かべながら彼女の身長の低さをからかう。怒りが頂点に達したエリノラが大声で罵倒しようと口を開きかけた時、カルカがその口を塞ぐ。


 もごもごと口を動かすエリノラにカルカは人差し指を立てて自分の口に当てると、下水道の奥の方を見つめてゆっくりと塞いでいた手をどける。


「何か…こっちに来る。」


「…また魔物?」


 恐る恐る問いかけるエリノラに対し、カルカは再び人差し指を立てた後、静かに呟いた。


「違う…足音が小さい、多分人間だ。」


 少女も同じように耳をそばだててみるが何も聞こえない。この男腕力だけじゃなくて聴覚まで人外なの?


 それからしばらくして、二人が注視していた通路の暗闇に、白い顔が浮かび上がった。それはマスクを付けた黒づくめの男だった。闇市で遭遇した監視者ウォッチャーに似ていたが、身に着けた仮面がペストマスクではなく、犬に似た動物の頭蓋骨を模したものだった。


 怪しげなその男は二人から少し離れた所ところで止まると、見た目の不気味さとは裏腹な明るい口調で喋り始めた。


「やあ!僕は監視者ウォッチャーの追跡担当でハウンドって言うんだけど、君たちが賭博施設をぶっ壊したっていう二人組で間違いないのかな?」


 自己紹介をしつつ追跡者だと明かした男は、どうやら監視者の仲間らしい。少女は自分にかけられた容疑を否定しようと口を開く。正確にはカルカ一人による所業であって、エリノラ自身はただ巻き込まれたのだと。しかしそれを遮るように隣にいたカルカが喧嘩を売り始めた。


「いや…それはこの人が―」


「だったらなんだ?喧嘩なら受けて立つぜ?」


 ハウンドと名乗ったその男は、カルカの好戦的な返答を聞き、弾むような笑い声を上げる。カルカの遮りで濡れ衣を晴らすチャンスを不意にされ、口を半開きにして固まっていたエリノラもその男の笑い声に意識を引き戻される。


「アッハッハッハ!ハァ~、いいねぇその闘争心むき出しの感じ!さすが危険度Aクラスの魔物をこんな風に殺した男だ、頭の中も相当ぶっ飛んでるようだねぇ!」


 そう言いながらハウンドは自分の前に何か大きな塊を投げ出した。ドチャッと湿った鈍い音を立て、地面に紫色の液体を広げるその塊は、先刻カルカが真っ二つにした沼地竜スワンプドラゴンの半身だった。動揺するエリノラと、怪訝な顔をするカルカを前に男は言葉を続ける。


「こいつはちょっとした仕込みで持って来たんだ。さすがの僕も二対一じゃ分が悪いんでね、即席で仲間を作らせてもらうよ。」


 そう言ってハウンドが目の前の死骸に向かって手をかざすと、死骸を中心に紫色に発光する魔法陣が現れた。その様子を見ていたエリノラが何かに気付き驚きの声を漏らす。


「死体を媒体に使う魔法…あなたまさか死霊術師ネクロマンサー!?」


エリノラの推測を嬉しそうに肯定するハウンド、その明るい口調と魔法陣の陰鬱な光が相まって、目の前の男の不気味さをより一層引き立たせている。


「大正解だよ魔術師のお嬢さん、見るのは初めてかい?死霊術は良いよぉ?こんな死体からとっても強力な使役魔が作れちゃったりするんだ…。さぁ!死の芸術をとくとご覧あれ!”不死の誕生(アンデッドオブバース)”!!」

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