閑話 監視者の猟犬
カルカたちが沼地竜に襲撃されてからしばらく後、同じ場所に不気味な格好をした男がいた。
「ありゃりゃ…、今回の獲物はかなりの大物だねぇ…。」
下水道の通路にしゃがみこんだその男は、真っ二つに裂かれた死骸の傷口を指でなぞりながら、しみじみとした口調で独り言を言う。
小光石の明かりに照らし出されたその姿は全身黒ずくめで、顔は犬の頭蓋を模したマスクで隠されている。彼の名はハウンド、監視者の構成員の一人で、その仕事内容と名前から”猟犬”と呼ばれている男だ。
彼の仕事は主に他の監視者たちが取り逃した違反者を、捕獲あるいは抹殺することだ。しかしほとんどの場合、彼に追われたものはその命を落とす。それは、純粋にこの男が強いのもあるが、一番の要因は彼の捕獲と抹殺の線引きが、相手が抵抗するかしないかにあるためだ。たまに抵抗せずに捕まる者もいるが、結局上の連中に苛め抜かれて殺されるので、彼自身お勧めはしていない。
「前回は見つけたらすぐ投降してきて全然面白くなかったからなぁ、今回の狩りは楽しめるといいな~。」
久しぶりの仕事に心躍らせる監視者の猟犬は嬉しそうに呟きながら立ち上がり、ターゲットのいる下水道の出口に向けて、何故か裂き殺された魔物の死骸を引きずりながら歩き始めた…。




