⑯ 運動習慣の作り方1
質問者:では具体的にどれぐらい運動をしたらいいのでしょうか?
筆者:2010年にWHOが発表した「身体活動および座位行動に関するガイドライン」によりますと、
一般的な成人に対して1週間で150分~300分の中強度の有酸素運動もしくは75分~150分の高強度の有酸素運動)を行うことを奨めており、青少年に対しては、平均して1日に60分以上の運動実施を推奨しています。
質問者:えー、特に忙しい現代社会人ですと75分でも相当厳しそうな気がするのですが……。
筆者:僕はWHOのガイドラインを紹介しておいてアレなのですが、運動習慣というのはロングランの人生をかけての活動だと思ったほう良いです。
つまり、WHOガイドラインは“最終目標”ぐらいに思っておいて毎日続けられる範囲内で徐々に強度を強めていくことがベストな選択肢かなと思っています。
突発的なダイエットのモチベーションは束の間の恋人のように長続きしないので、“どうしたら持続するか”を焦点にして話させていただきます。
質問者:具体的にどのようにして継続していけばいいのでしょうか?
筆者:モチベーションを失っても続けられるように自然に生活の一部にしていくことが大事だと思います。
例えば、トイレに行くことや体を洗うことなどは意識して行っている方はあまりいないと思います。そう言った生活の一部分にしてしまうことが大事だと思いますね
まずは、“今の生活“の延長線上の活動を”運動”レベルに昇華させることです。
具体的には皆さんが必ず行っていると思われる“通勤通学”を“運動”に昇華するということです。
質問者:え……通勤通学は“運動”にカウントしちゃダメなんですか?
筆者:勿論、何も動かないよりかはマシだとは思うのですが、その移動方法が「トボトボと歩いている」のだとするのならばほとんど運動効果はありません。
①胸を張って ②早歩きで ③腕を振る
この3つの要件を満たしているのでしたら、運動と認めても良いと思います。
というのも、普段生活をしていて使っている“以外の“筋肉を使っていかないと運動とは言えないんですね。
原理としましては速歩きの際、脚の筋肉には多くの血液が流れ込むのです。
すると本来は腎臓に行くはずの血液量ががくんと減り、腎臓が速やかに体液を増やすホルモンを分泌して対処していくようです。
こうして早歩きによる心肺機能アップによる持久力の向上が見込まれているのです。
質問者:確かに通勤・通学をしているのに体力が低下して言っているというのは、現状の通勤・通学では足りないということですよね……。
ちょっと大変ですが頑張ってみます。
筆者:まずはこれが第一ステップです。しかし、中には大学生などリモート授業がメインだったりする場合、ほとんど外出する機会すらない方もいると思うんです。
そう言った方は、まずはちょっとした場所に外出して見ると良いかもしれません。
具体的には公園などがお金もかからずに気持ちのいい空気も吸えるのでとても良いと思います。
質問者:次の段階に進みたい場合はどうしたら良いでしょうか?
筆者:時間がある方はインターバルウォーキング(速歩)が非常に効果的とされています。
これは、早歩きとゆっくり歩きを交互に数分間ずつ行う運動です。
速歩と歩行を繰り返し行い、速歩の分数を合わせて1日15分間以上行うことが勧められます。
速歩の時には最大体力の70%を使いますが、それがとても重要です。ただ、速歩を長く続けるとすぐに疲れてしまうので、歩行をはさんで、休みながら、できるだけ速歩の時間を積み重ねるというのがインターバル速歩のコンセプトです。
これは科学的にも有効性が証明されているやり方で、
東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利博士の研究によりますと、
60歳前後の中高年を1日8000歩以上のウォーキングを行うグループと、1日15分以上のインターバル速歩を行うグループに分け、5ヵ月間、週4日以上行って、最大酸素摂取量と太ももの筋力を比較すると、
ウォーキングのグループはほとんど変化がなかったのに対して、インターバル速歩のグループは最大酸素摂取量が9%上がり、太ももの筋力が13%上がりました。
最大酸素摂取量が上がるということは、全身の持久力が高まることを示しています。全身の持久力が高まると心臓の病気や糖尿病などの生活習慣病になりにくくなります。
質問者:これは驚きですね。どうしてインターバルを設けることによって、単にウォーキングを行うより筋肉の発達にとって効果的なのでしょうか?
筆者:ラットによるある実験では、強度が変わらない長時間の運動を続けるより、短時間の高強度運動の方が脳に蓄積されるグリコーゲンの量を維持しやすいという結果が出ているようです。
これは脳のグリコーゲンの量は疲労感と相関関係があるといわれています。グリコーゲンの量が少なくなると疲労感を感じ、維持できていれば疲労感を感じにくいのだということで自身の持つ体力以上に運動ができると言うことですね。
通勤・通学をあまり行わず体力が低下気味の方は特にお勧めの方法と言えます。
質問者:しかし、これまでのやり方は全て外に出ないと実現が出来ない方法ですよね?
雨など天気が悪いときには一体どうやって運動をすればいいのでしょうか?
梅雨などはそう言った日が毎日続くように思うのですが……。
筆者:ウォーキングと同じような効果があることとしては「踏み台昇降」がお勧めです。
本来は階段を活用して行うものですが、100円ショップなどで踏み台なども売っていますのでそう言ったモノを活用して雨の日でも運動していただければと思います。
僕も実際に雨の日は必ずと言って良い程踏み台昇降を行っていますね。なるべく外での運動時間と同じぐらい時間を取るようにしています。
ただ、踏み台昇降だと何となく“不満”が残るのでやはり外での運動の方が気持ちが良いように思えますね。
質問者:そう言った形で雨の日では継続していくのですね。
しかし、怪我などをしてしまってあまり動けない日などはどうしたら良いでしょうか?
筆者:怪我だけではなく、中には体調があまり整わない日やとんでもなく忙しい日などもあると思うんです。
そんな日であったとしても”継続したと思える最低レベルの運動量“と言うのを決めておくことが大事です。
とにかく継続しているだけで自信になりますし、自己肯定感も高まっていくと思うのでどんな形であっても「継続していると思える」ことが大事になります。
質問者:なるほど、具体的にはどのような運動をしたらいいのでしょうか?
筆者:踵の上げ下げを行うだけで、足首、ふくらはぎを鍛えて、血行を良くする効果があるようです。
椅子に座ったままの状態で片方のかかとを上げ、もう片方は下ろします。
これを30回繰り返すことで一定の効果があるようです
質問者:その運動でしたら踵が怪我していない限りで来そうですね。
筆者:どこにも出かけなくていいので、寒かったり暑かったりする季節で、外に出たくないようなときでもとても有効であるように思えます。
後は立った状態で、つま先立ちを毎日1分行うだけでお通じが良くなると言った話もあります。
これは、つま先で立つと脚の内側にある内転筋が鍛えられるので、便通が良くなる効果が期待されるためです。
質問者:たった1分で良いのでしたら継続できそうですね!
質問者:後何か習慣化する上でコツみたいなことはありますか?
筆者:やはり生活の一部にするために通勤・通学を「運動」にしてしまうことや“時間トリガー“が一番良いかなと思います。
○○時になったら運動をする○○の後運動をすると言った風に毎日必ずやる“流れ“を作ることが大事になります。
また運動をするモチベーションが無いのでしたらウェブで会話をしながら一緒にウォーキングをすることができるコミュニティなども存在するようです。
あとはリングフィットアドベンチャーなどと言ったゲームの力を借りるのも良いと思いますね。
では次の運動編の最後として筋トレについて触れていきたいと思います。