006 フィアナと同棲生活②
女の子に指をくわえられたことはないので当然慌ててしまう。
だがフィアナは構わず俺の指を咥え、傷口を舐めてきた。
指の腹にフィアナの唇が触れ、その柔らかさに顔が熱くなる。
そうして……少しの時を経て、俺の指は解放された。
「止まりました?」
「止まるかよ! ったく!」
すぐに止血処理をして、血を止めた。
フィアナはその間ずっと首を傾げていた。
「マンガではよくヒロインが主人公にしてたんですけど……」
「ったく。他人にそんなことしてんじゃねぇよ」
「他人じゃないですよ」
フィアナは俺の腕を掴む。
「レイジは私にとって幼馴染で家族で大事な人ですから」
その屈託の無い自信に満ちた言葉にせっかく止血処理したのにまた血が流れてしまいそうだった。
顔が赤くなりそうなのを必死に押さえて、フィアナから視線を外して料理と向き合う。
「調理を続けよう。フィアナは炊飯器のスイッチを入れてくれ」
「は~~い!」
炊飯器のスイッチを入れてからフィアナはずっと炊飯器を見つめていた。
変なやつ……って思いながらも手に残る唇の感触が忘れられない。柔らかかったな。
って俺は変態か!
さっさとメシを作って気を紛らわせよう。
皮を剥いたジャガイモはすでに均等に包丁で切っておいた。
キッチンがそこそこ大きいおかげで同時にこなすことができる。
味噌汁にハンバーグ、添える野菜やソースも含めて効率よくこなす。
ご飯が炊き上がったタイミングで夕食が出来上がった。
「できた!」
フィアナは炊飯器の蓋を開けて、炊き上がったごはんを蒸らしていく。
「炊き上がったご飯……いいにおい」
良い感じに出来てるな。これなら美味いメシが食えそうだ。
でも量が多くないか。何合炊いたんだ。若いとはいえ2人分なんだが……。
まぁ明日にも食えるし問題はない。
「レイジ、ご飯がしっかり炊けました」
両手を脇腹に当て、どや顔でフィアナは言う
たかがご飯を炊くだけ……とは思うが言わせておくか。
「ちゃんと出来るじゃないか。よかった……って何で不満げなんだよ」
「5歳の頃、いいことしたら褒美をくれてやるって頭を撫でてくれました」
「あ……頭? そんなこと言った覚えが」
その銀髪の頭を撫でろって言うのか。
5歳の俺は何を約束してたんだ。まったく覚えてないぞ。
「言いましたもん。さぁ、あの時のように頭をなでなでしてください。男に二言は無いんじゃなかったんですか?」
「それは5歳の頃の話だろ。わーったよ」
正直恥ずかしいがその綺麗な銀髪に触れられるのなら悪くはない。
それにフィアナも単純に撫でられたいだけのようだし、意識するだけ無駄というもの。
昔の通りにすればいい。
「よくやったな」
「ひゃっ」
触りの良い綺麗な髪だった。
ずっと撫でていたくなるようで……その一本一本がまるで宝石のように輝いていて。何というか撫でるってすごいな。
フィアナの奴は子供のように嬉しそうな顔を……。
「カァ……」
「え」
顔を真っ赤にさせていた。
「フィアナ?」
「も、もういいです。何か思ったより恥ずかしくなってきました! ご、ご飯を食べましょう!」
俺が止める間もなくフィアナは後ろへ下がり、そのままリビングの方へ走っていってしまった。
……撫でを求めてきたのはあいつなんだが。
「な、何で照れてんだよ。わけがわからん」
女の子ってホントわからん。
俺の感情と一緒に熱々のハンバーグが冷めてしまいそうだった。