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005 フィアナと同棲生活①

 しまった。つい日本語で言ってしまった。

 フィアナは日本語が分からないためきょとんとした顔をしている。

 なんだこいつ。至近距離だと可愛いが過ぎる。


 視線を外すと前屈みゆえに強調された胸の谷間が目に入る。

 大きい……。手足など体は細いのに胸は大きいのかよ。サルヴェリア人の女ってやっぱ欧米系だよな。


 落ち着け……照れたら負けな気がする。落ち着いて言葉をサルヴェリア語に変換する。


「何をやってんだよ」

「レイジの髪……黒くて硬くてしっかりしていてとても素敵です」

「言い方が……って何でもない。男の髪の何がいいんだよ」

「日本人の黒髪はサルヴェリアでは珍しいので貴重なんですよ」


 サルヴェリアの血筋ではどうやら黒髪はほとんど現れないらしい。

 遺伝子的にサルヴェリアの血統が強いという研究結果も出ているとか。

 ハーフはまだしも、クォーターでサルヴェリアの血が3/4までいくと黒髪はほとんど現れないようだ。

 奇抜な色合いの髪は生まれるくせにオカルトかよ、って思うほどだ。


「ああ……」


 起き上がって立ち上がったことによりフィアナの手が届かなくなる。

 頑張って手を伸ばそうとするが俺が体を引いているため届くはずもない。


「昔はいっぱい触らせてくれたのに」

「そうだったっか」


 それは覚えてなかった。

 でもそこそこな時間仮眠を取れたし、寝起きも心地よかったし悪くはなかった。


 さてとどうするか。


「ぐ~~~」


 その時だった。

 目の前のフィアナのお腹から良い音が鳴る。


 ひゃっとフィアナは恥ずかしがりお腹を押さえた。


「ぷっ」


 何だか都合がいいタイミングの音に思わず吹き出してしまった。

 部屋の窓から外を見たら日が沈みかけていた。


「もう良い時間か。メシにしようか」

「ええ!」


 メシと一緒に……これからのことをフィアナと話すことにしよう。


 ◇◇◇


 フィアナがてくてくと俺の後ろをついてくる。

 5歳の時の頃を思い出しているのか、楽しそうに俺の後ろをついてきた。


 しかし……2人きりの家の中。否応にも意識してしまう。

 5歳の時の俺はよくこんな顔の良い女を連れ回してたな。

 今は直視すらできない、情けない。


 母さんや親父がフィアナにまったく害が及ばないって思っているから2人きりにさせるんだろう。

 それは信頼されてるのか、俺に男としての度胸がないと見抜かれているのか。


 どっちもだろうな。


「ところでフィアナ、あんたは料理ができるのか?」

「ふっふっふ」


 自信ありげに言葉を返してくる、


「どう思います? 私だって10年間何もしなかったわけじゃないんですよ」


 この口ぶり、自信があると見た。

 だけど……正直庶民的には見えない。

 フィアナの外見は日本で言う社長令嬢っぽくて、身のまわりの世話を全部側仕えにさせているような感じだ。


 君主制で貴族国家であるサルヴェリア王国は未だ貴族が偉そうに幅を利かせているらしいが……フィアナはどうだろうな。

 だったら聞くべきことは1つだ。


「得意料理を聞かせてもらおうか」

「握り飯です」


 はりせんどこ行った。はたきてぇ。


「炊飯器の使い方は覚えたのでご飯は任せてください、ふふん」


 ドヤァと仕草も可愛らしく見えるんだから美人って得だよなって思う。

 料理は基本俺が担当した方がよさそうだ。


 正直、女の子の手料理に憧れていたが諦めることにしよう。

 信じられるのは自分の腕だけだな、


 台所に来て、さっそく晩飯作りに入るとする。

 冷蔵庫を覗いてみるとそれなりの食材が入っている。


 入学式が明後日で土日挟んで月曜から授業のためこの家で飯を食う機会は多い。

 サルヴェリアの学校の行事工程は日本と同じ四月スタートだ。


「もうちょっと保存の利きそうなのを買いにいった方が良さそうだな。フィアナ、近くにスーパーはあるか?」

「歩いて15分くらいの所にありますよ! 前にシャロンと行ったことがあります」

「明日行くか」

「はい!」


 意外に女の子と喋れているじゃないか。やるな俺。

 だが正直話題を捻り出せなくて限界が近い。

 男同士なら気兼ねないんんだが……女の子はやっぱ苦手だ。


「フィアナ、じゃあ飯炊きを頼む」

「は~い!」


 びしっと可愛らしく敬礼なんてしやがる。

 日本製のゾウのマークの炊飯器だ。俺の家でも愛用していたし、任せていいだろう。

 こっちは卵に挽肉、タマネギと他の食材が少々。


「レイジは何を作るんですか?」

「ハンバーグでも作るか。肉は行けるか?」


「大好物です。私、おっきいのがいいです!」

「わらじハンバーグか。ま、俺も腹減ってるし作ってやる」

「わーい」


 体が細いから小食かと思ったがそうでもないようだ。

 まぁ食べきれなかったら明日の朝にでも食べりゃいい。パンズに挟んでハンバーガーもありだな。

 全部使い切る形で作るとするか。


 さてと調理の時間だ。

 親父が出張でほぼ1人暮らしだった俺はガキの頃からほぼ自炊をしていた。


 体を大きくするためには食べる才能を開花させる必要があったのでなるべく美味しく、量もたくさん作れるようにしていた。

 ハンバーグだってそうだな。挽き肉と野菜をたくさんを詰め、油を使いすぎずカラッっと焼き上げる。

 意外にコツがいるんだよな。


 ハンバーグを作ってる間に別の料理にかかるとしよう。

 ハンバーグにご飯に生野菜があるからサラダでも作るか。

 あとはやっぱり味噌汁だな。ジャガイモがあるし、入れてやるか。


「へぇ、レイジってお料理得意なんですね。意外です」

「意外ってなんだよ」


「5歳の頃、おままごとしても何でもかんでも泥団子を私に差し出してきたじゃないですか」

「10年経てば変わるだろ。それよりもうちょっとしっかり洗えよ。無洗米じゃないみたいだし」


「へっ。だ、大丈夫ですし!」


 米洗いの手つきが怪しく、若干不安になってきた。

 俺はフィアナの手つきを見ながら、ジャガイモの皮を包丁を動かして剥いていく。


 フィアナはボウルに入ったお米に水を入れて洗っていた。

 米ぬかさえ取れればいいのでそこまでしっかり洗わなくていいけど……まぁいいか。


 しかしまぁ銀髪の欧米系の女が米を洗うってのは何だか不思議だよな。

 真剣な目でお米を見つめるフィアナの姿にじっと見つめてしまう。


 本当に綺麗だ。真剣な横顔、目、鼻、唇。全てが綺麗で惹かれてしまう。


 ふと視線を俺の方に向けたフィアナが驚愕していた。


「レイジ! 手ぇ、手ぇ」

「あ? おお!」


 気づけば包丁で指を切ってしまっていた。

 すぱーと出血する。


 じゃがいもの皮むき中によそ見してしまったのが悪い。

 軽く切っただけなので処理さえればすぐ血は止まるだろう。


「レイジ、早く止めないと!」

「大丈夫……って」


 フィアナは指を切った俺の手を掴んだ。

 止血処理をしてくれるのかと思ったら、フィアナは自分の唇の方に俺の指を持っていく。

 まさかと思った矢先に俺の指は咥えられてしまった。


「はむっ」

「ちょちょちょ、おまっ!」



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