013 いざ貴族学園へ①
「お腹が空きました」
「……」
ある意味想定しているはずだったが、その想定から外れて欲しかったと思わず思ってしまう。
ここまでボケボケな行動をされてしまうともうフィアナを雑に扱ってもいいんじゃないかと思うようになってきた。
「おらっ」
フィアナの口に焼いた食パンをつっこんでやる。
ちょっと冷めてるので火傷することはない。
「おいひー」
「しっかりバターを塗ってやったからな」
俺の力のこもったサンドイッチは別で用意してある。
どうせこのパンだけじゃ足りないだろうから道すがら食べさすとしよう。
「アニメで見たことがあります。パンを食べながら曲がり角でぶつかると恋が生まれるって」
「パンを食べ終わるまでに相手を見つけないとな」
「だったら……見かけたらすぐに突進していきますよ」
「当たり屋じゃねぇか」
気を取り直し、フィアナと一緒に通学路を歩く。
案の定食パンじゃ足りないと嘆くフィアナにサンドイッチを食わせつつ、最寄りのステーライヒ駅まで到着した。
「この電車に乗らないとやばい。行くぞ」
「は~い!」
SR鉄道。サルヴェリア・レールウェイの略でサルヴェリア王国全土に広がる広大な鉄道網である。
王都サルヴェリア内ではメトロ(地下鉄)もあり、ステーライヒ駅から王都サルヴェリア中央駅まで進み、サルヴェリアメトロに乗って、ケスフェルエス王立貴族学院前駅まで乗るのがルートである。
このあたりに日本と変わらないな。
日本とは違うので乗車率100%を超える満員電車でもないし、時間にも若干不正確だ。
車両の形も日本の電車を参考にしているらしく、日本人として別の国に来た感がない。
駅から電車に飛び乗り、俺とフィアナは王都中央駅に向かう電車の中で話をする。
「ふぅ……何とか間に合いましたね」
「ったく、毎朝これだったらたまらねぇな」
「うぅ、朝はダメなんですよぉ」
王立貴族学院は基本寮生活で月に1回の土日のみ家に帰ることができる。
なので男子寮、女子寮が分かれるおかげでフィアナの目覚まし担当を俺がやることはない。
……あの下着姿の光景をまた見たいと思ってしまうが口に出さない。
「寮は2人部屋になるんだっけ。相手によるよな」
「……寮は誰と一緒になるのか気になります」
「ちゃんと1人でも起きれるようになれよ。ってかもっと早く寝れば起きれるんじゃないか?」
「何時に寝ても朝は眠いんです。12時間以上は余裕で寝れます」
「赤ちゃんかよ……」
「そうだ! 朝と昼にしっかり寝れば夜を寝る時間を少なくできるかも!」
「授業中寝るってか。何のために学校に行くんだ」
SR鉄道は満員電車などないと聞いていたが、やはり朝の時間帯は人が多いな。
王都に近づくたび、列車内も混雑もしてきた。
「っ!」
「レイジどうしました?」
嫌な視線を感じる。
視線の先は……俺ではなくフィアナ。
それも複数の男性からだ。
あのエロかわいい制服を着た世界一の美少女がいるんだ。視線を集めていてもおかしくないってか。
エロいことしようと近づいてきやがる。痴漢は日本だけのものじゃないんだな。
「フィアナ、こっちこい」
「へ?」
フィアナを壁側に押しやり、手を出されないように俺の体で隠す。
「レイジ、もしかして」
「気にするな。そのために俺がいる」
だが思ったより背中の圧が強い。
王都中央駅はまであと5分。これは我慢だな……。
「ぐっ」
「きゃっ」
背中を強く押されてしまう。
体勢的にフィアナに痴漢被害が及ぶことはないが……。今度は俺がフィアナを押しつぶそうとしていた。
体が密着して、まるでハグをするようにフィアナの体を俺の胸で押しつぶしている。
「フィアナ、痛くないか?」
「大丈夫です。ねぇレイジ、もうちょっと私に近づいてもいいですよ」
「問題ない。あと5分足らず耐えりゃいい」
これ以上近づくと胸とか顔とかに当たりそうなんだよ。
フィアナが困るんじゃなく俺が困る。
だからここは絶えるしかない。そう思っていた。
フィアナが俺の胸に手を当てるまでは……。
その手をモミモミとし始めるまでは……。
「おい」
「レイジの胸筋いいですね、いいですね……」
「あんたが痴漢してどうするんだよ!」
「え、冤罪です。私、何もやってないです」
「痴漢した奴はみんなそう言うんだ。残念だが俺の胸筋にあんたの指紋がついている。言い逃れはできんぞ」
「この手が悪いんです!」
「よし警察いこうか」
「にゃ!」
『王都サルヴェリア中央駅に到着です』
冗談な会話はさておき、混雑している車両からフィアナを連れだし、メトロの方へ行く。




