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エピソード 04

この手の魔法道具は、恐ろしく長持ちだ。

そう簡単には錆びたりしない。

余程の時間が経たないと、劣化しないものね。


私がため息をついて、俯いた次の瞬間、

ガシャン!

という音がして、腕輪が外れた。


驚いて顔をあげると、腕輪が錆びて朽ち果てていくのが見える。


え?え?

何が起こったの?

驚いたのは私だけじゃない。


「嘘!?ありがとう!!」


中の女性は嬉しそうに、両手を体に当てて何事か唱えている。


それから、みるみる彼女の顔色が良くなって、自分が入っていた牢屋を見えない力で引きちぎった。


「こ、これはどういうことーだ!?」


後ろからノアム理事長の声がする。


私だって知りたい!

いきなりこんな・・・。


私は何が起きたのかも分からずに、ただ怯えるしかない。


「こんな研究所なくなればいい!

同胞たちの分までお返しするわ!!」


黄泉の一族の女性はそう叫ぶと、立ち上がって凄まじい風圧を全身から放った。


そのまま光に包まれて、あっという間に建物の上まで突き破ると、消えていった。


私もノアム理事長も吹き飛ばされて、慌てて起き上がる。

次の瞬間、建物のあちこちに亀裂が入り、崩れだした。

ノアム理事長は魔法で逃げ去り、埃が舞う中、私は急いで地下の階段を上って外に出た。


あちらこちらで、何かが燃えている臭いがする。


「早くこーい!」

「逃げろ!資料は諦めるんだ!!」


研究所員の叫び声がこだましていた。


「はぁ、はぁ・・・。」


私は息をあげながら、空を見た。

外は暗くて、雨が降り続けている。

他の研究員も、次々と外へ出てきた。


やがて全員が出たあたりで、建物が跡形もなく崩れ去っていく。


私はその様子を眺めていたのだけど、移動の魔法で先に逃げていたノアム理事長が、目の前に現れたので、悲鳴をあげて後ろに下がった。


彼は、すぐに手を伸ばして私の肩を掴むと、激しく揺さぶってくる。


「何をしたんーだ!?

鍵なんか渡していないのに、どうやってあの女の拘束具をはずしたんーだ!?」


「わ、わかりません!

私は、私は何も・・・!!」


「ええぃ!お前のせいーだ!

ゴルボスを呼ーべ!!

もう一度あいつを捕まえーる!

そしてお前をゴルボスに突き返してやーる!!」


私はノアム理事長にそう言われて、とても怖くなってきて必死に首を振った。


「い、嫌です!

私は・・・、私はあんな男のところへ戻りたくない!!

離してください!!」


肩を掴むノアム理事長の手を掴んで、振り解こうとした時、ノアム理事長が時を止めたように動かないことに気づいた。


「え!?」


私は驚きながら、ゆっくり後退する。

ノアム理事長はまだ動かない。


周りの研究員は気付いてないようだ。


秘書のテルシャだけが、遠くからこちらを凝視ししている。


私は彼女の視線も怖くなって、よろめきながら、その場を逃げ去った。


怖い!

私は何もしてない!!

ゴルボスのところにも帰りたくない!!

その一心で走り続ける。


降りしきる雨の中を、走って走って、知らないところへ来た。


「はぁ、はぁ・・・ここ・・・どこ?

寒いな。」


鼻を啜って、両手で腕をさすり、雨が降って視界の悪くなった辺りを見回す。

これからどうしよう・・・。

行くところなんかないのに・・・。


そう、思った時。


雨の雫が跳ねる地面の土が、不気味な動きを見せた。

まるで生きているかのように動き、人の形を形成すると、私の方へ向かってくるの。


「わわ!」


思わず後ろへ下がる。


「きゃ!!」


足を踏み外して、体が落ちかけていくのを、必死に目の前の岩場に掴まってなんとかしのぐ。

雨に濡れて、手が滑る!


崖なんだ・・・ここ!!


下を見下ろすと、道が見えるけど結構高い。

降りるしかない・・・上がれば、さっきの泥人形がいる。


怖い!

どうしたらいいの?


泣きそうになっていた時に、


「飛び降りろ!

受け止めてやる!!」


と、下から声がした。


見下ろすと、馬の手綱をひいた銀髪の青年の姿が見える。

こ、この高さでそれを言うの!?


「無理です、怖いので!!」


と、私が叫ぶと、


「つべこべ言ってる場合か!

上を見ろ!」


と、怒鳴られる。


私が上を見ると、泥人形が崖の縁から手を伸ばして私を掴もうとしていた!


やだ!怖い!!


思わず手を離してしまった!!


落下中、風の音が耳の中に響いてくる。


怖い!

痛いのは嫌!!


目を閉じて、身を縮め、衝撃に耐えようとしたその時だ。


「なんだ・・・これ!?」


先程の青年の声が近くで聞こえる。

目を開けると、私も驚いた。


「う、浮いてる?」















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