7木の階段
教室を出た僕は、今、資料室に入ってもとあった場所に資料を戻すところだ。
「えっとー確か、ここらへんだったよな」
そう呟きながらもとあった場所の棚を見つけて、それをしまう。
まあ、どうせろくに使ってない資料室だし少しくらい場所が間違っていたって誰も気にしないだろう。
その証拠に、資料室はカーテンが閉ざされて放課後でまだ太陽があるにもかかわらず暗いし、よくよく見ればかなり置かれているものにもほこりがかぶっていたり、部屋もほこり臭かったりだとか、とにかくあまり使われていると思えないわけだ。
早く出ようと思いドアを開けて資料室から出る。
本当に思ったより作業が早めに済んだので帰ろうかと思ったが、資料室の隣にある階段を見て、せっかくここまで来たことだし、めったに来ることのない屋上のほうへと足を向けることにした。
まだ、紗耶香と英司は集まっていないだろうし少しくらいいいだろう。
そんなことを考えながら屋上の階段を上っていく。
階段を上りきってドアを開くと、外の空気と風が舞い込んでくる。放課後の屋上ともあって、きれいな夕焼けがよく見える。
「やっぱ、きれいだよなあ、夕焼けって」
と僕は感嘆を漏らしつつも景色を堪能した。
紗耶香と英司たちのことも考えて、あまり長居できないと感じた僕は1分ほど景色を堪能してから、屋上のドアを閉めて屋内の階段へと戻った。
そうして階段を下っていると屋上と4階の階段の踊り場を歩いて回り込み4階の廊下の地面と廊下の窓の風景をなんとなく視界に入れながら階段を下っていると、
「ドンッ」
と一度だけ鈍い音がした。
いや正確には鈍い音を聞いた気がしたのだ、少し大げさに聞こえるかもしれないがしっかりと聞き取れていたわけでわないのだ。
誤解なく言うなら、聞こえたというより違和感に近い気がする。
普通私たちが駅の階段を下っていても少しの物音ではなにも気にしないことだろうし、
告白の緊張を紛らわすために屋上の階段を一気に駆け上がって何か物音がしても気にならないだろう。
まあ、放課後でみんなが下校し学校は静かになり始め、そのうえめったに利用されない場所にいれば、物音に反応してしまうのも仕方がないであろう。
そう今の鈍い音は間違いなく階段からしたはずだと僕は思い、階段を降りようとした足を止めてその場でかがんで音がしたであろう階段を見てみるが、特に損傷もなければ、きれいな木製の板で作られた階段なのだ。
僕は何の音なのかと思い回りを見渡してみるが特に物も落ちてもいないし何も音が鳴るようなものもなく、首をかしげてしまう。
もう一度音のなったであろう階段を見つめてみるがやっぱり何ともない。
だから僕はなんとなく音がしたであろう階段を手でまさぐって確かめてみる。
そうすると、突然、僕の右手が奥に入った。
僕は何が起きたのか把握できずに目を見開いて右手を凝視してしまう。
そう、今僕の右手は、その音の下階段の段差のところにちょうど一本くらい手が突っ込めるくらいの穴に自分の右手を突っ込んでいたんだ。
ほら、今時一軒家とかマンションの扉の中央の下に猫とか犬がパカパカとと出入りできるような蓋がついているだろう、そんな感じで猫や犬が体を入れて出入りすれば蓋の重さで勝手に締まるように簡単に金具が取り付けられているようなタイプのやつだ。
今まさにそのような仕掛けが階段の段差の部分にされているわけで、そこに右手が突っ込まれていて、
突っ込んだままの右手の上には開いた木製の蓋がのしかかっている。
僕は少し気を取り直して、右手で階段の段差の中をまさぐると、何か固く少しひんやりとした細い何かをつかんだ。
そのままそれを手に握って右手を中から引き抜く、それと同時に僕の右腕を引き抜くと蓋が
「パタンッ」
と音を鳴らして閉じる。
そして、僕の握った右手をゆっくりと開いてそれをみると、古びたカギが僕の手のひらの上にのっていた。
少しずつ進んでいきます、頑張って書いていくので応援よろしくお願いします。