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八話 色々あった後「あの人」に、出会うまで


 結局、このままベリル様の召使いであることを無視して滞在するのもどうかと思い始めていたころ、王子命令でリンにお城への滞在を頼まれた。

 いいんだろうか、と思いつつベリル様からは「がんばりなさい」という手紙が届いた。 

しばらくして、ほかの国からあたしあてに、どんどんお礼の品が届いた。

 一度送られてきた以上、いりませんというわけにもいかないし……。

 山盛りのプレゼントに、困っているとリンがやってきた。


「どうしたんだい、ローラ? 困った顔をして」

「いや、こんなにいっぱいもらっても……」

「中を見てみたのかい?」

「え、あけていいんです?」

「そりゃそうだろう。ローラ宛なんだから」

「何が入ってるのだろう」


 冷や冷やしながら開けてみると……意外と食べ物だらけだった。

 よかった。食べ物なら消費できる。

 まああたし自身、あまり着飾ってないし気を使ってくれたのかな。

 でも、そこに一枚だけドレスが入っていた。


「白を基調にした、清楚なドレス……?」


 華奢な感じがする。


「これを着て、明日のパーティに来てほしいらしい」

「えっ!? 隣の国に行くの?」

「ああ。一緒に行こう」

「でも、あたし、国の代表になんて」

「ローラが彼らを助けたんだからな。当然だろう」

「ええ……」


 助けたって言われてもなぁ……何もしてないんだけど。

 でも、王族からのお誘いを断るわけにはいかないしなぁ。

 仕方がないので、あたしはそれを承諾することにした。


***


『ひさしぶりだな』

「リーチェ」


 魔鳥リーチェに久しぶりに会った。

 どうやら、移動手段は彼らしい。

 リンが緊張した様子でリーチェを見ている。

 すると。


「あっ」


 リーチェがリンに頭を垂れた。


「あ、ありがとうございます、リーチェ様」


 ガッチガチの敬語でリンがお礼を言う。


『なあに、お前はいいやつの匂いがするから、かまわぬ』

「リンからいい人の匂いがするって」

「ローラ!」


 あわあわするリンは、王子様というよりは普通の男の子だった。

 普段の威厳はどこへやら……。

 ガッチガチで、なんかかわいい。


「あはっ」

「なぜ笑う、ローラ」

「いえ、なんだかかわいらしいなと」

「!? 俺が!?」

「すごく、可愛い」

「……ば、馬鹿言うな」


 あたふたするリンはやっぱりかわいかった。

 何でもできそうなリンが身近に見えた瞬間だった。

 そうだよね。王子だって自分と同じ人間だよね。

 自分とは遠い存在には、思えちゃうけれど……。


「ローラ……いい笑顔をしているな」

「ふへ?」

「今まで、すごく緊張した顔をしていたが……」

「嘘」

「今のローラが一番、可愛いよ」

「えっ」


 あたし、どんな顔をしていたの?

 きっと、気の抜けた間抜け顔をしていたのだろうけど……それが、可愛い?


「まあ、とりあえず、行くぞ」

「うん、リン」

 あたしたちは、ティープ国を旅立ったのだった。


***


 途中、あたしたちは飲み物を買いに、寄り道をすることにした。

 そこで、あたしは凄くかわいいスカートを見つけた。


「ナニコレ!?」

「これはパニエといって。スカートの下に履くものだローラ」

「虹色で、そのまんまで履いた方がかわいいよ! そうだ! これを履いてダンスを踊ろう! そしたらきっとみんな笑顔になる」

「……奇抜な発想だな。別に、笑いを取らなくてもいいだろう」

「だって、綺麗じゃない? それにみんなが笑顔な方が盛りあがるじゃない、リン」

「まあ、綺麗ではあるがな」


 笑いをこらえるリン。何で?


「ローラらしいよ」

「えー?」

「まあいい、荷物は俺が持つ。次はお茶を飲もう」

「あ、ありがとう?」


 何であたし、笑われてるんだろう?

 不思議に思いつつ、あたしはジュースと虹色パニエを買った。

 そして、あたしはふらふらと迷子になった。


「どうしよう」

「なぁ、そこの女の子」

「はい」

「お金、貸してよ」


 なんだろう。困ってるのかな。ガラの悪そうな男の子だ。

 今あたしは貴族を意味する白いワンピースだけど、この国では普通に白い服の人、見かけるからなあ。どうしよう。


「今お金持ってなくて」

「いやあ、ないなら、稼いでよ?」

「へ?」

「その体でさ!」


 そう男の子が叫んだとき、ドカッと音がして男の子は倒れた。

 どうやら、男の子は急所でも殴られたのかケガもなく気絶したらしい。


「ふざけるな」

「リン」

「誰がローラの体を売るか。ローラは俺のもんだ」

「……リン」

「大丈夫だったか?」

「ん」

「本当、ローラはかわいいんだから一人になんてなるな」

「そんな」


 なんだか、恥ずかしいなぁ。

 あたしはもじもじして、リンの顔を見れなくなる。


「さあ、行くぞ。ローラ」

「うん」


 リンに引っ張られ、耳まで熱いままあたしは彼の後を追いかけた。

 


***

 

 袋に詰め込んだパニエを持って、空を飛ぶ。

 フワフワで、パニエは飛んでいきそうだ。

 パステルな虹色は、綿菓子みたいにきれいで。

 どうしても、欲しいと思ったのだった。

 あたしは幸せに満ちながら、目指す国にたどり着いた。

 するとこの前見た貴族……その国の王子様達が待っていてくれた。


 ゲームの中では見かけなかった、長い灰色の髪の王子様。

 たぶん、本編のルートには関係ないキャラだろうなあ。


「いらっしゃいませ! さあ、ぜひお部屋でお着替えになって集まりにご参加ください」

「ありがとうございます、ほら、ローラ。もらったドレスに着替えに行こう」

「はい」


 あたしは、個室に通された。

 そして、そこでドレスを袋から引っ張って……。


「うわああああ」


 びりびりと、勢いをつけすぎてスカートを引き裂いてしまった……。

 召使のいない部屋で、あたしは頭を抱える。

 胸元は無事だけれど……下のほうが明らかにビリビリ。

 しかもよりによって胸の真下。真ん中が破れてしまっている。

 困った。実に困った。そんな時、目の前にパニエがあることに気が付いたのだった。


***


「よし、パニエで膨らませて着ることはできたから、あとはここの国の王子様に謝罪……だよね」


 さすがに頂いたスカートを破くとか最低すぎるよね。

 あああ、胃が痛いよ。

 そう思っていた時に。


「すみません! ローラ様」

「……? どなた?」

「ドレスを送った召使です!」

「……ああ! すみません、あたしこそ」

「いえ、そのドレス、サイズを間違えて一回り小さく送ってしまったんです! ……それを、綺麗にアレンジして着こなしてくださるなんて……本当、なんて心の広い方なのでしょう」

「へ? アレンジ? これは破っちゃって」

「それはそうでしょう。サイズが小さければ破けます」

「えっと、そうじゃなくって」


 着て破いたんじゃなくて……。というかワンサイズ下で、違和感ない私の胸元はどうなの……? 何気に悲しくない?

 まあ、それは置いといて。


「白いドレスに虹色のパニエ、お似合いです。王子には自分たちからアレンジしていただいたものだと説明しますから、どうぞ、集まりに……」

「えええ……」


 これじゃあまるであたしの手柄じゃん……。

 あたし、何もしてないどころか、ドジっただけなんだけど……?

 きょとんとしていると、リンが現れた。

 目を輝かせてあたしを見ている。


「ローラ! 聞いたぞ! サイズが違う服をアレンジするためにあのパニエを買ってたなんて……さすがだな。ただ気に入ったように見せて気遣いの塊とは」


 いいえ、ただ気に入っただけです。すみません。

 何も考えてないのに……。


「やはり、ローラは素晴らしい」

「えーっと」

「俺の自慢の未来の妻だ」

「……うーん」

「では行こう、ローラ。パーティへ」

「あ、はい。遅刻してしまいますもんね」


 結局あたしは、パーティに慌てて向かうことになった。

 そこで、「ある意味では」見慣れた顔にであうことになるのだけれど……。

 よく考えれば、そりゃいるよね。

 だってあの人は……。



皆さん本当誤字報告ありがとうございます、感想もうれしいです。

誤字報告で、皆さんのおかげで読みやすくなり、皆さんのおかげで当初より良い作品にしていただけて本当に心から感謝しています。

これからも誤字報告や応援いただけると本当に励みになります。

がんばっていきますので、よろしくお願いします。

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