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五話 運命の王子様?


 その姿はどこかで見たような気がした。


 浮かんだのは、とある一枚のスチル。

 主人公であるお姉ちゃんが、祝賀祭で王子様と並んでいた時、そばにいた……別の国の王子様! そうだ、この金髪をさらさらとなびかせた、ラベンダー色の瞳の美男子は、たぶん、今いる国の王子様だ!?


 えええええ!? あたし、まさかの王子様にあいさつしなきゃいけない系?

 上から下まで高級そうな雰囲気の、この王子様に!?

 庶民通り越した育ちの、この、あたしが!?

 こんなすごい人、直接しゃべっちゃうの?


 ゲームの中では、自分の国の王子様に毒を吐いていた気はするけれど……それとこれとは全然意味合いが違うよ!?

 うわああああ、心臓がおかしくなりそうだよ。


「ローラ? 顔色が青いぞ」

「ミン様……だって、仕方がなくないですか!? 唐突の王族ですよ!?」

「ボクだって王子だよ」

「知りませんでしたもん!」


 知ってれば緊張もっとしただろうなあ。

 ある意味知らなくてよかったのかもしれない。はあ。


「大丈夫だ、あのことをごまかして、知らないふりをしてくれたお前をボクがサポートしてやる」

「あ、あの事……?」

「口には出すなよ。聞かれたら困るからな!」


 何のことかわからないまま、あたしは首をかしげる。

 あたし、何かしたっけ?

 でも、助けてくれるならそれに越したことはない……よね。


「リンお兄様ぁ。ボクだよぉーミンだよぉー」

「! 無事帰ったのか! その魔鳥……まさか」

「そう! このローラに仕える伝説の魔鳥リーチェだよ! ボクの恩人なんだ」

「ミンの……! すまない、わが弟が面倒をかけた」

「あわわわ、王子様にそんなこと……いえ、めっそうもないです!」


 ナニコレ、どういう状況?

 あたしには大ごとすぎるんだけど……。

 リン王子は深々と頭を下げている。王子様に、そんなことさせていいの!? あたしっ。


「なんて謙虚で清い心の乙女なんだ……すんだ綺麗な空色の目をしているだけはある」

「へ?」

「ぜひ、俺の祝賀会に参加していって下さらないだろうか……! お礼にもならないかもしれないが」

「えええええ、マナーも付け焼刃なのにそんな!」

「マナーなんて気にしませんから!」


 何でリン王子のほうがへりくだってるの!?


「あたしにはベリル様が……」


 意味わかんないんだけど!?

 あああああああああくわああああああああ! 変な汗出るよっ。

 目が回ってきた……。


「危ないっ」

「リンお兄様!」


 そこで、あたしは大事件を起こした。


「!?」


 ……リン王子の唇に、あたしの唇が触れたのだ。

 嘘!? 


「……リン……お兄様……」


 ミン王子が呆然としている。

 あたし、なんて失礼を……!


「俺の……初めての接吻……」

「うわああああああ」


 発狂するあたし。

 なにやらかしてんの!? あたし、打ち首物じゃない!?

 もう、すみませんじゃすまないよね!?


「……ローラさん」

「はひ、なんでしょうリン王子」

「俺と結婚してください」

「……はい?」


 今、リン王子は、なんて言った?


***



 あれから数分後。

 つまりは、こういう事らしい。


「王族は、初めてをすべて結婚相手に捧げるのが決まり……なんですね……」

「そうである。だから、ローラさん。あなたは俺の結婚相手に決まった……」

「事故ですよ!? 事故ですってば!?」

「でも、俺にとっては初めての接吻だ。……それに……君からは運命を感じる」

「……事故なんですぅ」

「今日の祝賀会で、婚約を発表しよう」

「ええええ……」


 逃げ道なしですか。そうですか。

 もう、めまいがするよ……。


「それに、ミンの恩人だし、魔鳥を従えているなら、十分その価値があるだろう」

「いやいや」

「無駄だよローラ。リンお兄ちゃんは堅物男だから、一度言い出したら聞かないから」

「ひえ……」


 ある意味最悪の展開だ……。

 どうやれば、この状況を抜け出せるだろうか。

 ……!

 そうだ! 祝賀会で奇行を取ろう!

 でもってドン引きされよう!

 うん、それがいい。


「何ニヤニヤしてるんだ? ローラさん」

「いえ、祝賀会が楽しみだなぁ、と」

「ああ。きれいなドレスを急ぎで用意させよう、君のその漆黒のきれいな巻き髪によく似合うドレスを」

「はわわわ」


 あたしがあたふたしていると、とん、と頭の上にリン王子の手が乗った。


「安心するがいい。我が運命の人。その宝石のような瞳を潤ませないでくれ」

「……はあ」


 話が急激に進みすぎてもう……でも大丈夫。

 あたしの奇行で、この話、無しにしてあげるんだから!



***


 一生懸命奇行を考えているうちに、祝賀会が始まった。

 不似合いなピンク色の小花がレースでつけられたドレスに、パールのようなキラキラしたヒール……うわあ、歩きにくい。ヒールで歩くのつらすぎん? 生まれたての小鹿みたいになるよ?


「ローラさん……とても綺麗です」

「いや、それはないでしょう!? こんなプルプルした生き物」

「人前だと上がってしまうなんて、可愛い方です」

「前向き解釈!」


 そりゃ緊張してるけれど!

 めちゃくちゃしてるけれど!

 ちがうよ! そうじゃないよ! リン王子!

 涙目になっていると、そっとリン王子があたしを抱きしめた。


「泣くでない。俺が守ってやるに決まってるじゃないですか」

「……うううう」

「ほら、手のひらを出して」

「?」

「……おまじない」


 ナチュラルに手のひらに口づけられた!?

 うわああ、さすがは王子様。

 でも、恋心もなしに、結婚相手にとか、ありなの!?

 ねぇ、それっていいの!? いいの!?

 そして、祝賀会が始まった。


 まずは、国王の祝いの言葉が始まり、次にリン王子のあいさつ。

 で! あたしの紹介があって、あたしは困ってリン王子を見た。


「ローラさん」

「……リン王子……ってあっ」


 リン王子を見ているうちにヒールのせいであたしはふらつき……。


「きゃあああああ!」

「さすが! 皆様の前でキスなんて大胆……!」


 ああああああああああああああああああ!?

 ふらついて、あたしはリン王子に追い打ちのようにキスをしてしまった。

 大勢の前である。もう、いいわけができない。

 どうしよう、どうしよう。誰か助けて……リーチェとか、入ってきてくれないかな!?

 さすがに無理!? ああああああああああ!


 そこで、目に入ったのはお祝いの豪勢なケーキ。

 あたしは、混乱したままそれに突進して……破壊した後ばくばくと食べ始めた。

 みよ! この奇行! はしたないだろう! さすがに引くだろう!?

 そう思った瞬間……あたしは気絶した。


***


「ローラ! 目覚めたの!」

「……ミン王子? どうしてあたし」

「何で、毒入りだとわかったの!? あのケーキ! しかも、証拠に身を張って毒見なんて……さすがだよ! ローラ!」

「はい?」


 なんのこっちゃ。

 頭が痛い。倒れた時にぶつけたのだろう。

 いや、それだけじゃないな……うん。

 そこで、リン王子登場。なんか、泣いた跡が顔にあるぞ? なぜ?


「ローラさん……」


 お、さすがに引いたのかな?

 やったね! 

 と、思ったのに……。


「ありがとうございます! ローラさんは俺の命の恩人だ……」

「へ?」


 え? え? えええええ?


「あのケーキには、誰かが盛った毒が入っていてな……」

「ええええええ!?」

「それは、女性ならすぐ解毒されるんだが……男性、特に王族はすぐ死ぬ猛毒で」

「ひい!?」


 何それ、怖すぎるんだけど!?

 やっぱり王族、いやがらせされるレベルが違う。超怖い。


「本当に助かった! 出会ったばかりの俺のために身を張って……」

「いや、その偶然で」

「なんて奥ゆかしいんだ……」

「えええ……」


 なんかもう、何言っても無駄な感じ?

 あたしは頭を抱えるも、リン王子は涙目だ。


「感動した……俺は猛烈に感動した!」

「……はあ」


 あたしは猛烈に動揺してる!


「俺は……ローラさんと絶対に結婚する!」

「……はい?」

「こんな勇気ある女性は初めてだ……」

「……ふえ!?」

「好きだ、ローラさん。一生傍にいさせてください」

「…………」

「君にすべてをささげると、俺は神様に誓おう」


 唖然として言葉が出ない。

 おかしすぎるでしょ、この展開は。

 狂ってる。


「ああ。声が出ないほど喜んでくれているんですね」


 違う。


「大丈夫。俺は、ローラさんに一生ついていきます」


 ついていくのはまさかのリン王子のほうですか……。

 もう、反論する力もない。

 あきれて涙が出てきた。


「泣かなくても、大丈夫です。俺が永遠に守ります」


 もう、疲れた。

 あたしは気が付けばまた気絶していたのだった。


***


 目を覚ませば、隣にはリン王子。


「ひい」

「お目覚めか、ローラさん」

「……ま、まあ」

「これから父上と母上に正式にローラさんを紹介しようと思う」

「ええ……そんな」

「もう、公認の仲ではあるんだが……いいですか?」


 断れるわけないじゃないですか、それ。

 王族の言葉ですよ? 王子様ですよ?


「うん……」


 あたしは力なく頷いた。


「よかった、断られたらきっと立ち直れない。こんなに魅力的な女性はほかにいないから」


 リン王子は優しく微笑んであたしの手を取った。


「さあ、行きましょう」

「そういえば……あたし、服が違う」

「ああ、この白いワンピースですか。この国では、純白の服を身に着けていいのは王族の証だからな……」


 まさかの! 歩くだけで王族宣言!?

 脱ぎたいけれど、さすがにそれは恥ずかしいのでできない。

 あきらめてリン王子のされるがままになっていると……王様と王妃様が見えた。

 ミン王子を大人にしたような王様と、リン王子を女装させて縦ロール巨乳にしたような王妃様は、間違いなく王家の血の持ち主だった。


「あらためまして、ローラさん。わしがリンの父である国王コン・ランだ」

「私が母であり、王妃のルンです」

「ロロロロロ、ローラです!」


 舌噛むかと思った……。


「よろしくお願いします……」

「こちらこそだ」

「どうぞリンをお願いしますね」


 この国は、次期王妃に家柄や教養とか求めないんですかね!?

 すんなり認めすぎじゃないかな!?

 ねぇ! 誰かこの関係に文句言ってよ!

 誰かあああああああ! うわああああああん!

 まあ、王族に口出しできる人など周りにいないんですけどね!?

 あきらめるしかないんですけどね!?

 うううう……。


「はい……」


 力なくそう答えるあたしは、こうしてあっという間に隣国の王子様の婚約者になったのだった。



つたない小説ですが、がんばりますので最後まで見届けてやってくださるとうれしいです。

これから基本は毎日十二時に更新いたします。

よろしくおねがいします。

たまに複数回更新する日もあるかもしれません。

応援していただければ嬉しいです。

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