二十五話 最後のお話。
あれから数日後。
お姉ちゃんとカイリ王子は結婚式を挙げることにした。
あたしとリンは、まだまだイチャイチャしたいので、と先延ばしにした。
白いドレスを着たお姉ちゃんがあたしを見てもじもじしている。
「どう?」
「似合うよ、お姉ちゃん」
「ありがとう、ローラ。ローラの花嫁姿も楽しみよ」
「えへへ。お姉ちゃんほど似合わないよ」
「そんなこといったらリン王子が怒るわ」
「あははっ」
「いや割と本気でね?」
「えー? リンは優しいよー」
「あんたにはね」
「?」
リン、裏で何かしてるの……? いや、そんなことはないよね。
だってリンは優しい優しい皆の王子様だもん。
「愛されてるよねー本当。ローラは……」
「お姉ちゃんもじゃん」
「そんなのわかってますぅー」
「あははは」
「うふふ」
「大好きな人の傍に入れるって、幸せだよね」
「本当ね。ローラもいつかそうなるのよ」
「こんなに幸せでいいのかなぁ」
「それを相手が望んでるのだからよいのよ」
「ずっとあたしは、リンについてく。いらないって言われてもついてく」
「私もカイリについていくし、カイリの評価をあげれる相手になるわ」
「ああ、王子様だもんね、二人とも……」
「イチャイチャしてるだけじゃダメなのよ」
「王妃様になるのかあ……」
そう思うと、気合入れないとね。
あたしはマナーなんかわかってないし。
リンが恥をかかないように頑張らないと……。
期待外れだなんて、言われたくないもの。
お荷物だとも思われたくないの。
「そうよ、貴女も私も王妃になるの」
「……そして、二人は王様になる。覚悟はできてる?」
「本当は、怖いし不安だよ。でも一人じゃないから」
リンもいるし……ほかにも仲間がいるから。
あたしは、おびえてるだけの、人間じゃないから。
「私のことも忘れないでよ?」
「わかってるよお姉ちゃん。あたしたちは双子だもの」
「そうね。どこかできっとつながってるわ」
「傍に、見えなくてもいるから」
「……うん。そうね。ローラ」
「二つの国が、栄えますように」
「心から、祈るわ」
「おい、ローラ。そろそろ引っ込め」
「リン」
「俺らは花吹雪係だろ」
「そうだね。がんばろう」
「がんばるほどでもないがな……」
でも、盛り上げ係は大事だし。
色とりどりの花吹雪、がんばって作ったもん。
そして、お姉ちゃんといったんお別れする。
しばらくして、誓いの言葉とかいろいろやりながらお姉ちゃんとカイリ王子は愛を誓った。それはとても清らかで尊い姿だった。
階段を降りていく二人の後ろに、あたしたちはスタンバイする。
いっけー! 花吹雪!
「おい、これ薬になる花だぞ!? 何ばらまいてるんだ」
「え、嘘。まあいいや。皆ーこれで健康維持してねー」
ざわつく結婚式会場。
苦笑いするお姉ちゃんとカイリ王子。
「さすがローラね……」
「本当、僕たちの予想を超えてくれる」
「皆、うちの妹もよろしくねー?」
お姉ちゃんが笑いながらあたしのことまで宣伝する。
「照れるよ、お姉ちゃん……ってうわああ」
「おい、大丈夫かってうわああ」
「……何、人前でキスしてるのよ、ローラとリン王子」
「僕たちが主役なんだけど」
爆笑する声がその場に響く。
あああ、恥ずかしい。
「皆、二人の結婚式も盛大に祝ってねー?」
「もちろんです、ルーラ様!」
「この国が平和になったのはきっと、ローラが戻ってきたからなのもあると思うの」
「え、あたし何もしてないっ」
「ローラはいてくれるだけで、幸せと笑顔を呼ぶもの」
「ええ……」
「ねぇ、カイリ」
「そうだね。リン王子もだからこそ、好きになったんじゃないかな」
お姉ちゃんとカイリ王子は二人で目くばせしあう。
「恥ずかしい……」
「事実だから仕方がないな」
「リン……」
「この国も、俺の国も、どちらも大事にしていいんだからな」
「ありがとう、リン」
「でも、一番は……俺にしてくれよ」
「当然だよ」
どうか、この大切な笑顔がずっとそばにありますように。
そして、いつか終わりがきませんように。
永遠に、この愛が続きますように。
大好きな、リンとみんなとともにあたしはこの世界で笑っていたいよ。
どんなにつらいことがあっても、泣いても、叫んでも。
最終的には笑顔で生きていたい。
きっと、嫌なことは笑うためのスパイスで。
意味のない苦しみもあるかもしれない。
だけど、それは考え方次第だ。
あたしは苦しんできた。つらかった。
けれど、だからこそ今が幸せで、楽しくて。嬉しい。
味わった痛みも、誰かを支える言葉になるのなら、忘れないでいたい。
苦しみから生まれる言葉や、経験でしか救えないものもあると思うから。
誰もが同じ人生は歩まない。
だからこそ、やれる役割はそれぞれで。
あたしにしかできない生き方はきっと確かに存在していて。
それは、小さなことかもしれない。変わりの利くことかもしれない。
だとしても、確かに誰かが必要としていてくれる。
誰にも求められてない人は、いないと言い切れる。
何も言わなくてもいい。傍にいてくれるだけで救われる人もいる。
傷つけあったことで、わかる現実もある。
遠回りばかりの人生かもしれない。
あたしは実際そうだった。
「……リン」
「ローラ」
目の前に移るものしか救えないかもしれない。
でも、それでもいいんだ。
自分のこの小さな両手で、できることをして行きたい。
つかめるものは少なくても、それでも。
あきらめずに前に進み続けたい。
「いつか、子供が欲しいなぁ。リンの子供」
「!? 何を言い出す」
「たくさん愛してあげたいの。あたしとリンの赤ちゃん」
「……っ」
「あたし、たどり着くべき場所にたどり着いたんだね」
「ローラ……」
波乱の人生だったと、まだ若いけれど自分でも思う。
たった十八年。まだ子供ともいえる年齢だけれど……それでも濃かったと思う。
愛されたいと願っていた、あの頃のあたし。
きいて。あたし、すっごく愛されてるよ。
大事にされてるよ。そして、すっごく愛してるよ。
あたしは、式場の隅っこで泣いていた。
リンは黙ってあたしを抱きしめる。
「泣くな、ローラ」
「だって、幸せすぎるもの」
「大丈夫だからな。ずっと幸せすぎるままで、いさせてやるから」
「うん……愛してるよ」
「俺だって」
「いつか永遠に体が別れたとしても、そばにいる」
「もちろんだ。お前の守護霊は俺だ」
「ダメだよ、リンが先に死ぬなんて」
「お前を先には逝かせない」
「あたしのセリフだよ」
「……本当、ローラは」
「なあに」
「可愛いなって」
「もうっ」
イチャイチャしていると、周りがほほえましい様子で見てくれる。
世界はこんなにも苦くて苦しくて、温かい。
もしあたしが忌み子だったままでも。
きっとこの世界であたしは笑ってたのだろう。
だって、リンがそばにいるから……そんなどうでもいいことで、揺るがない幸せがあるから。
「空がきれいね。まるで、これからの人生を暗示しているみたいだね」
「そうだな、ローラ」
「この空に、たくさんの星をきらきらさせていきたいね」
「ああ」
「雨の日も嵐の日もあると思うけれど……最後には虹がでるもの」
「そうだな」
「あたし、生まれてよかった……」
「……俺もだ」
お姉ちゃんたちが拍手で祝われている中、完全に二人の世界のあたし達。
「ローラ、ごちそうあるわよー」
「はあい、お姉ちゃんっ。今行く」
「リン王子も、冷めますよ」
「ああ」
リンの手を取って、あたしは駆け出した。
明るくまぶしい未来に向かって……。
終わり
短い間ですがありがとうございました。
力不足で、皆様の期待に沿えずすみませんでした。
次回、新しい作品までに実力をつけたいと思います。
どうか、つたない私を許してください。
感想、ブクマ、評価などありがとうございます。
次回はもっといい作品を作れるよう頑張ります。
本当に、実力不足な作品になりすみませんでした。
エピローグは用意してますが、しばらくお待ちください。




