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カーテンを開くように

 潤也は翌日退院した。しかし、それからしばらく学校には来なかった。夏休みを挟み、事故のあった日から3カ月程経ったある日、潤也は登校した。また、前髪で目を隠して、端っこの席に座っていた。しばらく休んでいたので、席がまた一番廊下側の後ろに移動されていたのだ。

 また、誰も潤也の事を見なくなった。空気のように、ただ座っていた。こっそり絵を描いて。やはり、「目」がなければ自分には何の価値もない、潤也はそう思ってこっそりと傷ついた。

しかし、昼休みになると、英慈が潤也のところへやってきた。

「潤也、中庭行こうぜ。」

目が隠れて見えない潤也にそう話しかけ、弁当を持って先に歩き出した。潤也も弁当を持ってその後について行った。

以前と同じようにベンチに並んで腰かけると、二人の間にそれぞれ弁当を置く。そして少し向き合う恰好で座った。それから英慈は、目の見えていない潤也の顔を見て、

「潤也、お帰り。」

と言って微笑んだ。以前と変わらない、他愛もない話をしながら、弁当を食べる。潤也は食べながら英慈の話に相槌を打っていたが、食べ物がのどを通らず、弁当をベンチに置いた。

「どうした?」

英慈が聞くと、

「英慈君、無理してない?」

「何が?」

「目が見えていないのに、僕と一緒に居てもつまらないでしょ。」

潤也はちょっと言いにくいけれど、思い切って言ってみた。普通ならこんなセリフ、自惚れてると言われるだろうが。

 英慈は「はははっ」と笑った。

「そんなの関係ねえよ。潤也は潤也だろ。お前はいい奴だし、俺の話に面白いコメントを言う。」

英慈はそう言うと、弁当を置き、

「それに、見たくなったらこうして見ればいいし。」

と言って、左手の人差し指で潤也の前髪をすっとカーテンを開くようにかき分けた。

目が合う。けれど、英慈はすぐに髪を戻した。

「まあ、しまっとけ。誰かに見られたら勿体無いしな。」

そして、また何事もなかったように英慈は話し始めた。潤也も弁当を手に取り、胸が熱くなってふいに溢れ出た涙を前髪で隠しつつ、英慈の話に笑った。


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