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水道場

 部活中、英慈は時々校舎前の階段に腰かけている潤也の事を見た。あの美しい鋭い目が、こちらを見ていた。あの目で見つめられると、なんとも言えない快感が得られる。ずっと見ていて欲しい、自分だけを見ていて欲しい、そう感じるのだった。

 サッカー部の司令塔、背番号10の戸田健吾は、最近いつも部活を見学している潤也の事が、どうしても気になっていた。ゲームをしていてふと振り返ると、よく目が合った。大きくて美しい目。潤也が背番号11の英慈と仲良く帰って行くのを見ていたので、初めは英慈の事を見ているのだろうと思っていた。だが、部活中に何度も目が合うので、やっぱり自分の事を見ているのではないか、そして徐々に、英慈と友達だというのを口実にして、本当は自分の事が見たくて見学しているのだろう、と考えるようになった。

 健吾は、これは自分から潤也に声をかけ、仲良くなるべきだと考えた。ある日、部活中に水を飲みに水道場へ行った健吾は、近くに腰かけている潤也に声をかけた。

「なあ、お前3組の三笠だよな。俺の事知ってる?」

潤也は健吾に目を向けた。その目は、ああなんて美しいのだろう。健吾は息をのんだ。

「戸田君でしょ。サッカー部の司令塔だもん、みんな知ってるよ。」

にこりともせず、潤也は言った。そしてまたその目は英慈を探す。

「あ、あのさ。俺とお前、良く目が合うよな。俺の事見てるんだろ?」

健吾は目を反らされたので、何とか自分の方へ目を向けてもらおうとそんな事を言った。潤也はまた健吾の方を見た。

「・・・違うよ。べつにそういうわけじゃないよ。ただ、サッカーを見てるんだ。」

潤也はそう言って目を下に落とした。

 そこへ、英慈がやってきた。水を飲みに来た振りをして。けれど健吾と潤也が話しているのを見て、気になってやって来たのだった。

「何話してるんだ?」

水道の蛇口をひねりながらそう言って、何気ない雰囲気を精一杯まとって水を飲んだ。

「あ、いや。」

健吾は言いよどんだ。

「何でもないよ。」

潤也は英慈にニッコリ笑いかけてそう言った。英慈は振り返って潤也を見て、

「そっか?ふうん。」

と言って、また練習に戻った。ちょっと振り返りながら。健吾も練習に戻った。こちらも何度も振り返りながら。


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