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私と黄金竜の国  作者: violet
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鏡のゆがみー2

鏡に吸い込まれて落ちた先で、マリコは気を失っていた。

意識のあったシンシアが、マリコを安全そうな木の根元に運んで気が付くのを待っている時だった。

そこは、竜の国からは遠いどこかのジャングルの中。

けだるいほど湿気が高い。


プーン。

羽音が聞こえた。

どこからか現れた小さな生き物がマリコの顔の周りを飛んでいる時だった。


パッチン!!

マリコが両手で生き物を叩いたのだ、蚊を両手ではたくように。

「蚊がいる!」

音で目が覚めたマリコが叫んだ言葉である。


羽音で蚊と認識したマリコは、無意識に潰そうとしたらしい。

マリコの手の平には、叩き潰されかけて意識を失くした15センチぐらいの生き物。

「あれ?蚊じゃない。妖精さん?」

その姿は、昔絵本で見た妖精の姿だった。脳震盪で鼻血を出していたが。


生き物の意識が戻らず、マリコはピーちゃんと名前を付け、ひたすら謝っていた。

「ピーちゃん、ごめんなさい、死なないで!」

ピーちゃん、ピーちゃん、と泣きながら謝るマリコの涙と鼻水が生き物の上に落ちてくる。


「お母様、大丈夫です、治癒魔法をかけてますから死にません」

シンシアが治癒魔法をかけたが、意識はなくしたままだ。

「でもシンシア!ピーちゃんを潰しちゃったー!」


「うるさい!!」

目を開けた生き物が、マリコから逃げようとしたが反対に抱き締められる。

「ピーちゃん!!」

マリコのいろいろな液体でドロドロだ。

「やめてー!きたなーい!」

小さな生き物の絶叫が響く。



湧き水のほとりに3人はいた。

「ピーちゃん」

「だから、それは何!?勝手に名前つけてるんじゃないわよ!」

マリコに食って掛かる生き物は湧き水で身体を洗っている。


「だって、ピーちゃんの名前言えないんだもの」

「私の名前は〇▽φ§×よ!」

「もうピーちゃんでいいよね」

マリコが真似して言おうとしても、発音ができない名前なのだ。

「違う!」

マリコと妖精のような小さな生き物が、もう何度も同じ会話をしている。


シンシアは二人の会話を聞きながら、ジャングルにある果物を取っている。

シンシアはアレクセイと旅をしている時に、ここと似た環境の所にも行っていたから、食べられる果物を知っている。

そして、ピーちゃんが初めて見る生物であることも分かっている。



「お腹すいてませんか?果物を用意しましたよ」

シンシアが声をかけると、二人がやってくる。


「あ、美味しい!」

マリコが気に入ったらしく、次々と手に取ると、皮をむいてピーちゃんの前に差し出す。

「ピーちゃん。これすごく甘いよ」

満面の笑顔で言うマリコに、ピーちゃんも諦めが出て来る。

「私の発音が出来ないなら、妥協するしかないわね。とりあえずそれで呼ぶことを許すわ」

マリコから受け取った果物を食べながら、マリコにもたれかかる。


「ありがとう。私はシンシアよ。

ピーちゃんは女の子でいいのよね?、この世界の生まれではないわよね?」

シンシアは、次元が不安定な時にマリコが消えたように、こちらに来たのがピーちゃんではないかと思っている。

「どうしてそう思うの?」

ピーちゃんが女の子だよと頷く。感情的にマリコに対応するのと比べ、シンシアには落ち着いてに応える。


「その発音がこの世界にないからよ、それに貴女のような生き物も初めて見た」

シンシアの言葉に少なくないショックを受けているのが感じとられて、シンシアはピーちゃんを窺い見る。


「やっぱり、ここでは私一人なのかな?

気が付いたら、ここにいて、もう2か月もずっと彷徨(さまよ)っているけど、同族は見たことないの」

ピーちゃんが、シュンと項垂れる。

「環境も全然違うし、違う世界があるなんて納得するのが怖くって」


「頑張ったのね」

シンシアがそっとピーちゃんに触れる。

「知らない世界で恐い事もいっぱいあったでしょ?

よく頑張ったね」

「シンシアー」

ピーちゃんとシンシアが、しんみりと話をしているのをぶち壊すのがマリコである。


「ピーちゃん、エライ!

でも安心して!私もこの世界で一人だから!」

シンシアからピーちゃんを奪い取ると、抱き締める。

「やーめーてー!苦しい!」

シンシアが慌てて、マリコの腕を緩めさせる。

「お母様、ピーちゃんが苦しがってます。優しく!」


「お母様!?」

ピーちゃんが驚いて、シンシアとマリコを見比べる。


「そうよ、私がシンシアの母親」

何故かエッヘンと偉そうな態度のマリコ。

「そしてシンシアの父親は、この世界で1番大きくて強い国の王様。

すごい美形なんだけど、しつこくって、鬱陶しくって、ねばちっこくって、執拗で、口うるさくって」

同じ意味の悪口を続けるマリコ。



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