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私と黄金竜の国  作者: violet
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卵で生まれました

たくさんの方に読んでいただき、感謝、感激、狂喜乱舞しそうな程うれしいです。

この話で完結となります。

ありがとうございました。

マリコはベッドで臥せっていた。

もちろんアレである、逆鱗を飲んでなかったら、やり殺されている。

深く重い愛だ、ギルバート1000:マリコ1、ぐらいの差である。

おかげでギルバートは絶好調で、番の威力は素晴らしいとか宣っている。


数日前までは、ギルバートへの嫌いと惹かれるという、相反する気持ちに思い悩んでいた。ギルバートを信じる事ができなかったからだ。

今はもう二度と竜の番への愛を疑うものか、と心に誓った。

事ある毎に、ギルバートは信じてもらえなかったのは自分の愛が足りないからだと、実力行使にくる。

3000歳のエロじじぃは凄まじい、恐れ入った。


マリコの中の3000歳の竜のイメージというと、溶岩の中に大きな身体で寝そべっているとか、人嫌いで森の中で一人孤独に住んでいるとか、勇者に倒される伝説の巨大竜である。

マリコ好き好きと匂いを嗅いでいる変態ではない。

しかも時々シツコイとマリコの足でベッドから蹴り落とされている。


身体中が痛い、ベッドから起き上がる体力もない、最近は吐き気までする。

とにかく眠い、気持ち悪いの繰り返しである。




マリコが食事にも起き上がれないと、侍女から報告を受けたギルバートは反省していた。マリコが可愛い過ぎて止められないのだ。3000年の枯渇があったと今になってわかる。

番の代わりなどいないのだから、後宮などバカなことをした。

どれほどマリコを悲しませ、傷つけたかわかる。


「マリコ。」

早めに仕事を切り上げて寝室に戻ってきたギルバートは、食事も取らずに寝ているマリコに声をかけたが、返事がない。

「怒っているのか、これからは控えるようにするから食事をしよう。」

マリコの返事はない。

「マリコ?」

ギルバートが青ざめてベッドに駆け寄る。

「マリコ、マリコ!」

ベッドにうずくまるマリコは動きもしない。

「医者!!医者を呼べ!!」

マリコにもしもの事があったらと思うだけで地獄に突き落とされるようだ。


意識のないマリコに医者は魔力で診察する。

「ご懐妊でございます。」

ギルバートは地獄から天国に舞い上がった。私に子供ができた!

マリコは女神だ!!


「陛下、ただし危険な状態です。

マリコ様は栄養が足りてなく、魔力もないようで、お子様に何もかも足りてないのです。」

地獄に叩き落とされた。


「マリコを助けてくれ!!」

「陛下、落ち着いてください。マリコ様は陛下の逆鱗を取り込まれているので大丈夫ですが、食べれる物を少しずつでも摂取するようにさせてください。

陛下の魔力をマリコ様を通してお子様に与えれば改善するかと推測いたします。

何分、マリコ様は異世界の人間で魔力がありません。初めての事例ですから不明な事が多いのです。」

医者の言葉が終わる前に、ギルバートは魔力をマリコに分け与える。選んだ方法は口づけである。

完全に趣味である、医者はもう何も言えない。


「ギルバート。」

ギルバートの魔力が効いたのかマリコの意識が回復した。

「マリコどうだ?気分は?」

「おなかが痛くって寝てたの、今はもう大丈夫よ。」

「子供ができたのだ、医者がそこにいる。」

え?

マリコはいつの間に診察?とビックリ。

「痛みで意識がなくなっていたのだ、無理させて悪かった。」

全くです、周りもそう思っているが、それより今は懐妊である。

「私に赤ちゃん。」

マリコがお腹に手をあて頬を染める。

ギルバートはその表情に見とれた。幸せが絶頂である、ここは天国だ。


番とは何と素晴らしいのだ、夢のようである。

「マリコは魔力がないので、私が分け与える。身体がおかしかったら、直ぐに教えて欲しい。」

「わかったわ、私達は10ヶ月お腹にいて産まれてくるの、竜は?」

「竜は2年の妊娠期間を得て卵で生まれます。」

医者が説明を始める。

「マリコ様は異世界人、寿命が違うので通常とは違う形になる可能があります。」

「ちゃんと生まれてきてね、赤ちゃん。」



皆の心配を受けながらマリコは妊婦生活に入った。

3000年待ちわびた次代である、慎重に周りが扱う。

異世界人の対応は誰も知らない、想像もつかない事が危険かもしれない。

触るな危険注意、コワレモノ、張り紙が張ってありそうな取扱いである。


ギルバートの幸せな日々は、侍女の急報で暗転した。

マリコの様子が変だとの知らせでギルバートが駆け付けた時には、マリコはベッドの中で痛みに泣いていた。

「痛い、お腹痛い、ギルバ・・・」

マリコの言葉が続かない。

直ぐに医者が呼ばれたが、竜の番の異世界人は初めてなので確かな事はわからないと言う。

まだ妊娠5カ月だ、子供とマリコにもしものことがあったらと不安で仕方ない。

「きゃーーーああ!」

マリコの悲鳴が響いて体が震えた途端、

ポコン!

卵が産まれた。

「マリコ、マリコ。」

医者が産後の処置をしているが、ギルバートの目にはマリコも卵も血だらけにしか見えない。

「陛下、大丈夫です、マリコ様は頑張られました。卵に早く魔力をお与えください。」

医者から血を拭きとった卵を受け取ると魔力を与えた。

卵が生きているのを感じる、私の子供だ。

「卵が魔力のないマリコ様から早めに出てきたものと思われます。

このまま魔力を与えて抱卵をすれば大きく成り、誕生に持っていけると考えられます。」


マリコがこの地に来て半年程だ、素晴らしいぞ異世界人!

3000年できなかったことを半年で成し遂げた。

誰もが感動していたが、卵を抱いてマリコの横に膝まつくギルバートは放心状態である。

まだ卵の状態なのにこんなにカワイイとは、と間違った感動さえしている。

「ギルバート。」

「マリコよくやった、卵が産まれた。体はどうだ?」

「うん、まだ痛いけどさっきほどじゃない。」

あのね、とマリコが言う。

「赤ちゃんが話しかけてきたの、私に魔力がないから生命力吸い取っちゃうんだって。外に出るから温めてねって。」

竜ってすごいのね、とマリコが言うけど、周りはビックリだ。

そんな話きいたことない、神童が生まれると大騒ぎだ。



それからギルバートが魔力を与え、マリコが抱卵するという1年を過ぎたころ。

「誰か、ギルを呼んで!!」

マリコの声が響く、侍女達はなにがあったかと大慌てだ。

ちょうど会議中だったらしく、大臣達を引き連れてギルバートが駆けこんできた。

マリコに抱かれた卵にひびが入っている。

「生まれるのか!?」

問うギルバートにコクンと首を頷いて答えるマリコ。

卵もこの1年でかなり大きくなった、40センチはあるだろう。

ピキピキ、卵に亀裂が入るとすぐのことだった。


ゴンと音がしたと思うと、手が卵から割れ出た、もう片方の手も出ると、卵の殻を押し開けた。

中からは2歳ぐらいの大きさに育った男の子。

「母上、お会いしたかった。」

マリコが男の子をタオルでくるんで抱き上げるとしがみ付き、ギルバートを仰ぎ見た。

「父上、名前が欲しいです。」

竜ってこんなの?

すぐにしゃべるんだ、とマリコが感心していると、ギルバートがマリコごと子供を抱きしめてきた。

どうやらうれし泣きしているらしい。

「なんてかわいいんだーーー!!」


「もう話してる!天才だ。」「神童だ!」「男児であられる、お世継ぎ誕生だ!!」

周囲は大騒ぎのお祭り状態である、すぐに魔法でお触れが出された。

「王子様誕生!」


「父上?」

「ああ、名前は考えてある。アレクセイだ。」

「いい名前ですね、気に入りました。」

賢すぎる・・・マリコの正直な感想であった。



それからギルバートは妻に甘い夫、子供にもっと甘い父に下落していくのは直ぐのことである。

ダメ父一直線。


7月2日~7月6日 5夜5話 完

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