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私と黄金竜の国  作者: violet
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アレクセイの企み

ギルバートはアレクセイと話し合っていた。

「シンシアのことですね。」

「父として言っている。」

「大事な妹です。

今まで何故に王家には王女が生まれなかったか、何故にシンシアが生まれたか、意味があると思うのです。

考えるのは楽しいですね。」

「シンシアはお前の実験道具ではない。」

「大丈夫ですよ、僕達には長い時がある。後数百年ぐらい妹が一番でも。多分、シンシアはこの国の事をよく知っていた方がいいと思うのです。僕達と一緒に行くのは一番安全で一番いい方法です。まだ幼いというのが心配ですが、僕がいますので。」

ギルバートはじっとアレクセイの話を聞いていた。


「お前は何を心配しているのか?」

アレクセイは答えない。

「シンシアに伝説と言われる魅了の魔法が現れた、それは他の伝説もあってもおかしくないということだ。」

ギルバートも考えていた言葉を口にした。


「竜は子供が少ない、一人か(まれ)に二人。長寿であるので、それで問題ないでしょう。竜は孫、曾孫(ひまご)は当然だ、その先もその先も得ることがある。

母上は何もかもが常識外なのです。

最たるものがシンシアです、だからこそシンシアにいろんな知識を与えたい。」

ギルバートがアレクセイの肩をたたいて笑いながら言う。

「お前は賢すぎるな。

言いたい事はわかった、それならばシンシアの帯同を許可しよう。

だが、アレクセイ覚えておきなさい。

不安に対して準備をすることは悪いことではない。

しかし、それでシンシアを縛るのはいいことではない。

お前はシンシアがお前から離れないように育てている、シンシアを番とする竜はいつか現れるのだ。」

「父上、自分で言いながらショックを受けているでしょう。」

嫁にやりたくないですね、と苦笑いのアレクセイ。

まったくだ、とギルバート。




だが伝説はそこらに転がっているものらしい。

旅立ちの準備をしながら、その日もアレクセイは執務をしていた。

マリコの子守歌が聞こえた時に飛び上がったのは、ギルバートとアレクセイだ。

「父上、母上の音のずれた子守歌が聞こえます。」

「たまにしかずれてないぞ。」

マリコが子守歌を歌う相手は現在いないはずだ、なのに何故歌っている?

飛び出したのはギルバートが早いかアレクセイの方が先かはわからない、二人して争うようにマリコの元に行く。


「見てー、化石の卵見つけたの!

恐竜が生まれる?」

マリコが二人を見ると嬉しそうに卵を見せる。

それは化石というべき石の卵だった。

「父上、あの卵に生命力を感じます。」

アレクセイが、どうしますかとギルバートに聞く。

「これ見かけは石なのに、そんなに重くないのよ。中は空洞かしら。」

グルングルンとマリコが卵を揺さぶる。

うわー!とマリコを止めたのはアレクセイである。

「母上、これ生きてます。無茶しないでください。」

「え、そうなの?ごめんね、赤ちゃん。」

マリコが卵を優しくなでて謝っている。


アレクセイがギルバートに耳打ちする。

「父上、僕は伝説の石の卵を連想するのです。」

「あれは破壊竜が生まれるという伝説だぞ。」

「母上ですから。」

ギルバートがマリコの横に座ると、卵から邪気が発せられるのを感じた。

「あら、ダメよ、赤ちゃん。ギルバートよ覚えておいてね。」

マリコも何かを感じたらしい、野生の感である。

「マリコ、この卵はどうしたのだ?」

「庭で拾ったの。」

うふふ、と笑うマリコ。

母上、それ伝説ですよ。もう何千年も誰も見たことのない卵、そうそう簡単に落ちてません。

何万年かもしれないとアレクセイは考える。

「マリコ、その卵は雄ではないのか?」

「もう卵にまで焼きもちしちゃダメよ。赤ちゃんよ。

しかもお母さんを亡くした可哀そうな卵よ。」

マリコの中では近くに母親がいなかったから、母親を亡くした卵になっているらしい。

マリコから卵を取り上げて捨てるということは出来そうにない。卵は放っておいても(かえ)るが、伝説の破壊竜ならば孵化されたら困る。

元いた場所にもどり、長い時を今までのように眠りについて欲しい。

アレクセイは自分の代になって厄介事はごめんである。

いい子、いい子とマリコが卵を撫でているのを横目で見ながら考える。


アレクセイの頭の中で何パターンものシュミレーションがたてられる。

「アレクセイ、マリコから卵を取り上げる事はできないだろう、考えても無駄だ。」

「父上、それでいいのですか、あれは!」

「私のマリコだからな、すごいの見つけるよな。」

雄竜の目は歪んでいる。

「生まれるまでは無害だ。生まれてマリコに害を与えるようなら。子供のうちに始末しよう。」

雄竜にとって番に害を与えるものは排除となる。

「お前たちが旅立った後、あれは寂しがるマリコのおもちゃとして役に立つ。」

「そうですね、僕と父上なら破壊竜も問題ないでしょう。」

それも手段の一つとして考えてました、と言うアレクセイ。


急に卵の生命力が強く感じ始めた。

「あら、赤ちゃん熱あるの?暖かい。」

マリコが卵を撫でながら言う。

扉を開けて入ってきたのはシンシアだ。

「お兄様もお父様もどうされたの?執務室にいらっしゃらなかったから。」

ははは、と笑いながらアレクセイが言う。

「まいった、この卵はシンシアの魅了に釣られて出てきたようですね。」

「だな、この間のだ。」

ギルバートは竜王として破壊竜の存在を許せるものではないが、マリコが(かかわ)ると別だ。

それは破壊竜として生まれるのか?


これは面白くなった、破壊竜楽しみだなとアレクセイがほくそ笑む。



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