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私と黄金竜の国  作者: violet
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巣立ちは大事件

ジョシュアは執務室にいる父と兄を訪ねていた。


「本気か?」

アレクセイがジョシュアに確認する。

「本気です。」

「マリコが泣くな。」

ふー、と息を吐きながらギルバートは片手を(あご)に持っていく。

「僕は自分が出来る事をしたい。」

ジョシュアはもうすぐ16歳になる。知性も剣も人並み外れて優れている。

アレクセイのように王家の記憶はないが、王子として十分な素質を持ち、努力した。

「父上達が旅行で海の王国の王にお会いされたとお聞きした時から、世界にはいろんな国がある、僕にしか出来ない事を考えてました。

兄上も父上も国の執務があるので、長く国を離れられない、僕なら世界を回って情報を届ける事ができる。」




その夜、マリコとシンシアを集めてジョシュアの話がされた。

「まだ15歳よ、早すぎる。危ない事があっても対処する経験がないわ。」

マリコは竜が旅する知識は知っていても我が子となると心配でたまらない。

「ジョシュアお兄様、危険ではないのですか?」

「危険かは行ってみないとわからない。」

シンシアがアレクセイに身を寄せながらジョシュアを心配している。

「父上、僕もジョシュアと一緒に行こうと思ってます。」

アレクセイの言葉に飛び上がったのはシンシアだ。

「いや、離れるのいや。」

涙をポロポロ流しながらアレクセイに(すが)りついて懇願している。

シンシアのジョシュアとアレクセイの扱いの違いが凄い。

マリコは息子二人が手元を離れるのは寂しい。


「竜が空への滑空を好むのは自然の摂理だ。

普通よりは早い巣立ちだが、番を捜して長く旅をする竜もいる。」

ぎゃーーーー!と叫んだのはシンシア。

「絶対に付いて行く、お兄様の番なんて探さないで!!」

もう異常としか思えない。

我がままに育てた、とマリコは思う。

王家に初めての姫と言う事で家族だけでなく、周りの全てがシンシアに甘いのだ。

自分の思い通りになると思っている。


「シンシア、普通100歳ぐらいから旅をする。僕達はとても早いんだ。

番を探したりしないよ。まだ何千年も生きるんだ、慌てる必要などないさ。

僕に魅了をかけようとしたらダメだよ、そんなことしなくともシンシアが好きだからね。」

アレクセイが泣き(すが)るシンシアを抱きしめながら、落ち着かせている。

「父上の仕事を本格的に手伝い始めたら、きっと時間も余裕も無くなるでしょう。

今なら僕も竜として空を旅することができる。」

「私も長い時を番を求め旅をした、許可しよう。」

ギルバートの言葉は予想通りだったが、マリコと違いシンシアは諦めがつかない。

「行く!行く!絶対に行く!」

興奮しているシンシアは魔法の制御が狂ってきている。


「まずいな、耐性の弱い者から影響がでるだろう。」

ギルバートとアレクセイが顔を見合わせる。

魅了の魔法に耐性を持っているものなど、いないだろう。シンシア以外誰も使えない魔法なのだから。

「シンシア。」

アレクセイがシンシアの頬にキスして(なだ)めている。

「必ずシンシアの所に帰るから、落ち着いて。」

シンシアの魅了の魔法が漏れ出ている。

「シンシア、手伝うから手を出して。」

アレクセイが手をだすとその手のひらにシンシアが手を乗せた。

アレクセイはシンシアの手を握りしめ、シンシアに魔力を流す。


「ごめんなさい、お兄様。こんな不安定では連れて行ってもらえないのは分かってる。

でも付いて行きたい!」

アレクセイがニヤリと微笑むのをギルバートは見逃さなかった。

ギルバートとアレクセイが見つめ合う、二人とも目は笑っていない。

それに気づいたのはジョシュアだ、鳥肌がたっている。

「ちょっと、ストップ、父上も兄上もどうしたんだ!」

眼を逸らしたのはギルバートだ。

「先程の魔力漏れで、シンシアの魅了にかかった者がいるかもしれない。

シンシアがしばらくこの地にいないと魅了も抜けるだろう。」

これでいいんだろうアレクセイ、とギルバートが言う。

「父上、ありがとうございます。」

「何にだね?」

「全てにです。」

きゃーーー!と言いながらシンシアがギルバートに抱きついてきた。

「お父様、ありがとうございます。ちゃんとお兄様達の言う事をききますから!」

娘に抱きつかれ、ギルバートの表情が(ゆる)む、デロデロになっている。

ベリベリと音がしそうな程の勢いでシンシアがギルバートから引き離される。

引き離したのはアレクセイだ、アレクセイはシンシアを抱き上げると、母親をポイと父親に渡した。

「母上が先程から僕達3人がいなくなる事ですねています。僕には手に負えません。」

マリコにとってシンシアまで一緒に行くとは予想もしなかったのだろう、半分放心状態である。

この後、マリコの何故、どうして、と怒涛(どとう)の攻撃が繰り出される前にギルバートに渡して、アレクセイは逃げにまわったのだ。


「ジョシュア、シンシアおいで。あちらで計画を立てよう。」

アレクセイが二人を連れて部屋を出た後、我に返ったマリコの声が響く。

「どうしてシンシアまで行っちゃうの!!!

どうして許したのーーーー!!

ギルバ-トーーー!!!」



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