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私と黄金竜の国  作者: violet
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シンシアの観察日記

私はシンシア、7歳。

私の家族は面白い。

筆頭が母なのは言うまでもない。


母は毎日魔法の練習をしているのは、ヒマを持て余しているからだ。

魔法は元々の素養がないと増やせないのを父は周りにも口止めしている。

母が魔法の練習に夢中になっていれば、男性との接触がないと思っているらしい。

3000年独身男の考えは歪んでいる。

図書室から魔法書を持って来たらしい、実践しているが、異世界人で素養のない母には無理である。

だが、時々理解のできないことが起きる、母が毎日話しかけていた鏡が話だした時は魔法省の役人がきて調べたが、魔法の痕跡はない。

今日も母は鏡に話しかける。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「貴方、自分じゃないってわかっていて、私にきいているでしょ?」

「これ定例文なのよ。」

母と鏡の会話だ。

「・・・・・」

鏡が母を無視しているが、めげる母ではない。

「貴女は美しい、けれど白雪はもっと美しい、って言うのよ。」

「白雪って誰!!」

墓穴を掘った鏡は母から延々と白雪姫の話を聞かされることになる。

そして、たまに音のずれる歌を聞かされるのだ、私も卵の中で聞いた。



昨日も母は魔法の練習をしていた。

水の入ったグラスを並べて水柱を出す練習をしていたはずだが、いつの間にかスティックでグラスを叩きはじめると水の量を調整して音程を調べ始めた。

母は音感はあるのだ、ヴァイオリンは上手いが歌になるとずれるらしい。

ずいぶん練習して、夕方になると父や私達を呼び集めて演奏会を始めた。

それは初めて聞く不思議で綺麗な音色だったけど、アレクセイ兄様が、

「この情熱の半分でも勉強にまわしたら、国の事を覚えるだろうに。」

と呟いていた。




私の家族で1番カッコイイのはアレクセイ兄様で、見目麗しく、理性的で、優しいの。

問題は皆に優しいってことね、私にだけ優しいといいのに。

お兄様は今日も執務中、私もお兄様の恥にならないように勉強がんばります!

卵の中でずっとお兄様の声を聞いていたわ、魔法の使い方も制御の方法も全部教えてくださったの。

早く会いたくって頑張ったの、想像道理のお兄様だった。

声もステキ、魔力は溢れんばかりに強く、すでに臣下の信頼も厚い、竜の姿も凛凛しくって、鱗は輝く黄金色。

シンシアの頭の中に際限なくリピートするアレクセイへの崇拝。




ジョシュアお兄様も優しいの、それにとても強い。

剣の練習は先生も教える事がないと誉めていらしたわ。

それにお心がとても強い、アレクセイお兄様と比較される事もあるのに負けたりしない。

アレクセイお兄様は王家の記憶を持ち別格、その弟に生まれるのはつらい事もあったろうに、私に言われたことがある。

「シンシア、兄上は王家の記憶を持って生まれた、だが同時に責任と義務も持って生まれた。僕達が兄上を支えて行かねばならない。」

立派なジョシュアお兄様。




父は竜王として有能で、ほとんど完璧な方よ。

ほとんどでない部分は母にかかわる部分。

2000年以上国を治め、統治能力も素晴らしく、魔力もこの世で1番。

王家の記憶をお持ちで、人民を思いやり、私達子供を大事にしてくれる。

その完璧に近い父の最大の弱点が母よ。

アレクセイお兄様が言っていた。

「父上は10パーセントの能力で執務をして、残りの能力は母上の保護と行動の検索に回している。」

父が執務をしている姿は欠片も笑顔をみせない、威厳があり、貫禄がある。

宰相が言うには、母と出会う前の父は完璧であったが、全てに深い興味を持つ事がない為に全てに公平でいられたと。

それが今は楽しそうに母を覗き見している。

他の番持ちを見ても、父ほどではない。

父は類まれな能力を持ちながら、番に遠いところにいたからこそ、幸せの価値がわかるのだろう。

私は卵の中にいた時に、父と兄二人の魔力を受け生き延び育った、そして母の歌や語りかけは身体を温かくした。




「シンシア。」

母が呼んでいる。

「どうしたのですか?」

「シンシアは白雪姫役ね、私は継母役、鏡は魔法の鏡の役。」

母の言葉の意味がわからない、何故にそうなる。

毒りんごはコレ、とテーブルのフルーツを取りだしている母。

「鏡、仕方ないね、お母様は諦めないわよ。付き合ってさっさと終わらせましょう。」

「シンシアそうですね、私もそう思います。早送りで行きますよ!」


母に付き合っていると、誰もが笑ってしまう。

部屋の片隅には父がすでに来ていて観客役になっている。

何より父は母が大好きで、とても楽しそうなのをみると私達も嬉しい。

そのうち兄二人も呼ばれてくるのだろう。

母はヒマを持て余している、そうしていろいろな遊びを見つけ出す。

私達は母が大好きなの。



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