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私と黄金竜の国  作者: violet
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仲直りしました

「バカー!」

マリコがギルバートを押しやると逃げ出した。

シュンレイの事がばれたのだ。

ギルバートがグチグチいい始めたのである。

シュンレイが女性なので強く言うこともできない。


マリコにしてみれば、別に悪い事なんてしてない、皆で楽しくキャーキャーしていただけだ。

逃げてもギルバートにかなうはずなどなく、すぐに捕まる。

「絶対に別れないからな。」

「別れるなんて言ってないでしょ。」

バチーンとマリコがギルバートの腕を叩いて振り払おうとする。

「ギルバートの事好きだもん、別れたりしない。」

ギルバートの事が好き、好き、ギルバートに強烈パンチがくりこまれた。ギルバートはノックアウト寸前である。

「じゃ、いいよね。」

何がだ。

あれもこれもまとめてギルバートは言っている。

これを頷けばシュンレイを見に行けなくなる。

シュンレイを見たいというよりは、シュンレイを中心に皆で話しをするのが楽しいのだ。

「いやだ。」

ね、ね、ギルバート、チョコが好きなのと同じなの、とマリコがギルバートを懐柔にかかる。

ギルバートの頬にキスして身体を擦り寄せる。

マリコの匂いが濃くなり、ギルバートはマリコを舐めながら匂いを嗅いでいる。変態にしか見えない。


マリコという餌にかかったギルバートは答えをうやむやのままマリコに捕まった。

ね、ね、とマリコが言うと、仕方ないと答えてしまう。



朝方まで寝かせてもらえなかったマリコはヨロヨロで職場に出た。

「マリコ様やつれてますよ。」

キティがジュースをもって来てくれる、なんていい娘なんだ。

「うん、まあギルバートがね。」

「仲がいいことで。」

「違うの、ギルバートが焼きもち妬いちゃって。」

「それは番持ちの雄竜の習性ですから仕方ないですね。」

はあー、とため息を吐きながらキティが言った。

「あの竜王様でさえ、番には逆らえないのですね。

雄竜の宿命って凄いですね。」

「あの竜王様って、ギルバートってどんなだったの?」


キティが知る限りの後宮談話を教えてくれた。

侍女のお姉さん達が教えてくれたと言う。

マリコが今まで避けてきた話である。

ギルバートは後宮にも滅多に行かなかったらしい、しかも500年たてば、どんな姫も追い出され。寵愛というほどの姫はいなかった、雄竜にとって番意外は処理相手でしかない。

愛情のない行為、なんて虚しいんだろう、マリコには想像もつかない。

番の愛情は重いが幸せである。


マリコは思う、でも後宮のお姫様達はギルバートを好きだったんじゃないかな。

嫌な人と肌を重ねないだろう、番にされてない女性を集めたなら尚更だ。

3000年、番のいないギルバートもあきらめていたし、周りもそうじゃないかな。

後宮の姫達は、ずっとギルバートと居れると思ったに違いない。

竜に生まれて誰からも番にされないって、どんなに寂しい事なんだろう。

竜の男女比は知らないけど、番を見つけられない雄竜がいるように、番にされない雌竜もいるのだ、そして番しか子孫を残せない。

竜という最強の生き物に自然が与えた淘汰なのだろうか。


「マリコ様、嫌な思いした?」

「ううん、キティ、教えてくれてありがとう。」

さあ、仕事始めましょ、お昼の準備が始まってると厨房に向かう。

マリコもキティも下働きなので、厨房の奥で働いている。


マリコが仕事をするとなると問題が起こった。

ギルバートの方の問題である、他の男にマリコを見せたくないというので、厨房の下働きにはいったが、マリコの剥いたじゃが芋でさえ、他人にやりたくないと言う。

番が他の人の食事を作るなど怒り狂うので、マリコはギルバートの食事専用となった。

マリコは料理は上手くはないが、普通に出来る。

チマチマと野菜を切って形を作っていく。

マリコも昨夜はギルバートの気持ちを考えなかったと、反省した。

キャラ弁を作っている。センスがないのでごちゃごちゃしているが、ごめんね、とソースで書いていく。

マリコはここで週に2日働いてランチをギルバートに作っている。

その週2回のランチをギルバートが楽しみにしているのも知っている。

材料は使い放題、後片付けはしない、おしゃべり自由の恵まれた職場である。

焦げようが、苦かろうが、マリコの作ったランチならギルバートは残さずに食べる。

マリコの方にギルバートの体調を心配したシェフの指導が入るので、マリコも料理が上手くなってきた。

そうなると、マリコも作るのが楽しい。


カートに乗せてマリコがランチを執務室に運ぶと、ギルバートが待ちかねていた。

お互い少し気まづい、目が合ってもすぐに反らす、まるで付き合いたてのカップルである。

ランチを広げると、ギルバートが文字に気づいた。

「マリコ、私も頭ごなしに悪かったよ。」

「ギルバート。」

ごめんね、と二人で言い合う、砂糖よりも甘い。



「シュンレイの事は許すが、軍の稽古を見に行く時は他の男を見ないように。」

ギルバートが無茶を言い出した。

「週に1回1時間とする。」

マリコは呆れて声もでない。

「行く時は警護を必ずつける。

見に行った夜は私にヴァイオリンを弾くように。

仕事の日は私と一緒に昼食を食べるようにすること。」

許容条件を考えていたかのように、次々と出てくる。

雄竜の心はとても狭い。



マリコの心も広くない。

「甘えるのもいい加減にしなさい!!」

ギルバートが蹴り飛ばされた。




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