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私と黄金竜の国  作者: violet
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プレゼント作戦

今日もギルバートは執務に勤しんでいる。

番と出会ってから体力気力が充実して、この数年は楽しくて仕方ない。

かわいい妻とかわいい息子、絵にかいたような幸せな家族であると本人は思っている。

仕事の手を休めてはマリコの居場所を探る、趣味というより習性になっている。

今夜もヴァイオリンを弾いてもらうのだ、勝手にやる気をだして仕事に燃えている。


そのマリコはギルバートの近く、王宮にいたが、たくさんの女性に混じって軍の稽古を見ていた。


黄色い声援が飛び交う先は、シュンレイ。

細い体で剣を扱う動きは綺麗と表現するのが正しいのかもしれない。

この数千年竜王国では大きな戦は起こっていない、平和な限りである。

軍隊も戦争に備えてというより儀礼や典礼の備えとなっている。

本体が竜である隊員は各々が大きな魔力を持っているため、剣の稽古は必要ないが儀礼用に稽古する。

そこで目を惹くのがシュンレイである、本体は青竜らしくペールブルーの髪をしている。

「ああ、宝塚に通うのがわかるわ。」

シュンレイは雌竜であるのだ、数少ない女性の隊員の1人である。


「きゃー、私に微笑んでくださったわ。」

「違うわ、私よ。」

シュンレイもわかってやっている、お互いが楽しい遊びである。

心の狭い雄竜に縛られている者が多い為、心の潤いを求めるのである。

番に心広い雄竜はいないが、ギルバートはさらに狭い。

雌竜の繁殖期は1年に1ケ月、その期間は雌を縛り付けて離さないが、それ以外の期間はいたって普通である。

ギルバートはマリコの繁殖期間が年中であるため、それに影響されている。


ギルバートが隠しているが、マリコも7年も居るといろいろ解ってきた。

雌竜は普通の恋もするし、彼氏がいたりもする。

問題は雄竜なのだ、番ただ1人、猪突猛進である。

番を見つけるまでは遊びもするし、お付き合いもするが本気になることも結婚することもない。

番を見つけた時に相手に彼氏がいようが、結婚していようが攻めまくる。

もちろん、雄竜がその時に付き合っている彼女がいようと見向きもしなくなる。

ギルバートの後宮がそうだった。

竜同士なら問題ない、番が重なることはないらしい。

雄竜は相手の男を殺してでも番を奪う、だから雄竜は番のいる雌には遊びの手をださない。

まれにギルバートのように異種を番とする時がある。

番に相手がいた時は、番が竜に乗り換えてくれないと悲惨な結果になることもある、竜にかなう種族はいない。

それでも番が手に入らない雄竜は狂う、力があるだけに周りの被害は甚大なものとなり、竜王によって処分されることになる。


マリコは狂いかけたギルバートを知っている。

あの怖ろしい思いをしたくはないが、ギルバートの雁字搦めの愛からちょっと息抜きもしたい。

男装の麗人を見て心潤すことぐらい許されるはず、女性なんだからセーフのはずだ。

周りにも同じようなのがいるんだから大丈夫、と根拠のない自信を持っている。


マリコは間違った。


ここにいる番持ちの雌竜は繁殖期ではないから来ているのだ。

繁殖期の雌に対して雄竜の心はとてつもなく狭い。


訓練場見学の後は仲良くなった女性同士でシュンレイ談義のお茶会である。

「もうすぐシュンレイのお誕生日でしょ、プレゼントどうしましょう。」

「私はもう決めているわ。」

え、そうなの、どうしよう、私お金ない。

マリコはこの国のお金を必要としなかった自分を振り返る。

服も食べ物も欲しい物はすべて出入りの商人から買っているのでお金を払った事がない。

街に出てもギルバートが払うか、少しのお小遣いで事足りた。

まとまったお金を持っていないのが不安になる。

アイドルへのプレゼントを夫のお金で買う訳にはいかない。

アルバイトをしよう、そうすれば自分のお金ができる。

お金ができたら、シュンレイの誕生日プレゼントとギルバートにもプレゼントを買おう。

いつも貰うばかりだから、たまにはお返しをしたい。



「マリコが?」

「王宮の下働きに応募してきたのです。

変装してますが、誰も騙せない程度の。」

報告する宰相も半分笑っている。

「何故にマリコはそんな事を。」

「応募動機が可愛らしいですよ。

プレゼントしたい人がいるのにお金を持ってないから、だそうです。」

報告を受けるギルバートも報告する宰相も全員が、ギルバートへのプレゼントだと思っている。

「自分で働いたお金でプレゼントしたいそうですよ。」

宰相はよかったですね、と言わんばかりにニヤニヤしている。

ギルバートの顔は嬉しさで見るも無残な顔になっている。


マリコは学習した、どうせギルバートにはばれる。

誰へのプレゼントと名前を出さねば勝手に想像する、ギルバートは必ず都合のいいように思うだろう。

その通りだった。


マリコのアルバイトは止められる事なく続けられた。

働き始めて話し相手もできたのは、マリコにとって思わぬ事だった。異世界人で知り合いの少ないマリコにとって職場は楽しい。

プレゼントの相談もした、ギルバートには筒抜けでギルバートの期待は高まるばかりだった。


「街に買いに行こうと思うの。

明日、お休みだからちょうどいいし。」

ちょうどいいのは、シュンレイの誕生日が迫っているからだ。

「竜の男性って何が喜ぶのかしら?」

わざと聞いてみる。

「番からのプレゼントなら紙くずでも喜びますよ!」

答える方もどうかと思うような答えである。

マリコももう変装などしていない、皆がマリコ様と呼ぶからだ。

意味のないことに労力をかけたりしない。

「ほら、マリコ様これ盛り付けて。」

「はいはい。」

また、竜王様見に来てたよ、職場で知り合ったキティが教えてくれる。

「ちゃんと仕事しているのかしら。」

「何言ってるの、お陰で2000年平穏な生活ができているからね。

竜王様は魔力も歴代に類をみないぐらいお強いから天候も安定しているし、地にもエネルギーが溜まっている。

特に番様が見つかってからは、周りの国にまで恩恵がでている。」

「そんなものなの?」

「だからね、逃がしませんよ、マリコ様。

私達の安定な生活がかかってますからね。

浮気なんてしませんように。」

ギルバートより鋭い、ギルバートの眼は番フィルターがかかっているからなぁ。

「ほら、そんな事より仕事。」

「はーい。」



翌日マリコは買い物に出た、お給料がでたのだ。

元々決めてあったシュンレイのプレゼントを買うと、たっぷり悩んでギルバートのプレゼントを買った。



その夜、プレゼントを受け取ったギルバートの喜びは凄いものだった。

夜空に魔力の花火をあげていた。

お陰で街の皆にまで、竜王様いいことあったな、とばれていた。


「明日、奥様方のお茶会があるの、夕方までかかりそうなの。」

マリコがギルバートに明日の予定を告げる。

ギルバートはマリコを抱き寄せながらプレゼントを開けている。

「女性同士ゆっくりしてきたらいいよ。

毎日仕事して、疲れたろう。」

自分のプレゼントの為に働いてくれたのだ。



翌日のお茶会はシュンレイのお誕生会だった。

マリコは楽しい時間をゆっくり過ごすことができ、奥様方とシュンレイ談話を堪能した

シュンレイがバトラーの姿でお茶を入れてくれた時は鼻血がでるかと思った。



その間、ギルバートはマリコからのプレゼントの見せびらかしに幸せを感じていた。

昨日の花火はこれだったんですね、竜王様よかったですね。

この幸せがいつまでも続きますように、というのが周りの願いだ。



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