第1章9 エルフって最高ですよね
第1章9
【15】 エルフって最高ですよね
りの達が宿屋に泊めてもらってから、一週間が過ぎていた。
「ふむ。今宵のティーは、格別ではないか」
「あっ!わかりますか?いつものより、ちょっとだけ高いのを買ってみたんですよ」
「へ〜。あっ!ホントだ!!美味しい…♡」
食後のティータイムを堪能する三人。
「って、このままじゃダメよ!!」
バン!っと、りのはテーブルを叩きながら抗議する。
「一週間、一週間よ!」
「まぁ、落ちつくが良い。ほれ、クッキーでも食べよ」
「わあ♡って、そんな事を言ってる場合じゃないわ!亀のじっちゃんはいつ帰ってくるのよ!!」
「亀のじっちゃんじゃなくて、宿屋の店主さんですよ?」
りの達が宿屋に来て働き始めてから、宿屋の店主は一度も帰って来ていない。
「私たちの目的は何?」
「最強のコスプレイヤーになる事です!」
「最強の魔の使い手として世界を救う事だ!」
「違ーーう!後、いっぺんに喋らないで」
「葵のはあってますよね?」
「うむ。全くだ」
イラッとするりのだったが、我慢した。
「いい?私たちの目的は魔王を倒す事でしょ?」
魔王を倒さない事には、現実世界に帰れないのだ。
「そうですけど、店主が帰って来ない事には…」
宿屋にはドアが無い為、りの達が居なくなったら無人の家となってしまう。
「はぁ…そうなんだけどさ、一週間よ?一週間」
無論、りのにもそれは分かっている。
宿屋の店主が帰って来ない事には、何処にも行けないという事がだ。
「ふむ。聞き込みでもしてみるか?」
「……!?」
「こ、こら葵!ダメじゃない」
コミュ力0の玲奈にとってそれは、あまりにもハードルが高い話しであった。
「ねぇ、アリア?何かいい案はないの?」
幸せそうにクッキーをかじるアリアに声をかけるりの。
「そうじゃのぉ・・。クエストを出してみてはどうじゃ?」
「クエスト?何処に行けばいいの?って、あそこよね?」
「そうですね」
「ク、ク、ク。定番じゃな」
クエストを受ける場合や、クエストを依頼する場合、ギルドと呼ばれる場所か酒場と相場は決まっている。
つまり、ミヤやバーバラがいる酒場であった。
「早速行ってみよっか」
「け、けど、店はどうするんですか?」
「仕方がない。ワシに任せよ」
アリアの魔法により、宿屋の入り口にドアが出来る。
「ドアが作れたのであれば、クエストの必要なくない?」
「だ、駄目ですよ!?お爺さんの事が心配じゃないんですか?」
「それにじゃ。ワシの魔法は一時的なものにすぎん。いずれは消えてしまうじゃろ」
「ク、ク、ク。我はクエストなるものに興味があるのだ」
「それなら仕方がないか」
こうして三人は、クエストを依頼する為にと酒場を目指した。
ーーーーーーーーーー
酒場。
店内に入ると、相変わらず店は繁盛していた。
「この人達は働かないのかしら?」
「冒険者じゃないのか?」
「葵…私たちも一応冒険者ですよ」
などと雑談していると、こちらに気づいたミヤがやってきた。
「りにょ!」
「ミヤ!」
久しぶりの再会に喜ぶ二人。
「どうしたんだニャ?」
流石にまだ魔王を倒していないのは、ミヤにも分かる。
「実はね…」
りのは今までの事を話した。
ミヤと別れた後の事や、宿屋の店主にお世話になった事、なぜ今もまだここにいるのかという事をだ。
りのの話しを黙って聞くミヤ。
話しを聞き終わったミヤは、ふー。と、ため息を吐いた。
「ずっと居たニャら、もっと早く会いに来れば良かったニャ」
「えへへ。恥ずかしくてさ」
感動的な別れをした後で、どの面下げて会いに行けるというのだろうか。
「まぁいいニャ。クエストだったニャ?こっちに来るニャ」
「はーい」
ミヤに案内され、三人は店の奥へと足を運んだ。
案内された場所の壁には、色々な紙が貼られている。
「ここでクエストを依頼できるニャ」
「へ〜。じゃぁ何かクエストを受けたい場合は、ミヤに声をかければいいの?」
壁に貼られている紙を見ながらりのが尋ねると、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
「ふふふ。ごめんなさい」
笑い声のする方へと顔を向けると、綺麗な女性が立っていた。
「紹介するニャ。ウチで働きニャがら、クエストを紹介するのは、ギルドから派遣されたこの子が担当するんだニャ」
ミヤに紹介された女性は、軽く会釈をしてから自己紹介をする。
「初めまして。可愛い冒険者さん。私はギルドに勤めています、名をレオナと申します。以後、お見知り置きを」
ボン、キュ、ボンとしたスタイル。
いや、それよりも特徴的なのは、ピンっと真っ直ぐたっている耳。
「お、おい…りの、玲奈…」
「は、はい。ま、間違いありません」
『エ、エルフだぁぁぁあああ!』
三人は涙した。
獣人族やドワーフ族を目にした時から、エルフは必ずいるハズだと考えていた三人。
エルフは貴重。
エルフは恥ずかしがり屋さん。
エルフはエルフの里にしかいない。
そんな会話ばかりしていた為、まさかこんなにも早く会えるなど、夢にも見ていなかった。
「あ、あの!」
ドキドキしながら、りのは話しかけた。
「何ですか?」
「み、耳を、耳を触らせてくれませんか?」
「……ふふふ。ダ〜メ♡」
「そ、そんな…」
落ち込むりのに、レオナが近づく。
りのの目の前までやって来たレオナは、りのだけに聞こえるよう囁いた。
「触られたら…私、感じちゃうから♡」
「………!?レレレ、レオナさん!!」
「うふふ。冗談ですよ♡」
「ん?何て言われたのだ?」
顔を赤くするりのに葵は尋ねたのだが、りのの口からは説明出来なかった。
「ミ、ミヤ〜」
かわりに口にしたのは、ヘルプの声であったのだが、ミヤは他の客に呼ばれたらしく、すでにいなくなっていた。
「うわ!ちょ、りの?」
玲奈の背後にまわるりの。
「玲奈!お願い」
「わ、私ですか?」
この女は苦手だ。りのは警戒する。
「うふふ。嫌われちゃいましたね。では、何から説明しましょうか?」
「は、はい。その、ギルドっていうのは?」
「はい。ギルドというのは、主にクエストの受注を担う機関です」
「派遣って言ってましたけど…」
「はい。冒険者様が一番多く集まる場所に、我々は派遣され、クエストの受注をするのです」
「なるほど」
実際、ギルドという機関は別にある。
しかし、ギルドにわざわざ足を運ぶ冒険者は少ない。
いや、冒険者なのだから、必ずギルドに行くのだが、回数が問題なのである。
「冒険者の皆さまは、明日でもいい、貯まってからでいい、お金が無くなってからでいいと考える方がほとんどです。そこで、我々ギルドは考えました。冒険者の皆さまが毎日必ず足を運ぶ場所で、クエストの受注をした方が儲かる、いえ、いいのではないかという考えに至ったのです」
「…今、儲かるって言わなかった?」
「滅相もございません。クエストは最悪の場合、死に至ってしまう事も考えられます。儲かる、儲からないという事で、片付けてはならない話しだと考えております」
確かにそう言った気がするのだが、レオナの真剣な表情を見た三人は、聞き間違いだろう。で、片付けた。
「毎日足を運ぶんだったら、宿屋の方がいいんじゃないの?」
人は誰しも眠る者だ。
動物や虫だって眠る。
ドワーフやエルフ、獣人族だって眠るだろうと、りのは考えての質問であった。
「ク、ク、ク。りのはこの一週間、何を見てきたというのか」
この一週間0ではないが、客は全く来なかった。
「そういう事か…ギルドも商売人って事ね」
当然、ギルドで働く人達も生きる為にお金がいる。
人が来ない事には、始まらないというわけだ。
「はい。それに、お酒の力は偉大ですから」
ふふふ。と笑うレオナ。
「え?そ、それって、どういう意味…」
「冗談です。さて、話しを戻しましょう。ギルドの仕事はクエストの受注です。つまり、ギルドはクエストを依頼されるか、クエストを受けるかの二つになるという事になります。本日はクエストの依頼ですか?それとも、クエストを受けられますか?」
アテーションプリーズのポーズをとるレオナ。
「は、はい。今日はその…クエストの依頼と言いますか…」
宿屋の主人が帰って来ない。
つまりは人探し。
ゲームでのクエストとは本来、モンスターの討伐や、素材集めがメインである。
その所為か、玲奈は人探しをクエスト依頼していいのかが分からない為、歯切れの悪い言い方になってしまう。
「ん?クエストの依頼じゃないなら、受けたいという事ですか?でしたら、貼り紙から受けたいクエストを選んで、私に声をかけて下さい」
「ち、違うんです!?実は…」
玲奈は人探しをする経緯について話した。
「なるほど。では、クエストの依頼でございますね」
「できるんですか?」
「勿論です。おつかいや庭の掃除といった、初心者用のクエストなどもあるくらいですから」
「ほっ。良かったぁ〜」
ホッと胸を撫で下ろす三人。
「しかし、人探しは一番難しいクエストですので、それなりにお金がかかってしまいます」
「へ?ちなみに…いくらですか?」
「50000Gです」
『ブフーーッ!?』
「ちょ、ちょっと待って!人を探すだけでしょ?高すぎるでしょ!!」
「いえ、内容が問題なのです」
「内容?」
「はい。この町の何処かにいるはず。といった内容でしたら、1000Gぐらいですみますが、名前も知らない、何処にいるかも分からない。皆さまは冒険者です。そんな皆さまは、このクエストを受けたいと思われますか?」
「た、確かに…」
「ですので、高額の報酬を出すしかないのです」
一理ある。と、りの達は思った。
「レオナさん。ちょっと三人で話して来ていいですか?」
「どうぞ。もし何かを受けるのであれば選んでから。何かを依頼するのであれば、あそこにある紙に記入してから声をかけて下さい」
「はーーい。玲奈、葵!」
一旦レオナから離れ、りの達は今後について話しあった。




