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第1章11 ステテコパンツって高くないですか?

 第1章11


【16】ステテコパンツって高くないですか?


 クエストを受ける事にしたりの達。


「さてと。まずは武器屋さんとかに行ってみようか」


 冒険の基本である防具や武器、道具を買って行こうという提案に、反対の声はあがらない。


 しかし、反対の声の代わりに、疑問の声があがった。


「武器を見に行くのはいいですが、何を買うんですか?」


「バカね。いい玲奈?武器屋は武器を買う店なんだから、武器に決まってるじゃない」


「ク、ク、ク。我は杖を所望するぞ」


「お!杖かぁ…うん。カッコいいかも♡」


「え?あ、あのぉ…皆さん。大事な事を忘れていませんか?」


「うん?お金?お金なら宿屋で働いて手に入れたお金があるわよ?」


 りの達は一週間の間、宿屋で働いたおかげで5千Gは所持している。勿論、売り上げは本来なら宿屋の主人のものなので、一週間の売り上げの全額ではなく、その半分の金額なら貰ってもいいだろうと、三人で話しあっていた。


「いえ、そうじゃなくて、装備できる、できないが問題なのでは?と、思いまして…」


「あ…」


 忘れてた。と、りのは頭を抱えてしまう。


 ゲームの基本中の基本、装備。


 魔法使いなら杖、剣士なら剣、戦士なら斧など、その職業に応じた装備品というのが、ゲームの基本のルールである。


「ちょ、ちょっと、アリア!」


「ちょっとも何も、基本じゃろが」


「そうだけど、私たちが装備できる武器なんてあるの?」


 アイドルに魔法少女。そして、正義のヒーロー。


 さて、装備できる武器は何でしょう?


「あるじゃろ。げんに玲奈は装備しておるではないか」


「言われてみれば…そうよね」


 玲奈は魔法少女に変身した際、ステッキを持っていた。つまり、玲奈、いや、魔法少女の武器はステッキということになる。


「なら、武器屋に行く価値はあるはずよ!それに、説明ぐらい書いてあるでしょ」


 武器には、説明書みたいなものが書いてあるのが一般的である。例えば、戦士専用とか、敵にあたるとたまに眠るとか色々だ。


 とりあえず武器屋を探す事にした三人。


 ゲームで武器屋といえば、剣のマークが目印であり、逆に防具なら盾のマークである。


「ここね。良し!入ってみましょう」


 しばらく歩いたりの達は、目的の場所である武器屋に入って行った。


 ーーーーーーーーーーーー


 武器屋。


 カランカラン。と、入り口のベルが勝手になる。


「…らっしゃい」


 カン。カン。と、店主らしき男が、金槌を振り上げながら声をかけてきた。


「ちょっと、武器を見に来ました〜」


 一言断りを入れてから、りの達は店内を見渡した。


 武器屋の店内はそれなりに広かった。


 壁に立てかけられた槍や斧。


 樽に入っているのは杖だろう。


 傘立てみたいな感じで飾られているのが剣。


 棚に置かれているのは、武術家専用の武器であるヌンチャクとかだ。


「へ〜。色々あるのね」


「本当ですね。葵?」


「ぐぬぬ。なぜ、なぜだ!なぜ杖が装備できぬのだぁ!!」


 なぜって、正義のヒーローだからじゃん笑。と、二人は思った。


「えぇい!りのよ。コレを買ってくれ」


 一本の杖をグイっと手渡す葵。


「あのね。装備できない武器を買ってどうするのよ」


「ふ。考えてみよ」


「はぁ?」


「カッコいいではないか!!」


「………絶対ダメ」


「…分かります。分かりますよ!葵!」


 コスプレイヤーとして、葵の気持ちを察する玲奈。


「…はぁ。ほら、見なさい」


 全くコイツらは…と、思いながら、スッと壁に貼られた紙に指を向けるりの。


 その紙に書いてある内容を、玲奈が読みあげていく。


「え〜っと。装備できない武器を持つという事は全くの無意味です。戦闘の邪魔になり、生存率が下がりますのでやめましょう。また、無理矢理装備すると、武器は直ぐ壊れます。店主」


「なぜ、直ぐ壊れるのだ?」


「使い方が分からないからじゃない?ほら、包丁とかちゃんとした使い方で使わないと、直ぐ刃こぼれをおこすっていうし…ん?」


「包丁の使い方って何でしょうね?」


「いや、そもそも奴は包丁いぜんが問題だろ」


「き、聞こえてるわよ…。と、とにかく!却下よ却下!」


 二人はほっといて、棚でも見ようと考えたりのは、棚に近づいて行く。


「メ、メリケンサック!?って、武術家が使うのかしら?」


 棚に置かれた一つの武器を手に取るりの。


「はぁ?武術家かヤ、ヤンキー専用?」


 メリケンサックの名札には、そう書かれていた。


「ちょ、ちょっとアリア!」


「なんじゃ、なんじゃ、もぉ!ふわぁあ…」


「何か変な事が書いてあるんですけど!?」


 アリアが見えるようにと、メリケンサックを胸付近に持っていく。


「うん?ヤンキー?ヤンキーって何じゃ?」


「何って、不良の事よ、不良」


「良く分からんのだが、そこに書かれているのだから、職業じゃろ?」


「……ヤンキーは職業じゃないから」


 どんな仕事だよ。と、心の中でツッコむりの。


 アリアが知らないということは、これ以上聞いても意味はない。


 そっと、メリケンサックを棚に戻した。


「はぁ…私が装備できる武器何てあるのかしら?あれ?葵、玲奈!」


 何かを手に取り、雑談している二人へと近づいて行く。


「どうしたの?って、ひぃぃい!」


「動くな!命が惜しければ…な」


 カチャ。と、葵が向けてきたのは拳銃であった。


 条件反射で両手をあげるりの。


「カ、カッコいいです…。葵、次、次は私にやらせて下さい!」


「欲しがりちゃんめ…」


「ちょ、な、何それ?」


「ん?棚に置いてあったぞ?」


 そう言って、葵は棚に目を向ける。


 棚?と、呟きながら目を向けると、大量の拳銃が置かれていた。


「こ、コレって、ある意味最強の武器じゃない!」


 これさえあれば、雑魚モンスターぐらいは楽に倒せるかもしれない。と、心躍らせながら、棚から一丁の拳銃を手に取る。


「…って、これ、エアーガンなんですけど?」


「ク、ク、ク。銃の所持や販売は法律で禁止されておるのだから、当然ではないか」


「異世界にそんな法律ないでしょ。しかも、見てよコレ!」


 拳銃の名札には、拳銃を装備できる職業が書いてあった。サバゲーマー。と。


「大体、サバゲーマーって…」


「知らないんですか?"さばげぶっ!"を、りのは見ていないんですか?」


「いや、見てるから。サバゲーマーって職業になるのかな?って意味よ」


「ク、ク、ク。サバゲーを行う為の場所を貸し出したり、武器や防具一式を貸し出したりする人達もおるのだから、商売としては成り立つのではないか?あ、後、買ってくれ」


「言われてみれば、確かにそうか。ヤンキーよりかは納得できる話しね。後、ダメよ」


 ちなみに現在では、サバゲーをしているところを撮影し、動画をアップしてお金を稼ぐユーチューバーもいる。


「それよりさ、二人は装備できる武器見つかった?」


「私はステッキがありますから、大丈夫かと」


「ク、ク、ク。だから言うておろう。我はコレを装備すると」


「ダメったらダメ。あっ!もしかして、葵はそのグローブが武器なんじゃない?」


 りのは最初の頃の事を思い出していた。


 チュートリアルの時、葵は右拳で敵を倒している。


 その事を思い出したりのは、グローブ、グローブと、棚からグローブを探す。


「ほ、ほら!あったわよ、葵」


 棚に置かれたグローブを手に取りながら、葵に声をかけた。


「あ♡いいじゃないですか!このトゲトゲが萌えますね」


「ん?バ、バンドマン専用?」


 名札には、正義のヒーロー以外の職業も書かれていた。


「ねぇ、アリア?ここって異世界なのよね?」


「なんじゃ、今さら」


 ヤンキーに、サバゲーマーやバンドマンなど、異世界には、につかわしくない職業ばかりである。


 りのがそう思うのも無理もない話しであった。


「言うたじゃろ?ワシらは異世界人の召喚をしておると」


「つ、つまり、この世界には私たち以外にも日本から来ている人達がいるってこと?」


「分からん。ワシらも召喚人数に限りがあるのじゃ。天才であるワシは四人の召喚が可能じゃが、まだお主ら以外来てはおらぬ」


「なるほど。つまり、他の妖精さんが、ヤンキーとかを召喚している可能性があるのね」


「左様。まぁ、最後の質問からそのヤンキーとやらの職業を選ぶバカはおらんと思うがの」


 ふー。やれやれ。といったポーズをとるアリア。


 ピクッと、肩を揺らす三人。


 この世界に召喚される人は、アリア達妖精が最後の質問である"職業はどうしますか?"の選択によって、この世界の職業が決まる。


 普通であれば、勇者とか魔法使いを選ぶ為、ヤンキーとかサバゲーマーを選ぶ人はいないだろう。


「…バ、バカって言ったかしら?」


 こめかみをピクピクしながら、りのはアリアに喋りかけた。


「だ〜れの所為で、アイドルなんて職業になったと思ってるのよ?ねぇ?」


「……!?りり、りの、ほ、ほれ、お主の武器があるぞ」


 なんとか話しを誤魔化そうとするアリア。


 ここは店内。


 怒鳴り散らして迷惑をかけてはいけないと、りのはぐっと堪えた。


 それに怒鳴り散らしたところで何になる?何も変わらないではないか。


 りのは小さく深呼吸し、棚に置かれた武器を手にする。


「た、た、戦えるかぁーー!!」


 ウキーーー!と、りのの声が店内に響き渡った。


 しかし、それは仕方がない事である。


 なぜなら、りのが手にしたのは、一本のマイクだったのだから。

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