本気と書いてガチと読む
もふもふには何の罪もありません
私とヒスイは血の滲む訓練を乗り越えて
今日この日を迎えた。
そして、今は選手控え席にて、
ライバルとなりそうな選手を上から2人で
威嚇攻撃している最中である。
因みに、前大会優勝者は
ルシオ兄様とピリン兄様である。
そんな2人は反対側の来賓席から
私たちを見守る模様である。
…というか、王家全員優勝者かぃ!!
プレッシャーはんぱない!
魔王ミリーナお母様とお父様同様、レオン兄様は単独で優勝…あ!目があった。
とりあえずヒスイと
引きつり笑顔で手を振っておく。
すると、レオン兄様は
ご令嬢方が倒れそうな素敵な笑みを
浮かべられました。
はぅぅぅぅ!
イケメンだぁぁぁ!!
ごちそうさまでっす!
レオン兄様の慈愛の笑みに
緊張が和らいでいたら、
隣のヒスイがキュンキュン鳴いている。
ヒスイの隣に座る、
でかい図体の蛇の獣人達が、
下卑た笑いを私たちに向けている。
「なぁ、お姫さんたち、
こんなにちぃちゃいのに
こんな野蛮な大会出ても
いいんでちゅかー?ぶっはっはっは!」
「ブフォッ!やめろよ、シリウス!
しっかし、こんな可愛いチビ達だから
誤って飲み込んじまうかもなぁ!
ぶっはっはっは!」
…こいつら!!!
私がヒスイを庇いつつ、
唇を噛み締めながら睨み上げると、
それに気付いた蛇の片方の獣人が、
にんまりと笑みを浮かべ、
またも汚い口を開いた。
「お?お姫さんが怒っちゃったかなー?
しっかし、この大会には王族に対して"不敬罪"も気にしなくていいって言うのは堪らないなぁ!」
私が口を開こうとした瞬間、
私の頭の上にもふもふが降ってきた。
「キュルルルルルルルル!!
(オイコラァ!ルーナお姉しゃまに向かって何言っとんじゃーわれー!!!)」
なんと!私の頭の上には先ほどまで顔面蒼白で怯えていたヒスイが子狼姿になり、
キュルルと威嚇しているではないか!
可愛いすぎる!
ヒスイが可愛く威嚇した事によって、
周りの選手達含め見ていた国民達から
蛇の獣人達に向かい、
ブーブーと抗議し始めた。
「オラァァァ!!可憐なルーナ姫様と勇敢なヒスイ王子のファンクラブではない癖に何勝手に話しかけてるんだぁぁぁ!!!」
「そうだぞぉぉぉ!!
ファンクラブ会長であるレオン王子様がお許しになられないぞぉ!」
「キャーッ!可愛いすぎるうううう!!
ルーナ姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ヒスイ王子様ー!がんばってええ!」
ファ、ファンクラブ!?
レオン兄様!何ですかそれ!
でも、周りの選手や国民達からの応援で
とても助かったわ…。
ヒスイはへへん!と可愛く私の頭の上で
胸を張っている。
よし!大会がんばるぞ!
ヒスイと共に立って周りの方々に
笑顔で感謝の気持ちを伝えた。
「「ありがとうございます!」」
因みに、大会は私たちは
2人組で戦う枠ではぶっちぎりで優勝した。
先ほど、私たちをバカにした
蛇の獣人達は最後の試合で
戦ったけれども、
開始5秒で片がついた。
わぁぁぁぁぁぁぁ!
響く歓声の中、私たちの元に、
満面の笑みを浮かべるレオン兄様と
安心した様なピリン兄様、
バーベル持ったままのルシオ兄様が
駆け寄ってきた。
ちらりと王族専用の客席には、
お父様とお母様は嬉しそうな微笑みを
浮かべているのに気がついて、
やったぜ!という様に
ヒスイと2人でウインクした。
あ!レオン兄様が
そこに倒れている蛇の獣人を
駆け寄って来る際に、
思いっきり踏んでいた。
レオン兄様は私を、
抱き上げて、くるくる回った。
「ルーナ!よく頑張ったね!今度、可愛いぬいぐるみを買ってあげるからね!」
「本当!!レオン兄様大好き!」
こちらとはテンションが正反対に、
ピリン兄様の耳がふにゃりとして、
尻尾をぶんぶん振るヒスイの頭を撫でて、
優しく抱き上げ、誰もがトクンとなる慈愛の微笑みを浮かべ、「頑張ったね」と褒めていた。
すると、ピリン兄様の女神の様な真の慈愛の微笑みにヒスイは栓を取ったかの様に
くりくりの空色の瞳から雨を降らせた。
「うええええええん!!
おにぃしゃまぁぁぁぁ!!」
レオン兄様に抱っこされつつ、
ヒスイを見ながら、
あぁ…まじで天使がいるわぁ。
癒されるなぁ〜。
…としみじみ思っていた。
因みに、ファンクラブ会長はその様子を
会員達に写真や絵を沢山撮らせたり描かせたりしていた。
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"これは大会終わりが終わった後の事"
「なぁ、レオン兄様。
あの蛇たち、復讐しにこないか?」
ピリンは憎き蛇の獣人と
今は己達の腕の中で、
すぴすぴ眠る愛する2人の大会での
選手席の時や試合の結果を考えると
心配になり、隣に座っている兄に尋ねた。
「ふふふふ、甘いよ。ピリン。
この僕が何も対策していない訳が
無いだろう?」
愛する僕の天使達に
随分な口を聞いたしね。」
レオンの不敵な笑みを見て、ピリンはこいつ…何をやらかそうとしているんだ…とズキズキ痛む胃の辺りに手を当てた。
そんな2人の語らいを知って知らずか、
少女の様な笑みを浮かべたミリーナがそこへやってきた。
「あら?もぅ何か考えてたの?
ごめんなさいね、レオン。
お母様、
もぅお父様に差し出しちゃったわ。
…ふふっ。」
「えー、お母様。手が早すぎますよ〜。」
「ごめんなさいねー。ふふっ。」
2人の会話を聞くピリンは普通に横で
純粋な恐怖を感じている双子の片割れの肩をぽんぽんと叩いた。
王族専用の観客席から男は見ていた…。己が愛する天使達が害されている。
ラルグは手を固く握り締めながら
己の立場に震えた。
すると、隣に座る妻が震える拳の上に手を置き、優しく寄り添ってきてくれた。己が愛する妻は幼かった頃のレオン達同様あの子達を厳しく訓練をしてくれたお陰で騎士達よりあの子達は強くなったと思う。
「ミリーナ、
俺は何もできない自分が憎い…
あの蛇達を……!クッ…。」
「ラルグ…もぅ!
何もできないなんて
言葉にしてはダメよ。
言葉にする前に実行でしょ?ね?」
「ミリーナ…‼︎
そ、そうだな!今こそ、
長きに渡る蛇族の不正を暴く時!」
「ふふっ。その意気込みですよ。」
ラルグは、慈愛の微笑みを浮かべる妻の肩を抱き、熱意を瞳に宿した。