幼き少年王子の悲しみ
第四王子、ヒスイ視点
「離せぇぇぇぇぇ!!!!!」
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない…」
牢の中のこの女はだれなんだ…。
彼女の艶やかな漆黒の髪は、
ボサボサになり、
いつも笑顔を向けてくれたその顔は、今では鬼の形相になっている。
彼女が読んでくれた絵本に出てきた怖い奴に似ている。
「なに…? ピリンにいしゃま!!
ルシオにしゃま!!どうしてマリアはこの中にいるの?!このおへやは、わるいことしちゃ人しか入っちゃめーよ!じゃないの⁈」
大好きなルーナ姉様と過ごしていたら、
知らないオジちゃんたちが来て、
怖い声を出して近寄ってきたから、
僕がやっつけようと思ったら、
目に見えない速さでミリーが
オジちゃん達を吹っ飛ばした。カッコ良い…
僕たちの周りは、守護騎士達が囲み、
連絡が入ったのか、真顔のレオン兄さまと、怖い顔をしたピリン兄さまが来てくれた。
ここに居ないルシオ兄さまは、他の逃げた人たちを捕まえに行っているって言ってた。
泣きながら、僕のことを抱きしめてくれているルーナ姉様は、震えていた…。きっと、ルーナ姉様も怖い筈なのに、大丈夫…大丈夫と何回も言ってくれた。
ルーナ姉様…。
そういえば!マリア!
レオン兄さま!ピリン兄さま!ルーナ姉様!
マリアがいません!
…どうして、そんなに悲しい顔をするの?
マリアは、神聖な森で、
倒れているところを、僕が助けた。
マリアといるのはとても楽しかった。
僕の身分のことは内緒にしていたけれども、
僕が2歳となって、王国へ帰る時に王子と告げたら、それまでの表情の反対になった。
マリアは、僕と離れたくないから、
専属侍女にしてもらうと言っていた。
そんな事出来ないと教えたが、
冷たい目で見られた。
突然のマリアの変化が、気にかかったけれども、敢えて何も言わない事にした。
ううん…、僕に勇気が無くて言えなかった。
言ったら最後なんだと、
どうしてか思っちゃった。
マリアの事を見る…。
兄さま達が言うには、
マリアは姉様と僕に悪いことをしたみたい。
兄さま達の元から、離れて、
ブツブツと何かをつぶやくマリアのいる牢の前にいく。僕の目から、雨が止まらない。
「ねぇ、マリア、どうして…?」
僕の震えた声が響く。
僕の様子を見ていた周りの騎士達、侍女達がすすり泣く。
僕の声を聞いたマリアが、
やっと僕を見てくれた。
本当に、やっと僕のことを見てくれた。
でも、マリアの目はドンヨリとしている。
マリアがニヤリと笑った。
「ヒスイ…ヒスイ…。。ねぇ、助けて。
貴方なら、出来るでしょう?
ねぇ、ねぇ!ヒスイ!!!!!」
マリアが、可笑しい。
マリア、もう戻ることができないんだね。
垂れる耳、尻尾が逃げる。
マリアの事を見れなくなった。
ぎゅうって目を閉じた時、マリアと過ごした
楽しかった日々が浮かんだ。
立ってられなくなって、座り込もうとした時、お母さまが抱っこしてくれた。
お父さまも僕の頭を撫でてくれた。
兄さま達も、がんばれって応援してくれた。
今、ここに居ない姉さまは、あの時から体調を崩しちゃったみたい。でも、姉さまは、僕のことを守ってくれている。
それに、騎士達、侍女たちも、
がんばれって応援してくれているみたい。
お母様に降ろしてもらい、
もう一度、マリアの前に行く。
「ぐすっマリア、今ま、でありがとうッ!
…ッひぐ、さ、よ、うなら…!」
戻れるならば、出会った時に戻りたい。
主人公→元々各国から狙われていた。
ヒスイが狙われた理由→マリアの目に見えないヒスイへの執着
ヒスイ少年…‼︎彼の知らない内に事が進んでいた…。一番可哀想でした涙
マリアは、主人公の誘拐後に森へ逃げ込んだ時にヒスイ少年の出会いました。