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お茶会シリーズ

子供とお茶会を…しない

作者: 空未ことり

ネタバレは無いよ

登場人物紹介

主人公 穂高ほだか 沙希さき 白魔法使い

部長こと 高野たかの けん 剣士

副部長こと 八月一日ほずみ 勇樹ゆうき 黒魔法使い

部員1 城ノじょうのうち れん 弓使い

部員2 十七夜月かのう 美空みそら 獣使い

部員3 櫻田さくらだ 涼也りょうや 暗殺者アサシン

「神様とお茶会を」「神様とお茶会を2」を先に見ていただいたほうが面白いと思います…。

 初めまして。あ、お久しぶりですか?穂高です。ただいま、状況を確認中なんです。周りにある物が物なんです。え?何かって?布です。あ、分かりにくいなら服です。男性用の。…距離感から部長と涼也君なんですけど、肝心の二人がいないんです。それに、一番不思議なのは私の服が大きく感じること。…小さくなったのかな?おかしい。絶対におかしい。サイズは合っているのに…。

 ちょっと整理してみよう。あの時、すごく風変わりなモンスターが現れたんだ。で、えっと……あ、そうだ。三人もろともガス的なものに襲われて…で、どうなったんだっけ?気絶はしたんだよね。で、それからどうなったか。みんながいないよ?


「…何があった?…って誰の声だ?!これ!!」


 私がつぶやいたはずなのに、幼い子供の声だ。ギョッとした。嫌な予感もした。ソーッと手を見てみると、やっぱりそうだった。手が、完全に小さくなっている。最悪だ。人生、16年も生きてきたのにまた逆戻りなんて…。もう嫌だ。死にたい。


「……ん?」

「あ、服の中にいたのか。部長」

「誰だ?その声。…俺を部長って呼ぶのは穂高しかいないんだが。え?全然声が違うんだけど穂高?と、言うよりもここはどこなんだ?見えない。白い」

「…ゴソゴソ何をやっているんですか?服の中で」


 私が言うと、部長はピタッと動きを止め、首の方から出てくる。って、


「誰?!」

「お前こそ誰だよ!!」


 小さな子供がいました。少年です。な、何これ。あのときの部長はどこに行った?!あんなに「男子高校生です」感が半端なかったのに!!可愛らしさが上がるね。子供。このまま口調も改めてくれたら一番可愛いんだろうけど、あいにく中身は高校生。してくれるはずは無いだろう。


「本物の部長ですか?!」

「部長って呼ぶお前は本物の穂高か?!信じられないんだが?!」

「…自分も見たほうがいいですよ」

「え?…って何があった?!俺の手が!!何でこんなに小さいんだ?!」


 部長がすごく驚いている。な、なんだろう。部長の尊厳もなさそう。…昔から無かったね。ごめん。聞かなかったことにしてくれ。と、心の中の私に言う。

 でも、すごく可愛い。何?いつもの暴力を起こす部長はどこに行った。


「えっと…子供になってるみたいなんですね」

「何でだよ。俺ってこんな感じだったのか……美化されてる気がする!!え?穂高さん。状況の説明をどうにか頼みます。ファンタジーってややこしい。色々なファンタジー小説読まれていますよね?そうなので教えてください」

「んなこと言われましても…。と、言うより絶対に部長の方が知ってそうです。あれですよね?色々あって子供になっちゃいましたテヘペロ的な」

「…ごめん。そんな子供が無表情でテヘペロはきつい。怖い。今すぐ止めてください。しかも、テヘペロって言ってるだけだし……。しろよ!!テヘペロを!!」

「…あ、そうですか。別に関係は無いんですけどね。あ、もしかしてテヘペロ、してもらいたかったんですか?今からでもやってあげましょうか?」

「やめろ。怖いから」


 子供の可愛らしさの欠片も無いこの会話…。駄目だ。私と部長はこんな会話しかできないんだった。子供に戻っていても健在だ。でも、いつもの声じゃあないからすごく違和感。おかしい。こんな声で話したことなんてない。


「今の子供は口が達者なのねー」

「そうですわねー。奥様」

「「おほほほほーー」」


 って会話が聞こえてきたよ?!全然人がいないのに。ま、身体は子供だもんね。…心は完全な高校生だけど。しかも、笑い声が棒読みだったのはどうすればいいのかな?!


「あっ、え?な、何も見えないです…。誰か、いませんか?!」

「涼也君!!今すぐそこから出てきなさい!!」

「ほ、穂高先輩ですか?いつもと声が違うような…」

「サクラ。出てきてからちゃんと話はしてやる。落ち着け。落ち着くんだ」


 声高いから違和感ハンパない。くっそ笑える。…笑っても大丈夫そうだから笑っておいた。だって、子供だし、痛くないだろうし、何より服が大きいから出てきた瞬間に何もきていない状態になるからね。子供になっても羞恥心はあるだろうから絶対に出てこない。それが分かるんだ。それに、私をここから出してしまうと部長はロリコン確定になってしまう。…ドンマイ。


「わ、笑うなっ!!」

「殴れるものなら出てきなさいよーだ!!」

「無理に決まってるだろ!!これでも中身は高校生だ!!お前だって思春期真っ盛りだろうか!!それで男児の裸体見たいのか?!」

「…男性じゃあないだけましだと思いません?分かってますか?本物の部長よりは何十倍もましになってるんです。子供ですから。まだ、ましです」

「ま、そうだろうけど…って笑うな!!何で笑うんだよ!!俺が男で誰も損はしないだろ?!」


 やばい。部長が本気でおもしろいから腹筋が崩壊しそうだ。しかも、顔を真っ赤にしてるからね。子供だし。普段の部長のひとかけらも無い。あるとするならば口調だけだ。


「あ、出ました。って穂高先輩にケンさんですか?!ど、どうしたんですか…」

「ま、待って?!涼也君、何でそんなに美少年だったの?!」

「子供の頃から可愛いんだな…」


 超、が何個付いても良いような美少年がそこにはいた。五歳位だよ?!部長みたいなギャップは無いものの、可愛らしさがやばい。あれだ。全然興味は無かったけどショタって可愛いものなんだね。これは涼也君だから、なのかな?


「か、可愛いですか…。それならケンさんも穂高先輩もですよ。僕だけじゃあないと思います」

「……その一言は俺の心を折るんだ」

「私はそんなことないから別にいいよ。それより、そんな外見で「俺」は無いと思います。大人の人が見たら驚くと思いますよ?さあ、羞恥心を押さえて「僕」にするのです」

「お前は何で活き活きしてるんだ?!そんなに俺の心に傷をつけたいのか?!根からボッキリ折るんじゃねぇ!!大体、涼也とは違うんだよ。涼也は元々から一人称が「僕」だろ?俺は絶対に似合わない。このままで行く。それだったらお前もそんな敬語は止めろよ!!」


 グッ…か、返す言葉が無い、だと?!私は本気で黙った。年上の人に敬語って普通だよね?それを止めろだなんて私には無理なんだ。何でなんだろうね。本当に。


「何でこんなことになるんだよ。教えろ」

「現代科学では証明できないことだらけだから。異世界トリップだけでも訳わかめなのにこれ以上難しくされると私は寝ます」

「訳わかめって…。面倒くさいからどうでもいいけどな」


 穂高の、無駄な豆知識ー!!わかめ編

 知ってた?わかめには、ヨウ素や、カルシウム・カリウム・亜鉛なんかの海洋ミネラル成分が豊富に含まれているんだよ。

 わかめに豊富に含まれるヨウ素は、基礎代謝を活発にして肥満を予防、さらに甲状腺ホルモンと関係しているから、精神を安定させて、心身ともに活性化してくれる働きがあるらしく、カルシウムは、骨や歯を丈夫にし骨粗しょう症を防ぐ働きがあって、カリウムは、体内に蓄積された塩分を排出する作用で、むくみを抑えて、高血圧を予防する効果があるとか。

 そして、水溶性の食物繊維であるアルギン酸がわかめには多く含まれていて、大腸の働きを活発にして便通を促す働きがあって、便通が順調になることによって、コレステロールや腸内の有害物質が体外に排出されて、大腸がん・動脈硬化などの病気の予防にも効果的。

 そして、わかめに含まれる多糖類のひとつのフコダインは、胃の炎症や潰瘍の予防・修復をする働きや、肝機能の向上、がん細胞を死滅させる効果があり、がんの発生・進行を抑える作用や、体内のリンパ球を活性化させ免疫を向上、滋養強壮にも効果的。

 わかめは、体を活性酸素から守り、免疫力を高めるビタミンCや、肌荒れ・風邪の予防などに効果的なβ(ベータ)-カロチンの他、ナイアシンやビタミンA、B群、Kなどのビタミンも、野菜並に多く含んでいる。低カロリーだし、ダイエットにもいいかも。…結論だよ。

 え?分からない?えっと、とにかく便秘になったらわかめがいいんだよ。がんにもなりにくくなるんだから…せ、世界を救えるんだ。血小板や、涼也君のように。

 …今、考えてみたけどさ、血小板とわかめと涼也君のコンビってなんなの?おかしいね。何なんだろう…。


「穂高?何考えてるんだ?」

「あ、部長。聞いてくださいよ。わかめって――――」


 長々とわかめについて語った私。最終的に「お前はわかめの研究家か!!」と、言われました。なんでなんだろう。ただ、わかめについて話しただけなのに…。

 でも、涼也君がパチパチと拍手をしてくれた。私の心の支えだよ!!


「とりあえず、どうしよう?」

「そうなんだよなぁ…」

「穂高先輩、『転移』とかって使えませんか?それで戻ってみましょうよ」

「あー。それがいいかもね。でも、さっきから見てたんだけどね?私、子供になってるから魔力も結構減ってるみたいなんだ。成長と共に魔力って増えるみたいだしね。私一人なら絶対にできるけど、二人を連れて行こうって思ったら少し足りないかもしれない。…着いた瞬間にぶっ倒れるとか、魔力切れで目的地まで行けないとか、あるのかもしれないよ?」

「それでも、行くしかないだろ。もし倒れたら俺たちが何とかして運ぶ。でも、俺たちも子供だから魔力の減る量も少しは変わると思うぞ」


 私は溜息を吐く。魔力を少し見てみた。そして、部長と涼也君の分も勝手に見る。涼也君はあんまり魔力が無い。しかし、部長は結構あるようだった。


「部長。大人に戻ったら魔法の勉強をしてみましょう。いいものが使えるかもしれません」

「お、おう」

「ついでに、魔力を借ります。本当は魔力を浄化しておいた方がいいんですけどね。…あ、別にお二方の魔力が汚いって言ってる訳ではないんです。ちょっと説明しますね?傷ついてもらいたくないので」


 私は一呼吸をおき、魔力についての説明をしていく。


「魔力ってのは人それぞれで全然違うものなんですよね。言ってみれば血液型です。

 魔力で大切なものは「量」「質」「波」なんです。量は分かりますよね?

 質は純粋な魔力に近いのか、自分の魔力に近いのかって事です。自然から湧く魔力が純粋な魔力だとして、これは誰にでも合うんですけど、個人の魔力が他人に合うことなんて余り無いんです。それは魔力を使うごとに自分が使いやすいように変わっていくんです。

 波はまあ、波長ですね。魔力には面倒くさいことに波長みたいなものがあって、それを合わせないと使えなかったりしてしまうんですよね。面倒くさいことに。非っ常に面倒くさいことに。何度も言いますけど、非っっっっ常に面倒くさいことに。

 それを治さないといけないんですけど、今さっき見てみたら異世界人って結構似てるみたいなんで気にしなくてよかったです。副部長の分もそうでしたしね」

「……お、おう」


 これはこの世界のおっちゃんから聞いた話だ。おっちゃん言っても変なやつじゃあないよ!!普通に野菜を買わしてもらってるおっちゃん。水魔法を巧みに操り、野菜についた泥を落とし、風魔法で野菜の水を払う、もったいない使い方をしているおっちゃんだ!!最近は火魔法で野菜炒めを作ってるんだってさ。氷魔法では氷を作り出して売ってるしね。

 商売上手。魔力の無駄遣い。そんな人だ。


「それじゃあ、してみましょう」

「そうですね」


 私たちは近付いた。服がすごく大きいので必死に抱える。…学校のものだからね。戻ったときに困るから。それに、失くしてしまったら大変なものも…。


「よし。やってみよう。鳴かぬなら鳴いてみやがれモンスター!!」

「…意味が分からん!!」

「…『転移』しろやぁぁぁ!!」

「ほ、穂高先輩が叫んだ!!」


 最終的に『転移』できると言う偉業を成し遂げた。私、すごいよ。よくやったよ。


「さあ!!褒めろ!!」

「……お、おう」

「穂高先輩、すごいです!!」


 そして、この差であった。酷くない?!魔力、ぎりぎりなんだよ?!本気で!!


「で、ここは誰の部屋なのかな?」

「さあ…誰の部屋なんでしょう」


 現在、私たちはとてもお金が増えてきたので家を買ってしまいました。二階建て。しかも、個人の部屋がちゃんとあるんだよ。私の部屋は女らしさの微塵のかけらも無い、白と黒で埋め尽くしてやったぜ!!それに対してこの部屋は明るい色で統一されていることから、


「絶対にソラだな」

「うん。絶対にそうですね。男性陣だったら怖い。百歩譲って私か涼也君ですね」

「…お前は千歩譲れ。印象が違いすぎて怖い」


 正直言っていい?凹むよ?私でもそこまで言われると凹むからね?悪いけど。文句があったら心の中に抑えていただかないと泣くからね?私でも泣くよ?意外じゃあないよ?人間だから。


「どうします?魔力は限界だから何もできませんよ?」

「…あ、誰か来ますよ」

「「?!」」

「あ、職業柄…分かってしまうんです。人の足音とか、物音とか…」


 な、なんだってー?!私と部長はどちらも言葉を無くしてしまった。


「だ、誰かいるの?!」

「あ、美空!!来て!!はーやーくー」

「?!」


 美空が部屋に入ってくる。そして、私たちのほうを見た。


「だ、誰?!」

「美空ー!!私だよ穂高。穂高だよー!!」

「えぇ?!ほ、穂高先輩?!可愛い…。あ、でも普段の穂高先輩も可愛いんですけどね?!」

「…抱き上げないで?!涼也君がロリコンになっちゃう!!」

「俺を忘れるなよ!!」

「え………」

「意外そうな顔を何でするんだ!!俺はロリコンじゃあねぇよ?!」


 部長が怒っていた。私はグッと部長に親指を立ててあげた。部長は怒っているようだけど、全然迫力がないから笑えてくる。


「それより、服やその他もろもろをどうにかしないといけないから副部長、呼んでくれる?説明も必要だしね」

「もういるよ」

「何やて?!」

「急に関西弁だな…」


 いつの間にか副部長が来ていた。部長は何故かモゴモゴとしている。…絶対に恥ずかしいんだな。黒歴史の誕生だ。涼也君は普通に「八月さん!!」って言ってるしね。いつか部長をいじってやろう。面白い気がするんだ。絶対に。


「穂高…だよな?」

「オフコース!!」

「で、サクラは分かる。昔からそのまんまだな」

「そ、そうですか?穂高先輩にも言われました。うーん…何を食べれば変わるんでしょう。やっぱりお肉ですかね…」

「「?!」」


 何を言っているのか一切分からない。いや。何となく言いたいことは分かるんだよ?でも、涼也君は変わりようがない、と言うか、変わらない方がいい、というか…。

 考えてみてくれ。女子力の高い男の娘が急にムキムキの男性に進化していたとしよう。…進化じゃあないね。退化かもしれない。怖いね。


「り、涼也君。変わらない方がいいよ。君はありのままの姿がいいんだ」

「そうだ。お前が変わると俺たちがどうしようも無くなる。やめてくれ。今、この場にいる一応の部長がここまで変わるだけで罪悪感が生まれるんだ…。何でこんな子供があんな男子高校生に成長してしまったのか考えるだけで…」

「ちょっと待て。何でそうなる?!」

「うんうん」

「八月。穂高。戻ったら絶対に殴る」

「ぼ、暴力反対!!暴力変態!!暴力する人はDVなんですよ?!ドメスティックバイオレンスだよ?!しかも、今ならロリコンもついてきます!!そして、部長なら何と!!3981円でご提供中でございますよ!!お手軽価格でございます!!」

「…………」


 面白いね。副部長が吹いた。あんまり笑わないキャラなのに、だよ?メガネ外してヒイヒイ言いながら涙拭ってる。それに対して部長は冷ややかに見てるよ?何でだろー!!


「こ、子供の顔で何言ってんだよ!!ハハハッ!!やっばい。ツボに入った。何で通販なんだよ!!お前は男性で特徴的な声を持つ通販の社長か!!あの人、声高いからすぐに分かるんだよ!!」

「あぁー!!あの人かー!!テレビつけてたらよく分かるね。他の部屋にいても分かるんだもん。姿を見てないのに「あ!!」ってなる」


 私は副部長ととある社長さんについて話し合っていた。男性の中でもソプラノでしょう。あのお方。声高いから時々聞いててイラッと来ることがあるときも…。


「そ、それはいいんですが服をどうにかしましょう!!」

「そうだな。じゃあ買ってくるか。ソラだと普通になりそうだし…シロ。行くぞ」

「…遊びましょうか」

「「「待てェェ!!(待ってください!!)」」」


 子供組は叫んだ。絶対にいやなことがある。それが何となく分かるからだ。特に部長と涼也君。

 しかし、そんな私たちの声は届かなかった。副部長と城ノ内は笑いながら部屋を出て行った。最悪だ。絶対にいけないことがある。私は部長と涼也君の方を見た。二人とも顔面蒼白だ。


 で、結局こうなった。

 私は普通のワンピース。赤と黒のチェック柄で、靴は黒いブーツ。謎だったのは子供用の下着を買ってきていること。…ま、まあ副部長は何も考えては無いよね…?

 でも、それ以上に謎だったのは部長と涼也君の服のほうがフリルが多いことだ。リボンもついてるし。ピンク色。同じワンピースって言う点でも不思議だけど、それ以上に二人が似合うことも謎だ。

 部長は顔を真っ赤にしながら怒ってるけど、声も高いしただ単に女の子が「この服嫌い!!」って言ってるだけみたい。涼也君に限っては耳まで真っ赤にして座ってるだけ。お、乙女座りだよ?ただの女の子になってる。ある意味怖いんだけど。


「何してます?ロリコンに目覚めましたか?」

「あ、穂高。これ、面白くね?!似合うよな!!」

「は、はあ…」

「穂高!!このロリコンを止めろ!!信じるな!!」


 私は真ん中にいることにしました。え?だってさ、ロリコン副部長(仮)と二人の男の娘の部長と涼也君。どちらについても負けだと思うんだ。正直ね。


「ところで、部長」

「…なんだよ」

「What is this (これはなに?)」

「I don't no what to say(んなこと言われても知らんがな)」

「ちっ。使えない」

「何か文句あるか?!」


 スカートの裾を押さえる。…丈が普段と違うからそわそわする。なに?短い。怖い。


「そこのロリコン副部ちょ……ふ、副部長サマ。もう少しいい服を…」

「…穂高。最初になんていったか一字一句間違えずに言え」

「…ろ、ロータリーエンジンのコンサート最高ですね。コンサートに行きたいです。副部長サマ」

「…何が言いたいのかさっぱりだな」


 頭をガシッと掴まれた。頑張ったよ。私は!!ロータリーエンジンのコンサートって面白いと思う?絶対に面白くないよね。この世界にエンジンってないし、もし戻ったとしてもロータリーエンジンでコンサートはしないと思うんだ。絶対に!!


「児童虐待っ!!」

「うっせぇ!!俺は言っとくけどロリコンとは無縁だ!!一切関わってないからな?!」

「…なら、二人のこのフリルはなんですか?私もこんなスカートは履かないんですけど?何回も私服で会った事ありますよね?その時にこんなスカート履いてましたっけ?丈も短いですね。え?二人は男子ですよ?健全な男子高校生ですよ?特に涼也君は健全ですよ?そんな二人を何で真っ黒に染め上げるんですかね?!」

「…穂高。ありがとう」

「言いたいこと全て言ってくれましたね…」


 私は副部長に思いの丈を全て訴えてやった。すごくすっきりする。


「あ、二人とも。言ってもいいよ。ロリコンって」

「分かった。おい。ロリコン野朗」

「…ろ、ロリータコンプレックス持ちの八月さん。こんにちわ、ですね」

「…許してください。サクラにまで言われると困る。さすがにきつい。穂高も止めてください。中指突き立てるのだけは…。ついでにケンさん。親指を地面に向けないで?首を切るみたいに指を動かさないで?本当に悪気は無いんだから。遊びたかっただけだから」

「ついでに、俺は多少反対した」


 城ノ内はそっと離れた。孤独状態だね。後輩に敬語で謝る部長よりしっかりした副部長。本当にシュールだ。私たちにとってはシュールだ。ありえない。


「…で、この状態を変えるにはあのモンスターを倒さないといけないんだな?」

「頑張っていただきたい」

「罪滅ぼしも兼ねて、なー。ロリコン」

「…本気で許してください…」


 ついには最強の謝り方、土下座に突入した。最終的には全員許したんだよ?でも、自分で撒いた火種だよね。別にいいよね?


「じゃあ、とりあえず俺たちでどうにかしてくるか。その間、家から出るなよ?ついでに何かあったときのために穂高は自分の部屋に戻っとけ。…ケンさんとサクラは別に一緒にいてもいいぞ」

「…部屋に戻るね」

「俺も戻る」


 私が立ち上がると二人もついてきた。うん。同姓でもさすがにそこまでの仲ではなさそうだしね。



 で、色々とあってかーらーの、モンスターを倒した、との事なんですが、


「全然戻らない!!」

「おかしい。おかしすぎる。何で戻らないんだ」


 そう。戻らないんです。未だに私たちはふりふりスカートだよ?最近裁縫が得意の美空が服を作ってくれたんだけどこれまたフリル多いんだよね。怖い。今はフリルが流行なの?


「魔法がかかってるのは分かるんだよ?どうやって解くの?!何回も試してるけど複雑中の複雑だから無理なんだよ!!どうすれば昔の私に戻るの?!」

「今、この状態が昔の穂高状況だろうが!!」

「あ、そうだった…って全然違う!!時代背景が!!」

「…………」


 涼也君をポカポカと叩く。しかし、痛くは無いようで「落ち着いてください」と慰められる。あれだ。完全に涼也君はふりふりスカートに慣れてる。怖い。


「もうすこし頑張ってみません?僕も応援しますから」

「…天使様。頭撫でて」

「こうですか?」


 うん。涼也君は天使だ。丁寧に頭を撫でてくれる。天使の翼を謙譲したい。抱きついていると何回も撫でてくれるから嬉しい。可愛いよぅ!!可愛いんだよぅ!!


「頑張れる気がする」

「頑張ってください!!」

「可愛らしさで私のHPは回復したんだ。そう。穂高よ。貴方はやればできる子よ。Yes we canよ…」


 私は目を閉じた。魔力を探る。…あれだ。絡まった挙句に取れなくなるコンセントの束だ。怖い。ウジャウジャしてるよ!!

 気持ちが悪いけれども頑張って魔力を流し込む。しかし、私は今の状態は子供。魔力値が完全にヤバイ。

 魔力って血液の中に含まれているようで、心臓がバクバクいってる。貧血の状態みたいになるんだよね。倒れたりもするから。怖い。


「駄目だぁぁ!!分かんない!!」

「穂高先輩ー?!」


 モフッ。私は隣にいる涼也君に抱きつく。全然進まない。ヤバイ。何がイエス・ウィー・キャンなの?!できないじゃないの!!

 魔力も全然足りない。怖い。無理。私はバシバシと涼也君を叩く。しかし非・戦闘員の私は力が無い。痛くは無いみたいだ。…アテナの力を使わない限りは弱いんだよ!!


「無理だ!!絶対にできない!無理ゲーだ!!これはラスボスに装備無しで行くのと一緒だ!!ラスボス相手にレベル1で向かうのと一緒なんだあああ!!」

「そんなに無理なのか!!」

「穂高…せ、先輩ぃ!!諦めたらここで終わりなんですよ!!頑張りましょうよ!!」

「櫻田先生。俺、寝たいです」

「乗ってくださいよー!!バスケしましょうよ!!」


 あれだ。真似てるね。結構。バスケなんてできないのに。真面目に先輩って付けてくれてるし。小声だったけどね。


「ちゃんと頑張ろうぜ?」

「無理ー!!…あ、結構この服もフリルがあるからモフッとしてる…」


 場所を移動。部長に移動。言葉は悪いけどフリルは裏切らなかった。フワッフワや!!モファァってしてる。モフモファ!!


「やめろっ!!何してやがる!!」

「モファァァァ…。モファァァァ!!」

「その効果音はなんなんだよ!!」


 モフモフに浸っていると最終的に部長は何も言わなくなった。モフモフ最高。これが無いと私は生きていけないんだ。


「もう何もしたくない。無理。嫌だ」

「穂高。それなら一生何もできないぞ。とりあえずフロラに聞いてみるって言う手段は無かったのか?」

「あ」

「無かったのか!!」

「その手があった!!そうでした。フロラさんに聞いてみればよかったんです。何で気がつかなかったんでしょうねー」


 その後にフリルを没収された。…あ、私のじゃあなくて、部長が離れただけだから。大丈夫。


「…会ってきます」

「早めに戻ってこいよ」


 で、現在私はフロラさんに会いに行きました。いつにもまして笑顔ですね。爽やかです。


「フロラさん。この状況はなんなんでしょう」

「それは僕に言われても分からないかな。でも、可愛らしいね」


 頭を撫でられた。子供じゃあないけど、もう諦めたよ。本当に!!


「沙希が変わった…。可愛くなった…」

「アテナさん!!ちょ…」


 アテナさんは私を抱き上げた。スリスリと頬を寄せてくるから猫の気持ちがよく分かる…。猫ちゃん、嫌がってもええんやで…。


「で、この状態をどうにかできませんか?」

「うん。できるね」

「やった!!」


 そして、今までの苦労は何なのだったのだろう。酷い。


「でも、問題があるよ?」

「え゛」

「元の姿に戻ったときに服が合わなくなってしまうからね。その辺りをちゃんとしてからもう一度おいで」


 その結果を私はみんなに報告。その結果、部長と涼也君は部屋に戻って、私は自分の部屋でぶかぶかの制服に着替え、二人に会いに行った。


「はい。大丈夫です」

「穂高。可愛い!!可愛いよ!!」

「アテナ。今から治しますね。少しどいてください」


 フロラさんが私に手をかざす。青い光が私を包んだ。その光は、他のみんなにも届いているようで、何かの声がした。

 一分後には私は元の姿に戻っていた。


「やっほーい!!戻ったー!!」

「よかったね」


 制服を着て、私は喜ぶ。久々の感じだ!!ひゃっほーい!!

 私が感動に浸っていると、その瞬間に、


「ギャァァァァッ!!」

「?!」


 外から悲鳴が上がっていたので私は二人にお礼を言い、私は元の世界に戻る。そこで見た光景に目を疑った。だ、だってさ、二人が大きくなったフリルのスカートを履いてるんだもん。フリッフリッだね。大きくなった部長がフリフリのスカートをたくし上げて顔を真っ赤にして怒ってます。


「八月っ!!お前ーー!!」

「いやー。そんな魔法がかかってたなんでなー。ふ、ふはははっ!!」

「ふざけんなー!!穂高だけ普通なのかよ!!」


 ロリコン副部長、再臨であった。ろ、ロータリーエンジンのコンサートじゃあない方ね。ロリータコンプレックスの方ね…。


「八月。お前は何をした?」

「魔法?知らないね」

「よし。歯ァ食いしばっとけ」

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