五十五話目
「全然ダメだ!」
「そんな!?」
朝自主練をしている時に先生と会い、その時見てもらったのだが開口一番そう言われた。
結構自信があったのに……。
「一応努力しているのは伝わった。でもね、まだまだだよ。ロングトーンはミスを恐れているのか知らないけど弱々しいし、リップスラーはぶつ切りでスラーになっていない。特に酷いのがタンギング!」
「ええ!? 嘘ですよね!?」
「俺は音楽には嘘つかないよ!」
めちゃくちゃ声を荒げられた。というか……ちゃんとズレもミスもなかったのに……。
「あのね? タンギングはただ合わせればいいってだけじゃないんだよ。その音がちゃんとみんなを支えられる音かってことが重要なんだ。後は音を引きずっていないかとか、細かいところはまた言うけどね」
言われてみれば俺はただミスをしないことだけを考えていた。自分のことだけじゃなくて他人のことも――合奏の時のことも考えなくちゃいけなかったんだ。
「そうだね……今日お昼空いてる?」
「あ、はい。大丈夫です」
「よし。もう時間ないから今日はこれぐらいにしておいて、お昼にやろう。その時はキチンと教えるから」
「はい! お願いします!」
今までの練習では不十分だった――が、先生が正しい道に導いてくれる。それは今の俺にとってすごく心強いことだった。




