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五十三話目

……結局時間がきてしまったので今日のところはリップスラーは終わり。ちなみに今日の最終スコアは二回連続成功がベスト。三回目に入ろうとするといつもどこかでミスしてしまうのだ。

しかし悩んでいても仕方がない。次に移らねば。

……基礎練習でやるのは次で最後。タンギングだ。

これは個人的にチューバをやる上で一番重要な練習だと思っている。

この練習では『刻み』と言って拍に合わせて細かく音を当てていくのだが、チューバが合奏中受け持つのがまさにそれだ。

少し唇が疲れてきていたので五分リラックス。一応言っておくがダラけているのではない。メリハリをつけているのだ。

じっと目の前のチューバを見据えると何とも言えない感覚に陥ってしまう。引き込まれそうな、怪しい魅力だ。

……しばらくチューバとにらめっこをし、時間になるとすぐに姿勢を正して演奏の準備をする。唇も指も、もう大丈夫だ。

一気に息を吸い、メトロノームをよく見ながらテンポを刻んでいく。速すぎず、遅過ぎないように絶妙に調節しながら。

……とはいえタンギングはリップスラーほどテクニカルではないと俺は思っている。ただ刻めばいいのだから。後は音を間違えなければいいだけだ。

しっかりとメトロノームに合わせて刻み、まずは音階を一巡した。

「……中々いいんじゃないか? 音も間違えなかったし」

素直にそう思った。ズレも間違いもなかったのだから、ほぼ完璧だろう。

それからもタンギングは続けていったがやはり目立った間違いはなし。もしかしたら……タンギングだけは才能があるのでは?

「……とりあえず今日はこの辺にしとくか。先生にも釘を刺されてたし」

すでに日は沈みかけている。俺は手早く楽器やスタンドの片付けに入った。

「明日が楽しみだな……」

ロングトーンとリップスラーに関してはまだまだだが、タンギングはできると自負している。先生や先輩たちの驚いた顔を見るのが楽しみだ――。

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