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四十六話目

「よし……次は楽器にマウスピースを付けて吹いてみようか」

「はい」

いよいよ待ちに待った瞬間だ。やっぱり吹奏楽部に入ったのだから楽器は吹きたい。

腹式呼吸を意識しながら大きく息を吸い、しばらくタイミングを測ってからマウスピースに口をつけた。

そこでようやく唇を震わせる。直後野太い音が辺りに響いた。

「う〜ん……ちょっと違うかなぁ? 音は確かに出てるけど少し、荒い」

「……どうすればいいですか?」

「そうだね……今は押し出すように吹いてるでしょ? 力任せに」

「はい。まだ上手く鳴らなくて」

「音をただ掻き鳴らすんじゃなくて、響きを意識してごらん? フォルテは強くって意味だけど大きくって意味じゃないしね」

……響きか。でも今結構響いていたと思うんだけどなぁ……。

「深い響きだよ。表面的なだけじゃなくて、もっとズシンとくる感じ」

「……やってみます」

頷き返し、吹いてみるがやはり先生は不満げに首を捻っている。姿勢を直しても、息の入れ方やタイミングを変えてもそれは変わることがない。

「すいません……吹けなくて」

「何を馬鹿な事を。最初から出来るなんて期待してないよ。一朝一夕で吹けるようになるほど音楽もチューバも甘くはないさ」

「はい……すいません」

「後、謝らなくていいから。何も悪いことはしてないんだし、もし出来なくて悪いと思っているならその分頑張ってくれた方が俺としても助かるし、嬉しいよ」

先生は怒ったようにそう言ったーーが、同時にその顔は少し悲しんでいるようにも見えた。

俺は彼の言葉に応えるためにチューバを吹き続けた……が、やはり理想的な響きを出すことは出来なかった。

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