四十四話目
「ふぅ……ひどい目にあった」
あれからマッサージと冷却スプレーによりだいぶ足の具合も良くなったが、明日の筋肉痛はほぼ確定だろう。
筋トレの後は基礎練習になっていたのだが、ここでも俺は別メニューを言い渡され、別室でマウスピース練習をすることになっていた。
ちなみに他のみんなはロングトーンをすることになっている。全員でやる練習なので軽い疎外感だ。
……とはいえ拗ねている暇はない。気分を切り替えて椅子に腰掛ける。背筋を伸ばしてなるべく前に座るという基本に忠実な構えである。
そこからまず、軽く息を吐いてリラックス。こうした方がより息が入りやすくなるのだ。続いて息を大きく吸い、それを繰り返していく。
徐々に体が熱くなり、クラクラしてくる。先生曰く、これはまだ体が慣れていないからだそうだ。早いところ体を作り変えないと……。
しばらくして息を全部吐き出した。今から一分だけ休憩を取る。どの練習にも言えることだが、メリハリというものは大事だ。
時間が来て今度はマウスピースを吹こうと構えたところで、音楽室からロングトーンの音が聞こえてきた。
以前聞いた時は揃っていたが、今回はてんでバラバラ。一年生が入ったせいもあるのか、音がイマイチ噛み合っていない。少しズレている音もあった。
「……っといかんいかん!」
人にどうこう言える立場でないのに何を偉そうに……。軽く自己嫌悪。
気持ちを切り替えてマウスピースを構える。仲間はずれは嫌なのでロングトーンに合わせて吹くが……上手くいかない。
音が最後まで一定に出ていないし、ブレている。それに自分の音で精一杯で周りの音に合わせきれなかった……が、十分だ。課題がわかったなら、後はそれを治すだけ。
俺は改めて息を吸い、今度は自分のペースでゆっくりとマウスピースを吹き鳴らしていった。




