三十九話目
レクリエーションもいよいよ閉幕となった。今はそれぞれの部の部長が前に出てスピーチをしている。やはりこれで新入部員を獲得できるという意味合いが強いためか、どの部も必死だ。
俺たちの高校では、生徒は全員何かしらの部に入らなければいけない。だから、新入部員獲得は、この過疎化の進む島の高校において、ある意味死活問題ともいえることだった。
ようやく野球部のスピーチが終わったところで、吹奏楽部の番となった。先ほどまでのきりっとした印象はどこへやら、桶田先輩はニコニコ笑いながらマイクを持って前に立った。
『え~みなさん、こんにちは。吹奏楽部です』
落ち着いた口調で語りかけてきた……かと思うと急にその目がギラギラと輝きだした。
『私たちは今、七人という非常に少ない人数で活動しています。なので、部員は絶賛大募集中です! 経験者も未経験者も関係なし! 興味のある方は是非音楽室まで! お菓子もありますよ!』
……完全にテンパってる。部員獲得に目がくらんだか、先輩。物で釣ろうとは。
『それと男子! うちの部は今女子しかいないから入ったらハーレムだよ! もちろん女子も! ガールズトークしましょう!』
あれ? これって吹奏楽部の勧誘だよな? 怪しい宗教勧誘みたくなってきたぞ。
『今なら部費も安くし……』
あ、マイクの電源消された。強制ストップだ。体格のいい先生が二人桶田先輩に駆け寄る。
「待って! 吹奏楽部! 吹奏楽部をよろしくお願いします! 何卒! 何卒ぉおおおおおお!」
先生たちに両脇を抱えられながらも最後はその勤めを全うした。おそらく……彼女はこの後先生、吹奏楽部員……かかわりのある人全員からこっぴどく怒られることだろう。
チラリと横を見ると、今までの熱狂的な視線はすっかり冷めきっており、全員遠い目で連れ去られていく桶田先輩を見ていた。……これは俗にいうあれだ。吹奏楽部最大の汚点だ。




