三十二話目
……家に着き、姉さんの説得も終わった。後は明日。音楽室に向かって資料を漁るだけである。サッカーをやっていた時の情熱が湧き上がっているような気がして、思わず苦笑した。まだ自分にもこんな感情が残っていたというのは意外である。
熱く、胸が焼けるようなとても懐かしく、誇らしい感覚。吹きたいという気持ちが湧き上がり、上手くなりたいという熱情が燃え上がり、負けたくないという願望が魂の叫びを体の内で上げる――嫌いじゃない。
一秒でも、一分でも吹いていたいし、少しでも、ほんの少しでもみんなに近づきたい。そして――共に戦いたい。こう思ったのは本当にいつ以来だろう? 血がたぎって仕方がない。
「ありがとな……MC」
この感情を呼び起こしてくれた愛すべき相棒の名を呼ぶ。あいつがいなければ、あの部活に行かなければ、きっと自分は生きた屍のように、毎日特にやることもなく、目標もなく、夢もなく――ただ漫然と生きていただろう。それを変えてくれたのは――間違いなくチューバであり、あの部活なのだ。
……とりあえず今日は早く寝て――明日に備えよう。十分な睡眠をとり、万全の態勢を整えておくのも一つの手だ。
ふと瞼を閉じると思い浮かぶのはやはり今日の出来事。叱咤を受け魂が目覚め、怒りを放つことで今まで押し込められていた情熱が産声を上げた――あれは生涯忘れることのできないものだろう。
満足げに笑みを浮かべゆっくりと微睡に落ちていく。それはいつもと違う……どこまでも深く、甘く、心地よい――。




