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二十四話目

「最後は私ですね」

 最後に残った先輩は立ち上がって俺たちの前に立つ……が、やはりどこにも楽器を持っていない。

「ああ……そうだね。楽器がないように見えるけど、ちゃんとあるよ」

 そう言って自分の後ろを親指で指し示す。そこにあるのは――無数の打楽器たち。

「私の担当はパーカッション。この学校にいる打楽器たちすべてが私の相棒だよ」

 まるでバトルマンガのセリフみたいだな……。不覚にもカッコいいと思ってしまった。

「ま、こういうと聞こえはいいけど、実のところやる人が少なすぎて私がやってるだけなんだけどね」

 どこか自嘲気味に言って肩をすくめる。と、そこで不意に思いついたような顔つきになり、

「そういえば自己紹介がまだだったね。パーカッション担当の上村です。よろしくね」

 丁寧にお辞儀をした後、困ったような笑みを作り、

「それで……どうする? 演奏聞く?」

「いいからやりなよ。そのためのアピールタイムでしょ」

 桶田先輩からの野次に苦笑する上村先輩。そしてトテトテと打楽器たちのもとにより、そのコンディションを確かめるように撫でている。

「まぁ、今日は時間がないからね……この子でいいかな?」

 先輩が選んだのは――巨大な木琴? でも俺が知っている木琴の何倍も大きい。

「この子はマリンバっていうんだ。なかなか知っている人は……いないよね?」

 その言葉に俺は苦笑いを浮かべたがほかのみんなは違う。伊達に三年間の中学校生活を部活につぎ込んだわけではないというわけだ。

「とりあえず少し聞いてもらおうかな……あ、これはマレットって言うんだよ」

 マリンバを叩こうとしたところで動きを止め、手に持っていたバチのようなものをしてくれる先輩。それも俺の知っているものとは違って、先端に丸いボールのようなものがついていた。

「それじゃ……よろしくね」

 その言葉はどちらかというと俺たちに向けたものではなく――楽器に向かって言ったように聞こえた。

 続けて奏でられるのは滑らかで澄んだ音色。手の動きに一切のよどみがなく、楽器の特性も合わさってかこちらの心を癒すような演奏だ。

「結構いい音色でしょ? この子もすごいけど、他の子も負けてないけどね」

 他の管楽器と違い、演奏中喋れるらしい先輩は随所で解説を盛り込んでくれる。その度に桶田先輩から冷やかされ苦笑していたが。

「ほい、おしまい……っと」

 演奏が終了し、バチをクルクルと回してそのまま席に座る。意外に緊張していたのか、その顔からは安堵が見て取れた。

「じゃ、これで自己紹介は終わったかな? ちなみに今のウチの編成としては、フルート二人、クラリネット二人、サックスが一人に、トランペットが一人と、パーカッションが一人。ついでに言うと、三年生はフルートとクラリネットとトランペットに一人ずつ。二年も同様ね」

 小林先生が最後に説明を付け加えてくれた。これで少しこの部活の内面が見えたような気がする。歳が近いというのもあるかもしれないがややフランクな印象だ。だが、あの演奏のこともある。まだ確定することはできない。

「それじゃ……」

 あえて溜めを作り――

「改めて。これが――ここにいるみんながこの学校の吹奏楽部だ!」

 堂々とまるで舞台俳優のように先生は告げた。脇に控えている先輩たちからも感じるのは紛れもない気迫。よほど自信があるのが見て取れる。

 この部活に入れば俺もこうなれるのだろうか? 自分に自信が持てるのだろうか? 少し……興味がわいてきた。


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