百六十五話目
『え~それでは、演奏してくださった吹奏楽部の生徒たちにもう一度大きな拍手を!』
聞こえてくる歓声を聞きながら、ステージの階段を下りていく。まだ余韻が残っており、少しばかり足元がおぼつかない。それほど精神をすり減らしたし、かなり疲労もたまった。きっと今日はぐっすり眠れることだろう。
「ふぅ……」
階段を下りて、近くの建物の隅まで移動。ほかのみんなも緊張が解けたのか、安堵の表情を浮かべていた。
「お疲れ、みんな。いい演奏だったよ」
『ありがとうございます!』
さらに先生は嬉しそうに告げる。
「本当に、よくやった。最高の演奏だったよ……っとまあ、堅苦しいのはこれくらいにして、早く楽器を片付けてあげな」
「? もう帰るんですか?」
燐の言葉に先生は小さく首を振って否定する。
「違う違う。ほら、見てごらん」
指差す先には――海兵さんの姿。手を振りつつ満面の笑みを浮かべて船から降りてきている。日ごろの訓練の賜物か、全員引きしまった顔立ちをしていた。
「実はさ、海兵さんの中に音楽隊の人がいるんだって。いい機会だから、ちょっと会ってきなよ。話はつけてあるからさ」
「いいんですか!?」
桶田先輩の目がキラキラと輝きを増す。他の先輩たちもそわそわして落ち着きがなかった。
「さ、早く行っておいで。それと、最後に一つ。みんな、最高だ」
『……はい! ありがとうございました!』
最後にもう一度頭を下げて、楽器を片付けていく……が、その前に、
「ありがとな、二人とも。最高だったぜ」
トン、と優しく彼女たちの体を叩く。本当にこいつらがいてくれてよかった。いつか……こいつらに恥じないような演奏者になってみせよう。そして、もっとこいつらと演奏するのだ。快くまで、何度でも、何度でも。




