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百二十六話目

「それじゃあ、今日の部活を終了します。それと、その後一年生以外は会議を行うので残ってください」

『はい!』

 恒例の挨拶を残して今日は解散。やはり重苦しい空気は変わらず、ここに居合わせた先生までも苦い表情を浮かべていた。何だか、今日はいろんなことがありすぎて脳がついていかない……最悪の一日だ。

 一年生たちが散り散りに自分の楽器を片付けに向かう中、先輩たちは一塊になって先生のところに向かっていた。やはり、自分達だけではどうにもできなかったようだ。

 遠くから、先生がぼそぼそと声を潜めて何か言っているのが聞こえてくる。漢字からしてあまりいい内容ではないみたいだ。耳を塞いでその場から急いで離脱し、逃げるように準備室へと入室。それと同時、二人が人間体へと変異した。

『大丈夫? 顔色悪いよ』

『ええ、本当に辛そうですよ?』

「ごめん、大丈夫だよ」

 彼女たちに適当に返事をして、近くの椅子に腰掛ける。普段の練習の数倍は疲れたような感覚が俺の体を苛んでいた。密度的には大したことはないはずなのでおそらく精神的なものだろう。ここでも弱さが露呈し、思わず舌打ちしてしまう。

『レイ……』

『そっとしておいてあげましょう』

 深いことは言わず、再び楽器体へと戻る二人。こちらのことを気遣ってだろうが、今はそれが心苦しかった。これは俺の問題であるはずなのに、無駄に彼女たちに気を遣わせてしまっている。またも自分に嫌気がさしてきた。

「チッ……」

 勢いよく立ちあがるとその反動でガン、っと椅子が硬質な音を立てた。そんな普段なら気にもしないことにすら、苛立ちを覚えてしまうということは相当参っているのだろう。

「ふざけるなよ……何が譲るだよ」

 確かにトラの方が適性があるかもしれない。これからのことを考えて経験を積ませるべきかもしれない。でも……

「そうじゃないだろ。自分がやりたいのか、やりたくないか、それじゃだめなのかよ?」

 心が暴れ狂うように叫んでいる。気を抜けば今にもこの場から逃げ出してしまいそうだ。こんな感覚は今まで感じたことがない。

「なぁ、二人とも。聞いてるんだろ?」

 それに応えはない。だが……構うものか。言ってやる。

「頼む……教えてくれよ。俺は、一体どうしたらいいんだ? このままじゃ演奏、本番なんてできっこない。何か……何かできることはないのか?」

 気づけば、俺の声は震えていた。それが何故だかはわからない。ただ、無性に悲しくて、辛かったのだ。部の仲間であるものたちが、互いに遠慮し、それが原因で溝を作ってしまっているのが……これは俺が思っていたものじゃない。

 もっと音楽というものは――自由だったはずだ。


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