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十二話目

「吹いて奏でて楽しむ音楽……か」

「意外だよね。あんな考えがあったなんてさ」

 あの後俺はトラたちと帰ることになったのだが、先ほどの先生の言葉が胸に残っているのかいまいちみんな釈然としないようだった。特にそれは燐と千尋で、

「でもあれだとコンクール向きじゃないよね?」

「だね。どちらかというとコンサートとかそういう賞が関係ない演奏会の方があってると思う」

 と、少し否定的だ。それもそうだろう。彼女たちがやってきたものとも、もちろん俺が知っているものともあの部活が目指しているものは違うのだから。

「じゃあ二人は入らないの?」

 トラの言葉に二人は同時に首を振った。

「入るよ。だって私たちは音楽が好きだし、形はどうあれ楽しそうではあったもの」

「でもさっきはコンクールがどうとかって……」

 トラの指摘に燐はため息をついた。そしてふっと天を仰ぐ。

「私たちってさ……中学時代何も結果残せなかったでしょ? 先輩たちが抜けて引き継いだのにまともな賞も取れなくて……」

「トラだってその時悔しがっていたじゃん」

 燐と千尋が責めたてた。若干この段階から中学時代部活が違った俺は蚊帳の外に追いやられてしまっている。

「それはね……でもそればっかりが吹奏楽じゃ……音楽じゃないやろ?」

 少しトラの言葉に訛りが混じる。普段は隠しているつもりかもしれないが動揺したり感情が揺さぶられたりすると俺たちはみんなこうなってしまうのだ。もちろん普段から自然と出てしまう場合もあるが。

「でもさ、もうあんな思いはしたくない。覚えてる? 他の学校はみんな喜んで立ち上がっているのに、その横でじっと下向いていた時のこと」

 燐の中でそれは大きな汚点だったらしい。今も悔しそうに拳を握りしめている。

「私も。たぶん燐ほどじゃないけどあの時すごく悔しかった。努力が報われないような気がして、無駄だって言われているような気がして」

 そこに千尋が援護射撃を加える……が、トラはただけだるそうに聞いているだけだ。

「結果、結果って……そんなに大事?」

「少なくとも、私たちにはね」

「そう……まあこの話はいまするべきじゃない。レイだって聞いていて嫌でしょ?」

「いや……俺は……」

 はっきり言って俺には燐や千尋の言いたいこともよくわかる。誰だって努力したことが報われなければ悔しいし、とても悲しい。それが目に見えてしまう場合ならばなおさらだ。

 しかし同時にトラの言い分も理解できる。きっと他の二人と同様に悔しいはずだが、それを何とか自分の中で折り合いをつけたのだろう。だからこそあの部活に賛成的なのだ。

「そうだね……ひとまずこの話は終わり。ごめんね、樫井」

「いいよ……気にしてない」

 とは言ったものの、そこからもとの和気あいあいとした雰囲気とした空気に戻すことは不可能で、結局その日は途中で別れるまでずっと無言のままだった。


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