百十八話目
心のどこかで思っていた。完全に仲直りすることは不可能でも、少しは改善しているだろうと――だが、甘かった。それからもずっとトラたちは険悪な雰囲気のままで、合奏の時もたびたび注意の対象になっていた。
そしてとうとう――迎えてしまった土曜日。あと一週間後にはもう観艦式。これほどまでの悪条件下で吹けるのか、いまさらになって恐怖心が芽生えてきた。
筋トレを終え、基礎練をこなし、全体でのロングトーンに入る。しかし、そこでもトランペットパートはバラバラでとうとうほかの楽器たちにも影響を及ぼし始めた。
吹奏楽は全体競技――今ならその意味がよくわかる。確かに、一人のミスが全体を大きく左右してしまう。ましてや、それがパートならなおさらだ。
「……はいはい。やめやめ」
先生からの指摘が入り、演奏を止める。しかし、またそこでもトランペットだけ数拍遅れて止まった。全員が難しい顔をして二人を見ているのが、チューバ越しに見える。
「……しょうがない。みんな、ちょっといいかな?」
先生の呼び掛けに部員たちの視線が一斉にそちらを向く。すると、
「悪いけど、今日の昼休みはなし。そこでミーティングを開くから。もちろん、お昼は食べていいけど手短にね」
さらりと告げられたその一言は、どこか冷やかに俺たちの間をすり抜けていった。
先輩とトラは悔しそうに、悲しそうにその顔を歪めている。だが……俺は何と声をかけたらよいか、どう接したらよいか、それすらもわからなかった。




