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百十二話目

 今日は久々に一年のみんなと帰ることになった。どうやら全員俺が合奏に参戦できることが決まったのが喜ばしかったらしく、祝いの言葉までくれた。

「いや、本当に上手くなったよ。樫井頑張ってたもんね」

「ありがとな、千尋。でもまだまだだよ」

 だがそこで全員一様に首を捻る。

「……レイって何か謙虚というか自己評価低すぎない?」

「え、そうか?」

「うん。てっきりもっと自信満々にふるまうかと思ってたよ」

 トラの指摘に燐たちもうんうんと頷く。

 まぁ、おそらくそれはMCたちのせいだろう。俺が調子に乗りそうになるとすぐあいつらからストップが入る。そりゃあ自己評価も低くなるというものだ。

「そ、そういえばさ。今日の合奏はお前らはどう感じたんだ?」

「う~ん……まだバランスが取れてないかな? 樫井が入ったのもあるけど、高音と低音で釣り合いが取れていない気がする」

「確かに。高音が低音に食われたり逆にでしゃばりすぎたりしてて安定してない。それとまだ何人か前に進めていないよね。私が言えた話じゃないけど」

「そうそう。音が止まってるし、重い。それにたまにだけど外れて汚くなる時がある……けど、まだ時間はあるよ。諦めなければ可能性は消えないし」

 燐と千尋は何やら眉根を寄せて話し合っている。流石は元部長と副部長。自分の弱点も把握しつつ、他の楽器にまで注意を寄せている。

「トラはどうだ?」

「まずペットはパート練からしないとなぁ……ちょっとまずいかも。パート内で合っていないのに全体で合うわけないし」

「先輩、音量の事で指摘されてたけどそれは?」

「ん~まぁ、それはちょっとね。先輩は繊細さと緻密さが売りなんだけど、今回の曲には合わないかな。ただ、やっぱりそれを言い訳にできないのが辛いところだと思うな」

「どういう意味だ?」

「簡単に言うと先輩だから、後輩に負けるわけにはいかないでしょ。自分の得意な分野と違うからって諦めていいわけでもサボっていいわけでもないし。むしろそれを克服しなくちゃ」

「トラ……お前たまにはいいこと言うな」

「それどういう意味だよ!?」

 だが、俺の意見は二人の賛同も得たようで支援の声が入った。トラはなんとか反論しようとしたものの、口げんかで女子に勝てるわけがない。すごすごと引き下がるしかなかった。

「いいなぁ、みんなは先輩がいて。私なんか一人だよ」

「それを言ったらうちにはそう言った人はたくさんいるよ。それに、しょうがないんじゃない? こんな島だし」

「わかってるよ。言っただけ」

 これもこの島という特殊な環境のせいだ。少人数でバンドを編成しなければいけないため、当然そこには偏りができる。仕方ないと言えば仕方ないのだが、そのせいで慢性的な指導者不足にも陥っていた。

「でも千尋。それを言ったらレイはすごいよ。教えてくれる人がいないのにあそこまで吹けたんだから。見習わなくちゃ」

「トラ、何か今日違う」

「待って、普段みんな俺のことどう思ってるの?」

「単細胞」

「チャラ男」

「残念」

 燐、千尋、俺の順にそう告げられ、とうとうトラは肩を落とす。その仕草がどことなくわざとらしいものだから、誰一人同情しないのがやけに惨めに映った。


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