プロローグ
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2007年に構想し、2008年に書き上げた初長編小説です。(2014年掲載)
法律や規制に関する記述は、当時のものとなります。
また、小説内に出てくる事件は架空のものであり、団体名等も実在するものとは一切関係ありません。
フィクションとしてお楽しみくださいますよう宜しくお願い致します。
幾千もの青緑の竹が整然と立ち並び、スッとまっすぐ天を目指して生えている。枝葉の隙間から射し込む木漏れ日が、まるでスポットライトのように地面を照らしていた。自然のまま、自分の思うままに生きている――そう言うが如く、その凛と佇む姿に迷いや不安は一切感じられない。非の打ちどころのないその美しい姿は、潔いという言葉がよく似合う。
風が吹くたびに竹はまるで水面が波立つように大きく、時折小さく揺れ、さわさわと竹の葉のさざめきが辺りに響き渡る。
その竹林の脇の緩やかな細い道に、男と女が佇んでいる。
「私の邪魔をする人間は――いらないわ」
女は憂いた。
女と男が佇むすぐ横の巨大な竹林が、まるで女の心の内を表すように騒ついた。
「それは、誰もが望むことですよ」
男は言った。
「そんな言葉が欲しい訳ではありません」
「困りましたね」
まるで困った様子もなく男は言った。そんな男の態度に女は淋しげな表情を見せる。
「望むだけでは嫌なんです」
「と、言いますと?」
女は男を黙って見つめた。黒く大きな瞳が男を捉える。男は動じることもなく、ただ静かに女の視線を受け止めていた。
「迷う必要はないでしょう。貴女が望む世界を、その手で築けばいいではないですか」
男は無表情のまま女に答えた。
女は男の感情を読み取ることができない。しかし、男の言葉に満足そうに微笑した。
「ふふ、貴方にお話してよかったわ」
女は竹林に視線を移した。その横顔からはもう、憂いの影は消えていた。
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