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第六章 第五話 独断行動



『悪魔獣、なお接近中。距離サンマルマル! 第三種警戒区域に突入だよ』


 エリーの緊迫が伝わる状況報告に、一年生チームは新たな緊張に包まれる。


『がーちゃんが最大望遠で敵の映像を補足してくれたよ。みんなに送るね』


 途端、インギーの瞳から「空間投影式表示装置エア・ディスプレイ」が映写され、その全貌を伝えた。


「確かに超ド級だな……エリー、学園アカデミーのライブラリに一致する悪魔獣は無いのか?」

『うん、未確認だね。エキシビジョンでは、オリジナルの悪魔獣が登場する場合があるから』

「オリジナルか……なるほど。なら最初は様子見が得策か」


 用心深く、基本を踏襲した作戦を提案。


 ――が、そんなカオルの言葉を他所に、単騎、目標物へと高速で突き進む薄紫ライトパープルの閃光があった。


『みんな! 迎撃態勢なんて時間の無駄だよ。こっちからも出向いて時間短縮を図ろう』


 あまり馴染みのない声が、それぞれの使い魔を通して先導するように()()る。

 それは二年生チームのボクっ娘ショートレンジ・アタッカー、秋津弥生だった。


「あ、秋津……えっと、先輩! 敵の能力も調査せずに突っ込むなんて無茶だ」


 当然、そんな単独での突出行為に黙っちゃいられないカオル。

 が、新たな声が、カオルの具申を却下するのだった。


『こんなんは先手必勝やよ! ええからついといで、一年』


 特徴的な関西弁の補助魔法特化魔法少女、高田魅紗だ。

 橙色オレンジの一閃となって、弥生を追従――次いで、


『ったく、しょうがないな』


 と、少々ぶっきらぼうに零すガーディアン・鴻池由紀も、紫紺色ヴァイオレットの弾丸のように、その後を追う。


『……おもしろくなってきた』


 とは、カーリー。早速シヴァを召喚して、上空高く舞い上がる。


「おいおい、どいつもこいつも。リーダー……じゃなかった、千早。私たちも行くべきだな」


 と、カオルは「勇み足の仲間でも、捨て置けない」とばかりに、赤坂千早の判断を仰ぐ。


『かおりん。ちーちゃんなら真っ先に敵に向かって行ったよ?』

「ハァ!?」

『あ、ごめーん。私も先手必勝大賛成なんで、もう加速走行で向かっちゃってる』

「は、はははは…………このアホどもめ……」


 軍隊なら軍法会議モノの独断先行に、呆れるばかりのカオル。

 そんな彼女に、落ち着き払った優しい声が掛けられた。


『まぁ、いつもの事です鬼首ヶ原さん。こうなったら、仲間の個々の力を信頼しましょう』


 米嶋舞華だ。

 そんな彼女も、召喚系魔法少女の五条智美と共に、後方支援の態勢で悪魔獣へと突き進むのだった。


「しゃーねぇ。エリー、彩香、私たちも向かおう」

『了解、かおりん!』

『仕方ないですわね』


 カオルの翡翠色エメラルドグリーン、エリーの向日葵色イエロー、そして樋野本彩香の純白ホワイトが、舞華の放つ黄金色ゴールデンと知美の撫子色ピンクの軌跡を、瓦礫の山々を足場に追いかける。


「ああ、もう戦闘が始まってる……なんて気の早い連中だ」


 見ると、前方約一キロ地点に巨大な人型の影があり、色とりどりの光体に翻弄されている様子――と!!



「 ヴ ォ ン !! 」



 そんなカオルのすぐ横を、直径1メートル弱はあろうかというエネルギー体が通過した!


「うわ、あっぶねぇ!」

『大丈夫かい、カオルちゃん。今のはヤバかったね』

「あ、秋津先輩……まぁなんとか」


(バカヤロウ! お前等が好き勝手やってるから、こっちにとばっちりがきたんじゃねぇか!)


 という怒りをぐいっと飲み込んで、カオルは愛想笑いで答える。


『この敵は中々手ごわいで! 一年、しっかり集中しぃや』

『『『はい!』』』


 まるで部活の試合か何かのような感覚が、カオルを混乱させる。


「カオル、気をしっかり」

「あ、ああ……俺達は戦闘……を、しているんだったよな?」

「勿論そうです。が、二年生達の……いえ、今までのエキシビジョンという模擬戦闘は、戦意高揚が主な目的らしいですし、部活感覚……言ってしまえばゲーム感覚になるのも仕方がないでしょうね」


 カオルも分かってはいたが、実際他者から「事実」を突きつけられ、改めてその「愚考・愚行」とも言える茶番に、辟易とした感情が湧いてくるのだった。


「これじゃ、戦闘の悪い例の見本市だ」


 そう呟いた後。カオルは周囲で一頭高い、廃墟となったビルディングへと向かう。

 そこでおもむろに右手を水平に差し出し、


「召喚、ディープパープル」


 得物である対物ライフルを呼び出した。


「お前等が好き勝手するなら、こっちもそうさせてもらうぜ」


 半壊したビルの屋上の、適度な高さに壊れたコンクリート壁に砲身を預け、望遠照準器を覗き込む。


「インギー! 皆に通達。頭部付近から離れろ」

「はい、伝えます」


 直後。まとわり付くように人型超弩級悪魔獣の周りにいた色とりどりの発光体は、一旦その距離を置くように場を離れた。


「ようし、そのままそのまま……」


 ディープパープルのレティクルが、獲物の頭部を捉え、カオルの人差し指に命令を下す――撃てッ!



 ―――― ド ン ッ ! 



 カオルの中の苛立ちが、まるで具現化したかのような高エネルギー魔法弾。

 それが一直線に目標物をめがけて空を駆け、



 ―――― ズ ガ ン !!



 見事に、そのど真ん中を射抜いたのだった。


最後まで目を通して頂き、まことにありがとうございました!

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